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縁切り姫と縁結びの王子

作者: 聖なぐむ

縁切り 主観

↓↓↓↓

★★★★

縁結び 視点

 この世界では、特殊な能力を持つ人が生まれることがある。


 私が自分の能力に気がついたきっかけは、兄の背中を一生懸命追いかけていた時だった。


 その日は従兄弟達が遊びに来ていたので、兄は久しぶりに幼い妹ではなく、同年代の男の子同士で遊べると楽しみにしていたのだと思う。私を置いてきぼりにして、庭に飛び出して行った。

 私は、いつも一緒にいてくれる大好きな兄が突然出ていってしまったので、あわててその後ろを追いかけようとしたのだ。

 よちよちと覚束ない足取りで付いてくる妹に気付いた兄は、振り返って言った。


「エリーゼ、お前は帰れ!」


 ぴこん、と、私の前に半透明の文字が現れた。


『はい』『いいえ』


 びっくりした私は思わず立ち止まり、幼くても最初に教わるふたつの文字を見つめる。

 兄は、私が立ち止まったのを見て、そのままうちに帰ると思ったのだろう。ほんの少し申し訳なさそうな顔をしたけれど、また背中を向けて走って行ってしまった。


 私は、半透明の文字を見つめる。

 兄は「帰れ」と言っていた。帰るかどうか、という答えを選べば良いのだろうか。

 私は人差し指で、そっと『はい』に触れた。 


 ……その瞬間に文字は消え、私の世界から兄も消えた。







 私の世界には、母がいない。そして、兄もいなくなった。


 母も兄も、いないのは()()世界だけだ。

 父は二人がいるように振る舞っているし、うちの使用人にとっても二人はいることになっている。

 でも、私には二人は見えないし、声も聞こえないし、触れない。二人にも、私は見えないし触れないらしい。


 昔から私にとって、母は()()()()()。亡くなったわけでもなくただ()()()()()

 父は何かしらの事情で母が心を病んでいて、娘を認識できないのだと思っていたらしい。だけど、ついには兄も「エリーゼがどこにもいない」と言い出したので、教会の巫女様に頼ることにしたそうだ。

 父からみれば母と兄も乗っているという馬車は、私にとっては父と二人きりの空間だった。父が間に立ち、母の言葉をそのまま私に伝えようと試みたが、不思議と私の耳には言葉として入ってこなかった。



 巫女様はその人の能力を特別な目で見極めることができる。

 母にも兄にも問題はなく、原因は私の能力だと判明した。

 『縁切り』……いなくなって欲しい。消えて欲しい。そういう意図を明示されたとき、それを受諾して縁を断ち切る能力。

 そう説明された瞬間、私は前世の記憶を思い出した。



 人間関係が拗れに拗れて、神頼みで向かった有名な縁切り神社。

 その急階段から足を滑らせた最期。

 死んでしまえば確かに縁は切れる。あぁ、神様はちゃんと願いを聞き届けてくれたんだなぁ、と。


 兄の発した「帰れ」は、前世の社会では「消えろ」と同じ意味でも使われていた。本人にその意図は無くとも、縁切りワードとして発動したのだろうか。

 そして、既に母と縁が切れているということは、母はかつて、娘にそういう意図の言葉を発したことがあるということだ。その時、言葉の意味もわからず、私はそれを受諾したのだろう。


 巫女様の説明では、縁切りワードを発するのは相手だ。私は受諾するかどうかの選択肢を持つだけだから。


 巫女様から「一度切れてしまった縁を繋ぎ直すことができるかはわからない」とはっきり言われた父は頭を抱え、(私には見えないが)母と兄は泣いているのだと思う。


 私の世界からは切り離されてしまっても、私以外の人々には何の影響もないのだから、気にすることないのに。

 


