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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第35話〔姪の憂鬱な日々その②〕再開〇日目[日中]

 私には母方の叔父が居る。


 変に真面目で、何だかんだ若者の会話にも交じれて、それでいて何処かズレている。


 私はそんな叔父が昔から好きだ。


 モチロン家族愛として。


「――そろそろハロアを離れそうと思う」


 予定の滞在期間を終える前に、二人には言っておかなければならないと思い、伝える。


「もう、したかったコトは済んだの?」


「ぅん。オジさんの装備は整えたし、ちゃんと仕事ノルマも熟した」


 付け加えると不本意ながら仲間メンバーも増えて。


 これ以上は仕事を理由にした滞在も出来ない。


 つまりは自費になる。


「名残惜しいが仕方あるまい」


 昔から、オジさんは度々語り口調が変わる。


「して、前の所に戻るのか?」


「ぅぅん、行く場所がある」


 ほうと言い顎先をツマむようにして撫でる。そんな叔父に、私は先日届いた手紙を差し出すと迷わず受け取るオジの表情が強張る。


「……これは」


 まだ内容すら読んでもいない。……何?


「全く読めん」


 宛先が記載された封書の表面を見つつ叔父は告げる。


 単純に渡した自分の失敗だった。


 代わりに読もうかと思ったけれど、先に手を伸ばしたのはホーリーさん。


「オジ様、自分が読みますよお」


「頼んます」


 戦いでは全く頼りに出来ないが、こっちの基準や文化に慣れていない叔父さんのよき世話係になっているのかもしれない。


「ええと、――拝啓、勇者様におかれましては益々ご盛栄のこととお喜び申し上げます」


 毎回思う。どうして国から来る手紙はいつもビジネススタイルなのだろうか。と。


「つきましては本年度もまた、我が国の勇者大合同の任を果たしていただきたく存じ日時及び集合場所の詳細を送らせていただきます」


「……大合同?」


「手紙の内容は大体いま言った感じですね」


 そうして二人が見合って首を傾げる。唯一答えを知る私に顔が向くのは、当然の事と。


「年に一度、所属している国の勇者を召集して行う国家指揮の、強制任務だよ」


「例外は無いのか?」


「相応の理由があれば別。でも私には無い」


「――具体的な内容は?」


「それはまだ、と言うか当日に分かる……」


「適切な準備も出来ないって訳か、段取りが悪いな」


「ぅん、でも大体は見当が付く。なんなら恒例行事って言われてるからね……」


「なぬ――お祭り的なコトなのか?」


「歴とした討伐、魔物の退治だよ。普通に死亡者も出る」


「……尚更駄目じゃん、即日告知とか」


「中身が知れてるからね、当日決まるのはポジションだけだよ」


「ポジション……?」


「だから――」


 途端に手紙を握り締めホーリーさんが床へと突っ伏す。


 四つん這い、もしかすると涙ぐんでいる様にも見える。


 ――何故。そんな疑問へ親身に寄り添う、叔父。


「……お腹空いたか?」


 あまり親身ではなかった。寧ろ親心かもしれない。


「お腹は、空いてます……」


 どっちもフザケているので安心して後で忠告が出来る。


「……でも、吐きそうなのはソレが理由ではないと思います……」


 吐きそうだったのか、と言うか空腹時に何を出せるのかは少し気になるところ。


「朝から十個も卵を食べるからでは……?」


 わんパックッ。


「ですが地鶏だったのですよ……ッ」


 もういい。


「――……話を進めてもいい?」


 二人が頷く。


 ただその前に――。


「ところで、今朝知らない請求書が何枚か届きました。心当たりのある人は、手を挙げてもいいよ」


 結果目の前の心が同時に姿勢を正す。


「食費です」


「食事です」


 対策を立てる必要がありそうだ。


「追って対応します……」


 本当に溜め息が出る。


 けど、一年前の私は――憂鬱な日を知る事も、無かった。








  姪の憂鬱な日々/了

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