②
私の言葉は、三太の彼女を煽る意味での気持ちと三太と付き合っても良いと言う気持ちが半分半分だった。
けど、と思った。
最近の三太からは、女の影や匂いが全く感じられなかった事だ。
それは恐らく私自身が三太への想いが薄れ、大好きだった頃には感じ取れたものが、感じられ無くなったせいかも知れない。
正直、三太の今カノを前にしてもヤキモチや嫉妬心はなかった。普段通りの私が、そこにいた。
「いや、それは出来ない」
半ば、その場のノリで告白じみた真似をしてみたが、こうもハッキリ断られると意外にショックだった。
もしこれが数年前であれば、きっと私は何日も泣き崩れ悲嘆に暮れていただろう。
けれど何故か指先をまち針でツンと突かれたような痛みが鳩尾辺りで疼いた。
その痛みは三太と彼女が話し合いをしている最中もずっと続いていた。
まるで惚気だ。
それを見せられ続け続けている私は何なんだ?
無償に腹が立った。
私は両手でテーブル叩き席から立ち上がった。
音に驚いた2人は口をあんぐりと開けたまま風子を見上げた。
私はそんな2人に見下すような冷めた目を送った。
三太から彼女へ。そして再び三太へ。
「元と言えば、三太が映画の誘いにほいほいついて来るからでしょ?私が誘った時、彼女がいるから行けないとか、彼女が許してくれるか確認してからでいい?とか、言えたじゃん?」
「ごめん」
「彼女さんの気持ち分かるし、可哀想だよ」
風子はいい、今度は優しく微笑みを浮かべた目で、彼女を見やった。
「こんな可愛い彼女に沢山愛情もらってる事、忘れるなよ」
風子はいい、
「ここは三太の奢りだからね」
私はそう言って1人店から出て行った。