 前世の記憶で頭がいっぱいになってしまった私は、悲しいとか寂しいとかの感情を覚える余裕もなく、ただぼんやりとそんなことを思っていた。













 その後、「簡単に縁切りを受諾してはいけない」と父に言い含められて育った。

 しかし前世の記憶の影響か、「ごたつくくらいなら早々に関係を切ってしまった方がお互いの為ではないか」という考えのベースができてしまっている。前世でも、私は人間関係をフェードアウトしがちな人生だった。最期の方では、フェードアウトしようとしていたのに粘着され、誤解され、一方的に糾弾され……縁切り神社に縋ってしまう程に、人間関係に疲れ果てていた。

 そう思えば、バッサリいけるこの能力は、私の心の平穏のためには必要なものだ。

 縁を切っても相手の生命を脅かすこともなく、相手の人生からただ私の存在……たとえば、前世の仕事で使っていた画像編集ツールでいうところの、「私の存在」というレイヤーが不可視になり、私の人生からは「相手の存在」というレイヤーが不可視になるだけ。重なっていても、お互いの立っているレイヤーが違っていれば互いに干渉することもない。いたって平和だ。


 だから私はたびたび父に言うのだ。

「いなくなって欲しいと望まれる程に私の事が疎ましいのだから、そのタイミングで縁を切るのはお相手の為にも良いのです」

 父は悲しげに首を振り、「人の想いは、言葉程度では正しく伝えられぬ」と呟いた。


 私はその後も、半透明の文字が目の前に浮かぶ度、『はい』を選択した。 

 「この場からいなくなれ」という趣旨の言葉は、どれだけ丁寧でも遠回しでも縁切りワードとして認識されるようで、私の前には半透明な文字が浮かんだ。

 父が言うような言葉の裏の真意なんて、他人である私にはわからない。ただ、いまこの人から縁切りを提示されたのだな、と受け取って、私は淡々と縁切りを受諾していった。


 この世界で成人とされる15歳になる頃には、私の周りにはほとんど人がいなくなっていた。

 私を認識できなくなった使用人は頻繁に入れ替えられたが、次第に「私を認識できていることにすれば当主である父に気付かれず、クビにされない」と、使用人同士で結託し始めたようだ。

 私を視認できる使用人が合図を出し、私のことを見えているように振る舞っているらしく、不自然な誘導や待ち時間をとらされることが増えていった。

 やがて、私を認識できる唯一の家族である父が在宅している時以外は、私室の外から鍵を掛けられるようになった。「エリーゼがいつの間にか部屋にいない、使用人が気づかないなんておかしい、実は既にエリーゼと縁切りして見えていなかったのでは」という発覚を恐れてのことだ。


 でも、私は特に困らなかった。

 幼い頃に唯一の遊び相手だった兄と縁を切っていて、私にはずっと遊ぶような相手がいない。基本的には部屋で本を読んでいるし、どこに行きたいという望みもなかったから。



 父は、私を社交界にデビューさせるかずっと悩んでいた。

 私の能力は公表されていないが、そもそもおおっぴらに発表できる内容でもない。デビューしてしまえば「私を見える人」と「私を見えない人」が同じ場所に揃ってしまう場面も出てくるだろうし、その時にどう説明するかも難しい。


