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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第19話〔叔父の悩み続・魚介編その③〕再開24日目[午後]

「あの、助けていただいて、本当にありがとうございます……」


 特に何の拘束もしていない状態で暫く自分達の後を付いて来ている元食い逃げ君がおもむろに話し出す。


「自分はその、冒険者になろうと思い村を出て来たのですが、ギルドの仕事がウマくいかず路銀も底をついて、で……」


 で、どうしたのかは敢えて問う必要も無く、本人も黙り込む。


 パッと見で若そうではあるが、髪も衣類もボロボロで正直性別すらも真面に判別ができる状態ではない。


 声も枯れていて今一聞き取りづらいし。


「……――どうするの?」


 目線も顔も前を向いたまま、だが自分に対する言葉だと分かる。


 無論問い掛けの意味も――。


「――まァ、取り敢えず……」




  ※




 ――そういえば私はどの様にして、異世界こちらに来たのか?


 ふと思う。


 来た後の事はハッキリと覚えている。


 その直前、どの様にして……まるで霞がかるように、ぼんやりとして要領を得ない。


 ただ微かに誰かの声が残っている。


 内容は分からない、それでも何処か聞き覚えのある慣れ親しんだ人の声――きっと。




  ※




 ――誰かに呼ばれる声で我に返る。


「勇者様? ……大丈夫ですか?」


 心配そうに自分を見る人の顔が映る。


 誰? いや――。


「――終わった? なら、これに着替えてください」


 まだ少し湿った髪と首に掛かったタオル、入浴後の着衣は宿のレンタル品を用意した。


「これは……?」


「今しがた買いに行った新しい衣服です」


 補足すると、使いの者となったのは叔父である。


「でも、自分は……」


「金銭の要求は後で構いません」


「それは、その……当てがっ」


「それも踏まえて話はします。だから、早く着替えてください」


「……分かりました」



  *



 使いに出た後、買ってきた物を渡し宿一階のロビーで待機する。


 ただ待つと言ってもかなりゆったりとした待合室の様な広間で、正直退屈である以外はのんびりとくつろげる椅子もあり居心地は途轍もなく良かった。


 経費の範疇でなければ一体どれくらいのお値段なのだろう、とか。


 買ってきた物のサイズが合わなかったのか? とか。


 自分の様な身なりで本当に居ていいのだろうか、とか。


 ソワソワとし始める、頃合いで。


「――お待たせ」


 ぉ、と声のした方を見る。


「……お待たせしました」


 次いで思わず、ほぅと関心。


「オジさん……?」


 ん? ぁ、イヤ。


「ああ、何でもないよ」


 本当です。


 ただ先刻の装いと言うか、見るからに浮浪者って感じだったのが人並と言うか人らしくなったと言うか。


 ちょっと過去の自分とも重なってホロリときそう。


 ――あと。


「ジ自分はその、冒険者になりたくて……村を出て、その……」


「いいよ、後で聞く。先に何か食べよぅ、お腹空いてるんでしょ?」


「ぁ、ハイ……」


 ――女の子だったんだなぁ。


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