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神威  作者: 猫と日だまり
2/14

確認します。

「ここ・・・どこ?」


 草原の真ん中に立っている葉月の周りには、葉月の肩辺りまで伸びた草が生い茂っていた。

 草以外は見当たらず、せいぜい見えるのは太陽が傾いている方にある小さな小屋だけだ。


「あっちって・・・西?取り敢えず行かなきゃどうしようもないよね・・・」


 あまり気の乗らない葉月だったが、この非常時にわがままは言ってられない。重い足取りで小屋へと向かった。距離としては20分ほど歩いただけだったのでそれほど遠くはないのだが、色々考えたい状況でこの距離は意外ときついものがある。

 小屋の前に着く頃には、既に辺りは真っ暗になっていた。小屋は二階建てながらも小さく、扉も少し頭が当たりそうなほどに低いものだった。しばらく扉の前で迷っていた葉月だったが、よし、と息をつく。


「ごめんくださーい!」

「はい」


 びくっ、と声が返ってきたことに安心しつつも驚き、いまさらながら後悔する。

 なにせ、返ってきた声は少し野太く、明らかに大きな男のものだったからだ。しかし、いまさらどうこうするわけにもいかずに覚悟を決める。


「ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけどー!」

「ああ、少しお待ちください。今開けます。」


 中からガチャ・・・という音が響き、扉が開く。

 果たしてそこに居たのは、葉月よりも頭ひとつ小さいものの、筋肉質の青年だった。しかもその身は甲冑で包まれていて、いかにも兵士をやってますと言っているような格好だった。ついでに剣も持っている。


「どうかされましたか?」

「ふぇ・・・っ?」

「はい?」


 唖然としているところに突然話しかけられてつい変な声で返事をしてしまった葉月だったが、取り敢えず疑問に思ったことを聞く。


「ああ、大丈夫です。ええと・・・ここどこですか?」

「え・・・ご存じないのですか!?」

「はあ、まあ。」


 何処かのゼントラディー人のような返しをされて面食らっていると、青年は呆れたように話をしてくれた。


「ここは英雄の草原。幻視の巫女が聖域として立入禁止にした場所です。まさか、貴女はここに入ったのですか!?」

「え・・・まあ、はい。というか、いつの間にかそこの真ん中に立ってたというだけで実際のところはよく分からないんですけど・・・」

「・・・・・・・」


 呆れたと思ったら憤怒し、そのあとには唖然とした表情を見せる青年は悪い人には見えないけれど真面目なんだろうな。とどうでもいいことを考えていると、不意に青年が膝をつき右手を左胸にあてる(葉月の中では)騎士の礼をし、恭しく語った。


「失礼しましたっ!!」

「・・・・・・へ?」

「まさか貴女ほどの方がこのような場所で私めとお話下さるとは考えても居なかった事でつい失礼な態度を取ってしまいました。どうかご無礼をお許しください。」

「へっ?いや、別に私そんなに・・・」

「いえ、此度は私の不手際、お許し頂けない事であればこの私の命をもって償いさせていただきます!!」

「いや、ちょっ!待ってって!!」


 いきなり恭しい態度で語られて、まるで葉月のせいで自害するみたいなことを言われてはこの状況に納得いっていない状態が更に悪化する。


「ですが・・・」

「ですが・・・じゃない!ここがどこなのか聞いただけなのになんで剣抜いてるのよ!」

「いえ・・・それは一重に私の不手際で・・・」

「貴方何もやってないじゃない・・・」


 頭痛くなってきた・・・とつぶやきながらも、取り敢えず小屋の中に入れてもらう。小屋の中は以外と綺麗で、しかし殺風景だった。

 そこには木製の大きな机と同じく木製の4つの椅子がおいてあり、そのひとつに案内された葉月は、取り敢えず現状把握のために先ほどと同じ質問をする。


「んで、ここはどこなの?」

「はい、ここは幻視の巫女が聖域として指定された場所です。」

「・・・幻視の巫女ってのと、聖域って何?」

「ええとですね・・・幻視の巫女とは先代巫女であらせられるスートゥク様の事で、聖域とはその幻視の巫女が地球の神を召還した際に神が降臨される場所として指定された所のことです。」

「・・・残念ながら私は神じゃないと思うわ。それに、地球を知っているの?と、言うかここは地球じゃないの!?」

「ええ、地球ではありません。各国の巫女たちは自由に地球に干渉できるのですが、我々は寝ている間に少し様子を垣間見れるだけですね。」

「はぁ・・・ということは何、巫女とやらに会えば帰れるのかしら?」


 一瞬すぐ帰れると思ったが、しかし青年はかぶりを振る。


「巫女が可能なのは"自由な干渉"です。世界の行き来はめったに出来ません。」

「は・・・?つまり異世界・・・ってこと?」


 流石に話のスケールが大きすぎるだろうと思うが、青年はいたって真面目な顔のままだ。


「はい。ここは地球と・・・というより、日本と重なる世界です。だから、ほら。言葉も同じでしょう?」

「あ・・・うん、確かに。いや・・・うん。何だろう、そうなんだね。そう考えると確かに納得できそう。」

「まあ先ほども申し上げましたとおり、日本に帰るということは直ぐには出来ませんので、まずはこの世界のことを知ってください。」


 そう言われ、なるほどそうだと納得することにした葉月は、当面この世界で暮らすために必要な知識を聞いた。


 青年曰く、この世界は日本に干渉する為の世界であり、星としては地球のように丸い星でサイズは地球の10分の1ほどであり、大きな大陸が二つ南北に分かれて存在すること。その中には7つの国々があり、その国々に巫女が居ること。

 巫女とは政治にも大きく参加する人物で、全員がルルイエと呼ばれる宗教組織に属していること。ルルイエのトップの人物には、各国の巫女が敬意を払っていること。今居る場所は、北の水国、アーカムであるということ。この後は取り敢えずアーカムの巫女、ミラーラに会えば、今後どのように過ごせば良いか教えてくれるということ。


「うん、大体分かった。ありがとうね。」

「いえ、かまいません。取り敢えず今日はここでおとまりください。夜は魔物が多くて物騒ですから。」

「うん、そうさせてもらう。ありがとう。」

「いえ。では私は見回りに行ってきますので、二回の寝室のひとつをお使いください。鍵を閉めておけば結界が張られて家の周りに魔物が寄ってこなくなりますので、安心してお休みください。」


 青年はそういいつつ剣を持ち、外に出た。


「流石に色々あって疲れたなぁ・・・ってかまだ意味分からんけど・・・」


 ひとまず寝てから考えよう。そう割り切って葉月は二階の寝室に向かった。

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