 妥協案として、父は私の能力を知る婚約者を用意することにした。

 選ばれたのは、我が家より家格の低い貴族の三男、ルイス様。

 本を読むついでに貴族名鑑などにも目を通していたけれど、その家に三男がいるというのはどこにも載っていなかった。私と同じ、存在を公にされていない子息なのだろう。


 いずれにしろ、恋愛にも結婚にもこれといった興味がない私は、「やっかいな性格の相手だったら、早めに縁切りしてほしいな……」とぼんやり考えていた。







 婚約者と初めて対面する日、付き添いの父はずっとそわそわしていた。部屋の中に母や兄がいるのかは知らないが、不安と期待が入り混じったような雰囲気に、私は首をひねる。

 公にされない子息子女の婚約など、もっとひっそりこっそりするものだと思っていた。

 私は真新しいドレスがあつらえられ、数少ない私を認識できるメイドたちによって目いっぱい身だしなみを整えられていた。


 迎えに出る必要はないと言われたので、玄関までお相手の家族を出迎えに行った父が戻ってくるのを待っていると、応接間の扉がゆっくりと開いた。


 ソファーから立ち上がり、公式の礼を執ってから顔を上げると、にこやかな父と、父と並ぶ穏やかそうな紳士と、ほっそりした真面目そうな青年がそろって部屋に入ってきた。


「エリーゼ、こちらがベンケル子爵とそのご子息のルイスくんだ」

「はじめまして。リンツ伯爵家長女のエリーゼと申します」


 父の紹介からベンケル子爵と名乗りを交わし、続けてルイス様にも名乗るが、ルイス様はにっこり微笑んで礼を執るだけだった。

 ベンケル子爵が「ルイスは口が利けないんだよ」と言う。

 私は「あぁ、なるほど」と今回の婚約の意図を理解した。言葉を発せないのであれば、縁切りワードを口にすることもなく、私の世界から消えることもない。

つまりは、そういうことなのだろう。


 俯く私の手を、ルイス様がさっと掬い上げた。


 視線を上げると、自分の手に乗せた私の左手を、ルイス様は真剣な面持ちで眺めている。


「……」


 しばらくして、ルイス様の視線が上がり、綺麗な緑色の瞳が私をまっすぐに見つめた。

 ぼんやりとした顔をしているであろう私に、再度にこりと微笑む。ルイス様の視線は私から逸れ、父とベンケル子爵の方に向いた。

 父が緊張した表情で頷く。

 ルイス様は私の手を持った右手をそのままに、左手を虚空に伸ばした。空中で何かを掴むような動作。

 そして左手を引き戻し、私の左手の上に重ねた。


「え?」


 感触がおかしい。


 ルイス様の左手の下……私の左手の上に、もう一人誰かの手がある。


「……!」


 顔を上げる。

 ルイス様の隣に、いつの間にか見知らぬ女性が立っていた。


 女性はひどく驚いた顔をして、私を見下ろしている。私とルイス様の間に挟まっていたのは、この女性の手だった。


 突然現れた人物にびっくりしてルイス様を見ると、ルイス様は頷いて、更に一番上に乗せていた自身の手を再び空中に泳がせた。

 空気を掴んで、私と女性の重ねたままの手の上に乗せる。


 女性の隣に、もう一人若い男性が突然現れた。


 ……なんだろう、マジック?


 困惑する私の前で、女性が声を上げて泣き出す。いつの間にか父も近寄って来ていて、女性の肩を抱いた。


 ……それを見て、私は気付いた。この人は、母親なのではないかと。

 若い男性の容姿も、見覚えがある。幼い頃、ずっと一緒に遊んでいた兄が成長すると、こういう容姿になるかもしれない。



 嗚咽から号泣に切り替わった女性にすがり付くように抱き締められ、静かに涙を堪えて震えている男性と嬉しそうな父に囲まれている状態で、私は戸惑うしかない。


 一度切れた縁が、また繋がったということ……?


 父は私の頭を撫でた。

「ルイスくんは、教会からご紹介いただいたんだ。お前のギフトである『縁切り』と対になる、『縁結び』という能力だと」

「縁結び?」


 



 父とベンケル子爵は、母と兄と思われる人たちを連れて別室に出た。部屋に残されたのは、私と私の手を取ったままのルイス様だけ。


 ルイス様はにこりと微笑む。

 掴んだままの私の左手に、人差し指で『だいじょうぶ』と文字を綴った。

 

