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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
18/42

第16話〔叔父の小さな悩み魚介編その⑥〕再開23日目[黄昏時]

 


  *



 前方から来る魔物は計三匹、内一匹は飛行系。


 ――斬撃の軌道に誘導し一刀で全て処理する。


 次いで返す刃で背後から迫っていた奴を斬り、納刀する合間に――魔力を固めて放つ魔力の弾で数体を牽制、一・二体がそれで倒れる。


 正直に言って、雑魚。


 ただ数がやや多い。


 独りでなら物ともしない内容、だが現状は――。


「勇者様!」


 物陰で身を隠している女の方に向かう魔物へ間合いを詰め、即座に斬り伏せる。


 ――このままだとらちが明かない。


 出所は分かっている。が現状では不本意な犠牲が出る可能性も高い。


 一旦離れて身を隠すか、それとも危険を冒して打破するか。


 ううん、違う。


 選択に余地は無い。


 取り敢えず彼女を安全な場所へ――。


「勇者様! ワタシ、この場を離れて隠れてますっ」


 ――駄目、違う。そっちは。


「きゃッ!」


 数手先、迎撃する予定だった魔物に自ら接近する結果となった女の切迫した叫び。


 現状対応中の相手を処理せず行く手間は無い。


 オジさん――。


 無意識に、事が進むであろう状況を視界へ収めた矢先に。


「きゃっ」


 予想とは違う結果が目に映る。


「ギャッッ」


「――ェ? ぁ、アナタは」


「その辺は後回しで。ほら、ちゃんと状況を見て」


 まるで離れている相手に言う様に、その言葉は身を屈める女とは違う方へと向いている。


 そして我に返る者の一撃が目の前に迫っていた魔物を斬るのを確認した後。


「こっちは見ておくから、頼んま」


 言うや否や女勇者の姿は一足でその場を離れる。


 その去り際は村人の目には映らず、中年の瞳では頼もしく――思えた。




  …




 ――数刻後。


 迷宮での護衛依頼及び目標物の回収を終えた後、村への帰り道にて並んで歩く。


「お二人のおかげで無事に目的を果たす事ができました。本当にありがとうございます」


「いえ、それが仕事なので」


「それでもこんな辺ぴな村の依頼を受けてくださる方は少ないので……勇者様の様に、定期的に訪れてくださるのは本当に極僅かです」


「モノの序で、です」


「そういえばお二人はこの後ハロアに行かれるのですよね? それも、お仕事ですか?」


「それも兼ねて物資の調達です」


「……そうですか」


 何処か意味深な表情となる依頼主。ただそれ以上に、気になる人物――。


「――どうかしたの?」


 隣でうんうんと唸る様な、悩ましそうな様子の叔父に声を掛ける。


「ん? ああ。いやあ、変なダンジョンだったなーと」


「……――何が?」


「だって川が流れていたのに水系の魔物が出てこなかった。普通は出てくるだろ?」


「ぁぁ、それは迷宮に出来た川じゃないからだよ。自然の川が迷宮に流れ込んだものだから魔物を生成しない」


「なるほど、そういうコトなのか」


 納得の様子、だがまだ引っ掛かりが残る感じで。


「……それだけ?」


「ん、イヤ。なんだか久しぶりに魚が食べたいなーと」


 出来れば焼きたてを大根おろしと醤油で。と内心想像しつつ叔父は言う。


「それなら」


「――なら是非ワタシのうちにっ、どうですか……?」


「ぬ。オジャマしてもよいのですか?」


「ハイ、今回のお礼もかねて家で夕食を食べてってください! 自慢ではないですが、ワタシ魚を使う料理は得意なんです」


「ほほう、こりゃあ楽しみですなぁ。是非にも」


「ハイっ」


 ――などと、勝手に進む話を傍目に止める気もない姪。


 ただその心中では、また頼み事が増えそうだと小さな守護者としての勘が、告げていた。








  叔父の小さな悩み魚介編/了


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