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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第18話〔叔父の悩み続・魚介編その②〕再開24日目[昼食後]

 さてさて、この辺りで一旦現状を整理しよう。


 ――時は遡ること二十四日、自分は姉の子である姪と再会した。


 突如として、行方不明になった姪っ子の身を案じて翌日には捜索届を出そうとしていた両親からの確認と相談、それを受けて個人的に本人の行きそうな場所を見て回っていた最中の事故。


 気付くと――自分は異世界に居た。


 当初現地での言葉が分からず理解が出来なかったものの後々になって分かったのは不慮の事態、要するに召喚事故の様な状況で、やって来たと言うコトだ。


 本来は予定の無かった者の招致、そして失望。


 自分は例外且つ無能という勝手な烙印を押されそうになり、逃げ出した。


 その逃亡の末に裸一貫で再会したのが岩井媛ヒメ、捜索していた姪っ子だったのだ。




  ※




「例えば料理スキル、スキルとは言うが実際そんなモノがなくても料理くらい出来るだろう? 剣術にしたって振るうことくらいは可能だし知識があれば鑑定の識別も分かる。要するにやろうと思えば何だって挑戦が出来ると思うのだが、実際はどうなんだ?」


「ぇっと、スキルは個人の能力を補助したり助長するモノだから無くても出来るよ」


「なるほど。では魔法は如何どうなのだ?」


「……魔法は魔力を消費して使うから習得していても無ければ使えないね」


「フムフム、そこは普通なんだな。して、どうやって魔法は覚える?」


「様々かな……店で儀式本を買ったり特定の条件を満たして身に付けたり授かったり」


「――ラジバンダリ」


「ぇ……?」


「気にするな。スキルの方も、普通とは違う方法で覚える事はあるのか?」


「ぅん、あるよ。通常はギルドカードで習得するけど、それに見合う努力をしていればポイントを使わずに覚える事はある。勿論見合う努力をしないとイケないけどね」


「……なるほどな」


 本格的にファンタジー感が出てきたな。


 なにせ今日までは理解するコト、生きるコトでやっとだ。


 無論、それは現在イマもだが。


「よし。それじゃあ早速店に行ってみるか」


 食後の一服を兼ねた雑談の末に湧き上がるモチベーションがイイ感じに仕上がった。


 この流れで自身の装備を整える仕立てに行けば滞りなく進む気が。


「この食い逃げがッ!」


 突如として響き渡る激しい怒号と衝撃音。


 ギルドでの報告を終えて休息を兼ねた昼食の後に談話をしていた自分達を含める客が一斉に店の出入口を見る。


「まんまと逃げられると思ったかッ? そうは行かねぇゾ!」


 従業員もしくは店長であろうガタイのいい男の怒りは冷める気配など微塵も無く、ドンドンと激化して次第に軽い暴力行為で謝罪し続けている足元の相手を踏みつける。


「来い! 衛兵に突き出してやるッ!」


 必死に手足を動かし藻掻くさま、押さえ付けられる惨めな抵抗と容赦のない引導の言葉。


 見るからにボロ雑巾な装いに少々不憫さを感じたのか、それとも過去の自分と照らし合わせた故か、――気付くとガタイのいい男の手首を掴む事で制止の意思を伝えていた。


「あ? 誰だオマエ?」


「スミマセン急に、よく見たら其方そちらは自分の知り合いで。もしよければ代金を支払いますので、今回の事は不問にしていただけませんか……?」


「あん? てコトはオマエも食い逃げの仲間か?」


「仲間ではなく、ただの知り合いです」


「どういう知り合いだ? 犯罪者と顔見知りってのは此処じゃあ重罪だぞ」


 ェそうなの。と思わぬ情報に惑ってしまう。と。


「詳しい事はオマエも含めて衛兵のとこで聞いてやる、――オラ来い」


 マズい。掴んでいない逆の手が自分に向かって伸びてくるのを認識はしつつ下手に動く訳にもと絶望し掛けた次の瞬間――。


「この方はギルドから受けた依頼の対象で、――保護させてもらいます」


 声、が聞こえた時には既に掴んでいた筈の相手は空、気付くと直ぐ傍に居た人物の方へと移動している。


 ぉぉ、スッゲ。


「ダ、誰だオマエ……?」


 次いで返答――ではなく、代わりに提示される羊皮紙の身分証。


「ぁん? ――……オマエ勇者か」


 途端に騒めく店内の客達、と食い逃げ犯も動揺している様。


「なんでこんな所に勇者が……イヤ、オマエ守護者か?」


「自分で名乗った事は一度もありません。――もう連れて行ってもいいですね? 食事の代金はテーブルに置きましたので」


「……――好きにしろ」


 そして言われた通り、勝手に出ていく女勇者――の後を追う形で叔父、に促される食い逃げ犯の二人が店を出て行く。


 その後ろで――。


「いつまでも安全な場所に居ないで、オマエも命懸けで戦ってきたらどうだ?」


 ――励まし、ではない。不満が籠る口調。に。


 ……どういう意味だ?


 と最後尾の叔父が、その疑問に首を傾げる。


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