 いったい、何が大丈夫なのだろう。

 私は、私の閉じた世界を愛していたというのに。


 俯く私を、ルイス様が覗き込む。

 そして、私の手のひらにゆっくりと、ひと文字ずつ綴った。


 『きみ だいじょうぶ』

 『やさしいひと たくさん つながっている』

 『はなすことばだけ つたわらない たくさんある』

 『ね?』


「……ルイス様は、きっととてもお人好しなのだろうなぁとはわかりました。……頼んでないわ、こんなこと」


 くふふ、とルイス様の喉が息を洩らした。


 『えん きりたくなっても やりなおせる』

 『なんどでも ね?』


「貴方と一緒にいれば、確かにそうなのでしょうね。でも、私はただ、煩わされず静かに暮らしたいだけなの」


 『ぼくは しずかでしょ』


「…………それは、そうだけど」


 『おなじせかい おなじくに おなじまち しらないひと いっぱいいる』

 『ぜんいん なかよくしなくていい』

 『ここちよい かんけいで』


「……………。ルイス様にとって、この縁談にメリットはあるんですか?」


 澄んだ緑の目をきょとんとさせて、ルイス様は『めりっと どういういみ?』と綴った。

 ……言われてみれば、前世の言葉だ。エリーゼになってからあまり他人と会話をしてないものだから、頭の中では前世の言葉を気にせず使っていた。


「私、前世の記憶があるんですけれど……」


 誰にも話した事がないのに、ルイス様には話してもいい気がする。先ほどから、ずっと何の気も遣わずに話せている。

 口調に乗ってくる機嫌を感じ取ったり、言葉の裏を読まなくていいからかもしれない。



 この世界にはない「異世界」という表現を簡単に説明し終えると、大きく頷いていたルイス様の笑顔が更に深くなった。


 『せかいをこえて ぼくたち あえたんだね』


 私は綴られた文字に呆然とした。

 どうにか「そう、ですね」とだけ呟く。

 私はこのひとと、この先も一緒に生きていくような予感がしていた。














★★★★★★★★★★★★★★★★★★






 記憶にあるもっとも幼い頃からずっと、ルイスの左手の薬指には真っ赤に輝く光の糸が結ばれている。



 ルイスは昔から、ひとから伸びるたくさんの光の糸が見えていた。

 太さもまちまち、輝き方もまちまち、色味もまちまち。

 多くはそれぞれの糸が複雑に家族や友人と空中で繋がっているのだが、中にはぷっつりと途切れている糸屑のようなものや、糸の先がもやもやと途中で消えかけているものもある。

 どことも繋がっていない糸同士は、それが見えるルイスが摘まんで重ねて撚り合わせるようにすると、いつの間にか一本の糸に成っていた。


 ルイスにとって当たり前なその現象が、父に連れられて行った教会の巫女から『縁結び』と稀有なギフト名を授かってしまったことで、ルイスの扱いは「口がきけない可哀そうな末っ子」から「奇跡を起こせる神の子」に変わった。


 ルイスは冷静に、これはいずれ教会に入れられるのだろうなぁと思った。

 

 実際、口がきけぬことで家族にも気を使わせているし、家族もルイスを教会に入れた方がルイスのために良いと考えているようだった。


 だが、ルイスには諦められない想いがあった。この、左手の薬指の糸の続く先を知りたいという願い。



 ルイスの将来の足場がためのためか、父は昔から熱心に教会へ赴いていた。

 いつものように教会へ行っていたはずの父が、戻るなり「婚約者を紹介するぞ」と言い出したのはひと月ほど前のこと。


 ルイスのギフトと対をなす稀有なギフト持ちがいて、その家族から教会の巫女へ縁談の仲人の要請があったらしい。ギフト持ちを把握している教会では、そういう相談事も受けていると聞く。


 幼い頃から、将来は教会に入るのだと思っていたのに、その教会から縁談を持ちかけられるとは思わなかった。


 ルイスは、そこでリンツ伯爵家という名を初めて聞いた。

 山脈の麓のリンツ伯爵領は、過去大きな災害などに見舞われたことがなく、国内でも有数の歴史的建造物が残る土地らしい。



 ルイスは旅を楽しんだ。

 『縁結び』というギフト故、流されるように周囲の望みを叶えるばかりの生き方をしてきたが、自分の物語がようやく動くようでわくわくしていた。


 ……馬車は、まっすぐにルイスの左手の薬指から伸びる赤い糸の方向へと進んでいく。

 






