第29話〔叔父さんは若者のノリについていく〕再開33日目[午前中]
私は憤慨していた。
相手は勿論の事、叔父である。
かく言う叔父は宿泊中の部屋にて、私の前で土下座。
何故かその隣でレイナさんも同じ様に平伏しているのが気になる。
「相談もなく勝手に拳鍔を置いてきて、大変申し訳ありませんでした」
「――ありませんですっ」
「……――オーダーメイドって、いくらするか知ってる?」
「申し訳ありません!」
「せんっ」
「答えになってないよ」
と言うよりも。
さすがに叔父も顔を上げて同じ対象を見る。
「「何で居るの……?」」
「――え?」
*
彼女の名はレイナ・ホーリー、以前護衛依頼で訪れた村の出身者で姉が居る。
本人はヒーラーとしては上級職に該当する冒険者で、前科は今のところ無しな元食い逃げ犯。として窮地を救った後、しばらくは姪が雇用する形で同行を許していたが誕生日会の翌日に、何故か。
「――カイス村に帰ったのでは?」
「ハイ、帰りました」
「一週間と経ってないが……」
「三日で飽きました、何も無さすぎて」
「お姉さんを手伝うとか言ってなかったっけ?」
「年に一度の収穫時に戻ると約束をしました」
なるほど。
「それでなのですが、正式に自分を勇者様達のパーティーに加えてください! お願いします! どうかッどうかッ!」
先程以上に床でゴリゴリと額を擦り付けては声を上げる。
念願のヒーラーなのに、なんとも心は引かれない。
「私に何のメリットが……?」
酷い。というか本来であれば馬鹿げた言い様である。
なにせ相手は上級のヒーラー。通常であれば回復役の居ない現パーティーに必須且つ縋りたい思いで受け入れるのが普通だ。
ただ彼女は。
「囮役なら覚悟をして来ました! 雑務、雑用、どの様な作業でも自分は寝ずに行う気持ちがありますですッ!」
凄まじい使用人根性、故に本分との相違が甚だしい。
アナタ、ヒーラーですよね……。
「……――もぅ間に合ってます」
ウソ、でもないか。
「そんなァ……」
スゲェ。仲の良かった身内が目の前で死んだ位の絶望した様子。
さすがにこれは可哀想なのではと、姪の方を見る。
「……――囮ならまだしも、家事全般は……」
意図は分かるがこちらを見られるのもそれはそれで考えものだ。
「なら囮役で!」
「ホーリーさんはヒーラーですよね……」
「モチロン回復が出来る魔法もあります!」
ェそうなの。だったら何故早くソレを。
「以前カードを拝見したので知ってます。回復魔法は唯一の継続効果ですよね……」
継続効果。つまりリジェネ的な。
「ハイ……それだけしか覚えてません」
むしろ何でソレだけは覚えたのよ。
というか――。
「――今後で、増やせばいいのでは?」
「……成長期に他へ注ぎ込んでしまったので、今からだと時間が掛かります……」
マジで何でヒーラーになろうと思ったのよ。というか冒険者に。
「ですが製薬スキルを頑張ってます、ので回復薬を効率的に生産させていただきます!」
薬ではなく回復役になってほしいのだが。――しかし反応は思いの外。
「レベルは?」
「Lvは3です」
「付与効果は」
「追加生産と素材軽減を選択しました」
「採用」
「ドヤッターッ!」
……。
そんな訳で、我がパーティーに新しい仲間が――回復薬が加わる事となりましたとさ。
叔父さんは若者のノリについていく/了




