出発します。
葉月の弓の一件の翌朝、ミラーラと葉月は王都へと向かうことになった。
「取り敢えず他の国の巫女達から情報を集めて、日本に帰れるようにしなきゃね。」
よし、と意気込む葉月だが、勿論不安要素もある。むしろ不安要素しかないと言っても良いほどだ。
そもそも、未だに確実に日本に帰れると決まった訳では無い上に、その手掛かりを掴みに行く道中では魔物や盗賊など葉月にとってファンタジーな不安要素まで絡んで来るのだ。
そして隣に居るのは一国の巫女。盗賊にとっては良いカモである。しかも自分は一切戦闘など出来ない。これでは襲われても文句は言えないような条件ばかり揃っている。
「まぁ武器だけは規格外何だけどねぇ・・・」
「なにをぶつぶつ言ってるの?」
「読者サービスの現状まとめ。」
「?」
「気にしなくて良いってば。それより、ここからどっち行くの?」
「取り敢えず北東に行くわよ。王都へはちゃんとある程度整備された道が通ってるから、そこまで辿り着ければ今日は良い方よ。」
今まで居た小屋からみて、北東には草原しか見えない。因みに西も草原だ。西は禁止区域になっている場所だったので、どのみち北東か南東しか行ける方向は無いのだが。
「因みに何日位で王都?」
「半月?」
「・・・15日程っすか。」
「そうっすよ。」
葉月は世界の終わりとでも言いたげな表情だが、ミラーラは至って真面目な顔で、しかし面白そうに答える。
「うへぇ・・・この世界には文明の利器はないのか!」
「無いわねぇ・・・精々電気が、灯りをつけてくれる程度かしら?」
「へぇ・・・ちゃんとそういったインフラは進んでるんだね。水道もあったし。」
「インフラ?」
「こっちの言葉。気にしないで。」
そう、この世界にも電気、水道はある。しかし、ガスは無かった。それは、ガスより効率が良い魔力の熱変換装置が普及しているからだ。
これは単純に魔力と言うエネルギーを媒体にして魔力原子の摩擦を起こして使うもので、武器運用は難しい。 勿論電気を起こすような大型装置なら別だが、そんなものは携帯出来ないサイズのため現実的でない。精々大型な大砲を作る事が出来るものだった。因みにこの大砲は、王都に設置されているらしい。
「そいやさ、ミラーラの武器ってなに?」
「私のか?まぁ強いて言えばロッド・・・と言うものかな。魔力増幅用の補助部品のようなものよ。」
「他の巫女さんもおんなじ?」
「いえ、こんなのを使うのは私と雷の巫女だけよ。まぁもっとも、私含め巫女は皆武器なぞ無くてもそこえらの輩には負けんがな。」
「私と比べるとやっぱ私の方が上?」
「・・・貴女の場合は規格外なのよ。」
少し拗ねた様子で、上目使いに見られる形の葉月は、正直辛抱たまらん!状態だが、まだ百合路線へと踏み込む程陶酔している訳では無いので頭を撫でるだけに留まる。
「なでなでするなっ!」
「いや、可愛くてつい・・・」
「はぁ・・・もういい・・・好きにして。」
好きにして、と言われて実際好きにするとピーなので、取り敢えずニヤニヤしてみる。
「ねぇ、ちょっと言って欲しいセリフがあるんだけど・・・」
「・・・なによ?」
明らかに疑っている目で葉月を睨むミラーラだが、今の葉月には逆効果である。
「あたしそんなにちっちゃくないよっ!って言ってみてww」
「誰が言うか阿呆っ!!」
「ええー・・・メガネかけたミラーラ可愛い!てか小さいミラーラが可愛い!むしろメガネより小さいっ!」
「あたしそんなにちっさくないよっ!」
はっと気付くと、既に葉月は鼻血を出して笑顔で倒れていた。
ミラーラ曰く、そのときの顔は、とても満足げに微笑んでいたという。
いかん・・・ついworkingなネタを入れてしまった・・・