chapter3 努力のひとすじ
最近になって、身体を少しずつ動かせるようになってきた。
言葉もなんとなくわかるようになってきたが――魔法の使い方はいまだに謎だ。
皮膚の下を通る“薄い線”みたいなものを感じる。
水風船の中を細い光が流れているような、そんな感覚だ。
それが魔力の流れなんだろう。
神様は転生前にこう言っていた。
"君は物語を知っているから、自分で掴み取れるはずだ"と。
……つまり、使い方は自力で学べってことらしい。
まぁ、それも悪くない。
まだ喋れないから、心の中で詠唱してみる。
使うのは一番安全そうな光魔法だ。
(――我が周囲を照らし出せ《ライト》)
……何も起きない。
あれ、やっぱりダメか。
もしかして、イメージの仕方が悪い?
記憶を掘り起こす。
ラノベでよく読んだ魔法発動の手順――
精神を落ち着かせ、魔力を集め、指先へ流すように意識する。
もう一度、試す。
(我が周囲を照らし出せ《ライト》)
指先が――ふっと光った。
一瞬の輝き。それだけ。
でも、確かに光った!
思わず興奮して身体をばたつかせる。
ついに魔法を使えたのだ。
今までの努力が報われた瞬間だった。
その音に気づいたのか、母が部屋に入ってきた。
怪訝そうにオレを覗き込み――
「あうー?」
言葉が出ないから、「なに?」のつもりで声を出す。
母はくすりと笑い、オレを抱き上げて、居間にいる父親のところへ連れていった。
どうやら食事の支度中だったらしい。
魔法の練習は中断。仕方ない。今は我慢だ。
■ ■ ■
みんなが眠った後、こっそり練習を再開した。
灯りは使えない。だから光魔法だけが頼りだ。
(ライト)
淡い光が指先に宿り、ぼんやりと部屋を照らす。
魔法を使うたび、身体の奥がじんわり熱くなる。
これが、魔力を使う感覚――らしい。
■ ■ ■
転生してから、もう二ヶ月。
体はまだ思うように動かせないが、少しずつコントロールはできるようになってきた。
言葉も、日常会話の一部が聞き取れるようになってきた。
魔法も順調だ。
今では《ライト》を三十秒ほど維持できる。
だが、それが限界。
魔力を使い切ると、全身がだるくなって眠気が襲ってくる。
……でも、その“限界”を超えるたび、少しだけ魔力が増える感覚がある。
最初は砂粒くらいだった魔力の量が、今では胡麻粒くらいになった。
この調子でいけば――いつか、他の魔法も使えるようになるかもしれない。
読んでくれた方ありがとうございます
誤字、脱字などの不自然な文章があれば、指摘お願いします
他の作品も読んでくれたら、嬉しいです
面白いと感じたら、評価やブックマークお願いします




