プロローグ——追憶——
こちらは年の差恋愛をベースとした物語で新な恋心をつかむひとりの女子高生のお話です。気軽に読んでいただけたら幸いです。
——大人になると諦めが早くなる。ただ、これは切り替えが早いということではなく、なあなあに過ごして楽しむという憧れをすぐ失くしてしまう、ということだ。
私の全盛期(小学生から中学生にかけて)は人並み程度に楽しんでいた気がする。友達だっていたし、恋愛もそれなりにしていただろう。家も超裕福ではないがやりたいことはやらせてもらっていた。
それに比べ、今では大人になって仕事の毎日。学生時代それなりに成績を残し、大学にもしっかり通い、なりたかった理学療法士になれた。はいいがTVドラマのようなお話は待っていないし、同僚と飲みに行こうという気にもなれない。患者の「ありがとう」が唯一私のやりがいになっていた。
——「こんにちはー。」
「あ、はい。こんにちは。今回担当する”高森 円”です。よろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします。」
今回の患者は30代男性で、仕事中に足を怪我した、という感じか。今日は湿った曇りの天気。最近は悪天候続きで足場が悪くなっているだろうに。頑張りすぎている日本人はこんな怪我をおってでもこれから仕事をするのか、と私はかわいそうに思い深く同情した。
8年くらい前だったか、高2だった私はある一人の男性に出会った。その人も今回の患者さんのように仕事に追われ、なにがあったか忘れたが、なんらかの問題で会社をクビになった男。患者さんの下くらいの年齢だった。無造作中の無造作ヘアで前髪長く、ほんの少しだけひげが生えていて、無駄に顔立ちが良かったあの男。一つ一つの印象がとても強く、一般的なダメ男だったか。接点がなさそうに思えたあの人との間にできたあの時間の中で私たちはコミュニケーションを何度もとっていた。そして、今日のような曇りの日に私は
彼に恋をした。