 紹介されたリンツ伯爵家の娘・エリーゼの指には、確かに自分の薬指と繋がる糸が輝いていた。

 ルイスは嬉しくて嬉しくて仕方なかったけれど、先ずは父から前もって説明されていた、この沈鬱な雰囲気を醸し出すリンツ一家の憂いを払わなくてならない。


 エリーゼから伸びるたくさんの糸は短く途切れているものが多い。まるで鋭い刃物で刈り取ったかのように。

 エリーゼの前に紹介を受けた夫人と長男にも刈り取られた糸がゆらゆらと漂っていて、もともとエリーゼの糸と繋がっていたのがわかる。


 エリーゼのギフトは『縁切り』といい、この糸を断ち切るものだという。

 長く人々の糸を見てきたルイスにも、ぐちゃぐちゃ絡まりきってる糸や、短く柔軟性がないため互いを引っ張りあって邪魔するばかりの糸など、断ち切った方がお互いに生きやすくなりそうな糸があるのはわかる。

 ただ、リンツ伯爵がいうには、エリーゼは切れそうな糸があると問答無用で断ち切ってしまうのだそうだ。それは「相手の発した言葉」をもとに選択されるとの話だから、きっとルイスのように糸が見えているのではないのだろう。


 少なくとも、全く互いを視認できないというエリーゼとその母兄の糸は、繋いでもごちゃごちゃしなさそうな綺麗な糸だ。

 無表情でうつむくエリーゼの手をとり、ルイスは自分と繋がる赤い糸をそっと撫でた。


 探していたルイスの魂割(たまわれ)。唯一の片割れ。


 リンツ伯爵に促され、エリーゼの隣に立った夫人から漂う糸と、エリーゼから伸びる糸とを、手のひらの上で重ねて撚る。

 続けて、ご長男とエリーゼの糸も、重ねて撚る。


 前もって説明されていた話が正しいなら、夫人は14年ぶりに娘の姿を見、またエリーゼは母親と初めて会うようなものだ。

 エリーゼの長い睫毛が戸惑いに揺れているのを見ながら、ルイスは彼女の背後で彼女に「すべて悪縁だ」と囁く陰を感じた。

 ギフトと呼ばれる力は、天上の神に与えられるものだという。

 強い力であればあるほど、人間の身体になど収まりきるはずもなく、こうして凝るのだろう。ルイスの薬指の糸への執着も、こうした力の凝りの渇望によるものだ。

 エリーゼのギフトは文字などではなく、声にのみ反応を示す。ルイスの声が生まれながらにして欠けていたのも、きっと彼女から縁を切られないために自ら望んだことだ。


 「約束を果たしたら」と前もって頼んでいた通り、リンツ伯爵と父はすぐにエリーゼとルイスを二人きりにしてくれた。

 

 エリーゼはルイスと同じ年に生まれたと聞いているが、ずいぶんと小さく見えた。先ほど彼女と共に来て壁際に控えていた、彼女と縁を切られたらしき使用人たちの人数を見れば、彼女の世話をしている使用人がずいぶん少ないのがうかがえる。

 人材が不足してる訳でもない伯爵領で、彼女と縁のない者をわざわざ彼女の側に置く意味はなく、縁切りされたのをリンツ伯爵に隠している者たちが多いのだとすぐに理解した。

 それに気付いているだろうに、エリーゼはわざと放置しているのだ。


『ぜんいん なかよくしなくていい』


 ルイスは指で丁寧に綴った。

 切るべき糸は教えてあげる。きみは、きみを愛する輝きの糸にだけ包まれていれば。


『ここちよい かんけいで』


 ルイスは心のそこから幸せそうに、微笑んだ。

縁切り神 ( √;´・ω・)√ア…イヤ、ソンナツモリジャナクテ…

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[気になる点] 主人公は屑
[良い点] すごく面白くて短編をいくつか読んだけど、どれも話のプロローグという感じで、結末がないのが気になります。 面白いプロローグにアイデアが偏るのかな?と思いますが、ぜひ結末まで読んでみたいもので…
[気になる点] 使用人が主家の令嬢に発した「縁切りワード」ってどんな言葉なんだろう? 後の対応からして多分碌でもないこと言ってたんだと思うので、ルイス君に糸を見てもらって縁切りされてる使用人は全員解雇…
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