第27話〔若者はいささか真面目すぎる〕再開29日目[お昼時]
――勇者一同作戦会議の様子。
最初に口を開いたのは自称最強の勇者アキラ。
「助けに行っても意味ねぇぞ、どのみち全員殺されるわ」
とそのパーティーでヒーラーを担う、上級職。
「偵察に向かった二組を待つのが得策です」
「はっ、一時間以内に帰って来る保証なんかねぇだろ」
「……ですが」
「いいから勇者でもねぇ女は黙ってろ」
当然そんな時代錯誤な言い分には思ん量りに対象となる女勇者が異を唱えた。
「その言い方は良くないですよ……、アナタの仲間が言ってるのですから」
「ソレ今関係あんのか? 説教したいなら先ずは良案の一つでも出してから言えよ」
「説教って、私はただ話し合いで争ってる場合ではないと。――アナタも、そう思いますよね? それにヒメさんは私達よりも先輩の勇者ですから、案を尋ねるのなら私ではなく先人の意見を伺うべきではないでしょうか?」
「はっ? 先かどうかとか関係ねぇだろ。第一殆ど喋ってねぇじゃねえかソイツはよ」
「ソイツって、そういう風に人を呼び捨てにしないでくださいっ」
「あッ、オマエもアナタとかって言ってんだろうが!」
「ソイツと一緒にしないでくださいっ!」
「はァッ? てかそれこそ今する話じゃねえだろうがよッ!」
「始めたのはアナタじゃないですかっ!」
「はあッ。マジで訳分かんねぇなオマエ……、――いっそ先にヤっとくか?」
押し殺す声で告げると勇者アキラの手は所有する武器に掛かる。
当然制止を促す仲間の言葉は、意味をなさずに一蹴され。
殺意の矛先に立たされる別の勇者は好戦する気など端から持たぬものの。
「アナタは気が狂ってます……!」
正当防衛を成立させる要件を満たしたとして、剣を手に取る。
「よし、抜いたのはオマエが先だ」
「フザケないでくださいっ」
「いいやマジだぜ、勇者の殺人には理由が要る。――我が刃に力の施しを」
エンチャント――≪強化≫――。
効果は使用する武器の強靭化、威力や耐久性能の増加を施す。
アキラが本気で相手を殺すと決めた際に行使する一連の流れである。
「殺人の理由なんて……っ!」
剣先を下げて下段に構える、相手に応じる勇者アミの基本形。
それぞれの性質も相まって結果は率直な実力にて勝敗を左右する戦い。
次いで切れる火蓋は――落とされない。
二人の間に割って入る勇者の手で対峙した二つの刃は気付かぬ内にその所有者から奪い取られ、呆然とした様子で立ち尽くす勇者達の顔が一瞥される。
柄にもない。そう思いつつ一応先達としての自覚はある女勇者の小さな嘆息が漏れた。
「……私が行く。それでいい?」
「行くって、何処にだよ……」
「囮になって時間を稼ぐ、アナタ達なら逃げれるでしょ。ただ一つだけお願いがある」
「お願い? なんだよ」
「私のオ――仲間を、連れて行ってほしい」
「仲間って、あのオッサンか? べつに構わねぇけど……、本人が嫌がったら説得なんてしねぇぞ」
「ぅん、それでいい」
最終的には強硬手段も厭わないから。
ただ一つ、先刻から気になっていた事がある。
「で、あのオッサンはどこだ……?」
そう、先ほどから姿が見えないのだ。
「――あの、言うかどうか迷ったのですが……勇者様達が話を始める少し前に建物の外へと出て行かれました」
“ハイ?”三人の勇者が感情を表す上でシンクロする。
「まるで散歩でもするかの様子で行かれたので、止め時を見失い……」
「イヤ、だったら言えよ」
「アナタは黙れと」
「それと話し合いとは別だろうが!」
勢い余って拳を握る。思わず目線を切る形でアミの体は間に入る。
「落ち着いて。とにかく外の様子を確認して」
「確認もクソもあるかっ、とっくに死んでんだろッ」
うろたえる一同。中でも表面上は平静に見えて誰よりも我を失う彼女の手が賛同を得ずに外へ飛び出そうとした矢先。
徐にその道が開かれる。と。
「ん、どうした。と言うか話は終わったのか?」
「……オジさん、なんで」
「何が? イヤその前に、――ささお入りください」
と見慣れない。しかし確かな記憶に新しい面々が建物の内部へと踏み入ってくる。
「ロザリーっ?」
其々が其々の仲間の元に駆け寄る。
感動の再会。そんな雰囲気に包まれる荒廃した建物内にて人質の関連からは部外者だった女勇者が誰よりも先んじてその答えを問い、求める。
「……何故?」
「ああ。外の魔物なら皆寝てる、今が逃げ出す絶好のチャンスだ。てな訳で若者達よ、喜びも束の間で悪いけど急ぎこの場を後にしようか」
謎が謎を呼ぶ。
事情を知らぬ者達にとって、謎は深まるばかりでございます。
「じゃ行こっか」
若者はいささか真面目すぎる/了




