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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第36話〔オジさんになると乗る馬車を間違えてしまう〕再開50日目[午前中]

 ――数日後、勇者大合同と呼ばれる国の強制任務に参加させられる事となったのだが。


 何を間違ったのか……。


「オッサン、もうコレ無いのか」


「あるけどまだ食べるの? てか食べれるの」


「おう無限に食えるわ」


「そうか、分かった」


 水泳の前は体に負荷がかかるから食事は避けよと聞くが。


「――はい、三分待ってね」


「二分が限界だろ」


 腹が減っては戦はできぬとも言う。


「他の、皆さんは?」


「――ワタシは、もう十分に」


「後でまた、食べたい……」


「おかわりしたから無理無理、て言うかアキラ――食べ過ぎで本番動けなくても助けてあげないわよ?」


「……ァァッ? ザケんな、命懸けで助けろよ、俺は勇者だぞっ」


「フザケてるのはそっちでしょ、前回見捨てられた事、まだ忘れてはないわよ」


「根に持ってんじゃねぇよ、ババアが」


「ハァアアッ? ――ブッ殺す」


 という感じで、狭い車内で始まる仲間割れ。その熱い戦いから身と所持品を避難するべく端に寄る。


「――……スミマセン、いつもこんな感じで……」


 と勇者アキラのパーティーでハイプリーストを担う、彼女が申し訳なさそうに言う。


「いえいえ、若者とご一緒できると賑やかで寧ろ助かります」


 辛気臭いのはどちらかと言うと苦手なので。


「しかし限度が……」


 ふむ。想像ではあるが――。


「――日常的に、苦労をなさっているんですね……」


「分かってくれますか……!」


 お辛いんですね。


「先日もオーガ討伐と意気込み余計な敵を招く次第で、その尻拭いを……ッ」


 うんうんと徹する。


「そこに居ますミアはタンクの役職上、皆を守る為に――」


 ェ。このおチビさんがパーティーの盾なのか。


「――結局最後はいつも通り二人が喧嘩を始めてしまい、一帯が焼け野原……その代償たるや……違約金をも含みっ」


 クイクイと横から肘に近い箇所の布が引かれる。


 相手は正しく内心で話題にした例のお嬢さん、で。


「はいはい?」


「――ラニは愚痴り出すと長いよ……」


 どうやらその様で。


 それは別件として、どうも何かを言いたげに見える。ので。


「……何か?」


「――さ、さっきの……まだある?」


「即席麺のコトでしたら、ありますよ。要りますか?」


 やや興奮気味に小刻みな頷き。


 さすればと、簡易的な包装の中にある物を袋から取り出す。


 次いでそっと受け取る、精妙な動きのおチビさん。


 まるで精霊を相手にしているかの様な柔らかい雰囲気で、とても嬉しそうに袋を見つめる。――ちなみに精霊と会った事は今のところ一度もない。


「今、食べますか?」


「ううん、後で」


 そう言って宝物でも扱うかの様に収納を開き、即席麺入りの袋を中に仕舞う。


 オジサンは少し胸がポワっとなる。


「――ですから……、そういえば、お名前をお聞きしてませんでした?」


 話の区切りにでも差し掛かったのか、熱弁をしていたお嬢さんの不意な問い掛け。で。


「これは失礼しました。竹本(たけもと)(まこと)でございます、以後お見知りおきを」


「……タケモ、トマコ……ト、異世界の人名は特徴的なものが多いですね……」


 なんかトマホークみたいで嫌いじゃない。が。


「簡単にマコトと呼んでいただければ、いいですよ」


「マっママ、それはさすがに……ッ!」


 どうせならパパと呼んでほしい。


 とまあワタワタとなさるご婦人を余所に、袖丈部分が引かれる。


「――はい、何でしょう?」


「……ラニの出身地は男が自分の名前を呼び捨てにさせるのを、求婚として扱う」


 なんてこった。――しかしだ。


「仲間内はどうするんですか……?」


「それは例外」


 仲間である以上は恋人未満。交友関係が微妙になるな。


 とはいえ、さすがにこんなオッサンに言われたからと本気になる訳はない。じゃないと世の中に求婚者だらけとなりません? ただ。


「以後、気を付けます」


 それにしても、今頃お二人は何をしているのだろうか。一つ断言ができるとすれば、再会した時にえらく――怒られるという事だろう。トホホ……。








  オジさんになると乗る馬車を間違えてしまう/了

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