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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第24話〔叔父を悩ます続々・魚介編その②〕再開27日目[日中]

 ――実を言うと、ここのところずっと魚介に悩まされていた。


 迷宮内の川を見詰める事から始まり、思い付く範囲で思考したが他に出来そうな事もなく。なので、選択肢として拘っている程ではないものの努力はしたいと思う。


 一先ずは店を確保したく直接受けた仕事は討伐依頼、最近畑を荒らす魔猪を倒してほしいという単純な内容だ。


 そう、単純かつ明快。


 こんなオジさんと自己保身に特化したヒーラーで無ければコソコソと策を練る事もせずに倒せる相手なのであろう。


 と今になり思い残しても現状は何も変わらない。


 今は心を無にし、訪れるであろう機会を待つばかりである。


 といってもスキルのクールタイムは既に完了しているので、本当に待つだけ。


 ――一応、今回の流れを改めておく。


 作戦は極めて分かり易く、囮役が魔猪を連れて来るってだけ。


 こちらは岩陰に隠れて静かに機を待つのみ。


 いやあ単純で宜しい。


 今は只管神に祈るとき。


 まあ大丈夫だと思うけどね。


 姪っ子が言うに、彼女は職業的な位付けでは上級職に該当するらしい。


 無論ヒーラーである事を差し置いても、冒険者としての実力は通常で貴重且つ立証されている筈、と。


 なので本人が現在の状況に陥ってしまった理由はたった一つ。


 ありとあらゆる自己保身的な力の、特化型に他ならない。と。


 例えば頻繁に使用するホーリーベールと言う魔法は悪意もしくは敵意ある魔物から身を隠す効果で他者には掛けることができない。


 しかもその間は杖等の、魔力行使媒体を両手で握る必要があり他の魔法を使えないので逃げる他はし辛く。


 着衣程の身近な所しか効果は及ばないので、荷物を運ぶとかにしても実質の効率は悪い。


 しかしながらヒーラーである以上は回復こそが主たるもの、それさえ保障されていれば仲間内で嫌厭けんえんされる程の立場ではない。が。


 ――ん? これは、おいでなさったか。


 振動、もといここまで来れば地鳴りとも取れる。


 次いで慌ただしい状況が見ずとも伝わる。


「ギャアアアア……ッ!」


 スゴいスゴい、予定通りに近付いて来る。


「タスッ、助っけでくだざーいッ! ギャアアー!」


 了解。とタイミングを合わせて、全ての強化スキルを発動させていく。


 ――後は運否天賦うんぷてんぷ


 ……来い!


 と次の瞬間、泣きじゃくる必死の形相が予定通りに目の前を横切る。


 見えてからでは遅い、完全な決め打ちで――!


「ブモッフブッ! ブッフォッッ?」


 やっぱりデカいな魔猪コイツは。だが――。


「ボベッブッッ……! ッ……ボ、フッ」


 ――拳に伝わる爽快な粉砕音、完璧となる手応え。


 よし、よし、よーし。


 次いで地を揺らす巨体の沈黙に伴い見事逃げきった功労者が舞い戻って来る。


「オジ様っスゴイですッりましたよ! 殺っちゃいましたよ!」


 うんうん、けれども年頃の娘さんがヤったとかは余りね。


 まあ口に出すと何かと面倒な世上なので。


「危険な囮役をアリガトね、本当に助かったよ」


「ぇ、イヤイヤァ自分は逃げ回っていただけ、ですので!」


 そう言う割には全面的メッチャ嬉しそうに。


「――それよりも、待機している荷運び人を呼んで早く帰りましょうっ」


 ム、そうだな。


「ヨシじゃあ戻るか」


「ハイ!」


 日の出方からしても十分に間に合う。――がその前に一つ。


「ところで、どうやって連れて来たの?」


 最後以外の遣り方は一任していたので興味がある。


「ええっと背中に長い棒をさして、上部に魔猪が好きそうな物を付けかざしました」


 それを近付いてから遣ったとしたら根性があるな。


「自分は魔法で気づかれなくなりますが、それだと囮にはなりませんから……」


 馬の前に人参をぶら下げるみたいな感じだろうか。


「ちなみになのですが、オジ様に言われたとおり直前で石鹸を出しそっぽを向く感じで成功しましたがどっちを見るかを最初から知っていたのでしょうか?」


 ん? ああ……。


「いや、それはたまたま」


 石鹸を嫌う効果も過去に試した訳ではないし。


「ェじゃあ……偶然、そうなったのですか……?」


「まあでも臭いと顔は背けるでしょ」


「……それはまぁ」


「危険な仕事をしてる訳だし、二択なら高い方でしょ」


 正味二択だったのかも謎だが。ここではそう言っておく。


「オジ様……」


「まぁまぁ、冒険者っしょ? ちゃんと冒険したじゃんか」


「……――そう、ですね」


 ぉ、気を取り直してくれた感じかな?


 だったらば。


「今夜はレイナっちにも沢山ご馳走するからさ。それで、行こう」


「ぁ、ハイ。ちなみにお店とは何の相談をしていたのかもう教えてもらえるのですか?」


「それは帰ってからの、お楽しみだ」


 久々に腕が鳴るってなもんよ、ね。


 さあ堂々と凱旋だ。

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