第14話〔叔父の小さな悩み魚介編その④〕再開23日目[時刻?]
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彼女の名前は岩井媛。
一年位前に現代からの異世界転移を経験し女勇者と成った。
弱冠十五歳にして魔王討伐などと言う大儀を押し付けられた少女は未だ始まりの国周辺から脱する事無く、比較的静穏な旅路を行き来する。
いつしか彼女は周辺の村々から小さな守護者と呼ばれて。
しかし、此度の話にその経緯は関係が無いので話の焦点は移る。
――イヤ、そういえば私はどの様にして、異世界に来たのか?
*
村に着いたのは昨日、日が暮れる前。
そして冒険者ギルドからの事前連絡によって準備されていた部屋で村長の話も聞き、案内役として村に住む女性が同行した迷宮での採取依頼は開始暫くして思わぬ事態となり。
今や――。
「……ゴブリンか」
物陰からこっそりと数えて、三匹。
同時に来られると厄介。
――身寄りないオジさんの省エネ冒険談となりつつある、今この時。
まあ、下手すると冒険記にもなり兼ねない。ので常慎重に、と。
ほいってな感じで石を投げ。
注意を引いた上で背後からの奇襲、――ではなく更なる投てきで遠隔攻撃を開始。
「ギャッ!」
お、一匹に命中した。
「ギャッ、ギャギャ!」
さすがに居場所が知れる。
しかし構わず準備した石を投げ続ける。
石投げは古くから存在する万能な戦法。
とはいえ、投てき技術も大してない五十肩のオジさんでは撃破するに至らず。
「ギャ! ギャーッ!」
――距離を詰められる。
これはマズい。と闘争では無く逃走の構え。
「ギャツ!」
と見せかけてのトラップ発動。
事前に撒いていた油によって二匹のゴブリンはすってんコロりん。
止めの一撃、自主規制。
次いで死んだ魔物はその場で霧状に消えて。
残った出遅れ君に――。
「アアッッ!」
「ギャァ?」
――秘技、屠竜之技。
&技スキル――≪即行闘気弾≫――。
「ギヤ!」
おっし、撃破完了。
早速クールタイムを待ちつつ隠れる場所を探す。
それにしても順調だ。
このまま進むことができればきっと合流は、近いだろう。
あとは再会時に何と言うかを考えておかねば。
さらっと挨拶するのも悪くないが、理想は登場の仕方か。
うーん、危機的状況に。――イヤその可能性は低いか。
正味ヒメの相手になるような奴は居なさそうだし。
逆に手間を取らせて捜されてる方が妥当。
寧ろ捜索は後回しにされていたって不思議じゃないし、出来るのならばそう伝える。
――フム。
ま、普通に謝って終わるのが無難かな。
それにしても、一向に水と関わる魔物が現れないのは何故だ……。
直ぐ傍では川の様に水が流れているというのに。
これもまた異世界の不思議というヤツか。
果たして常識とは何なのか、考えさせられる次第だ。
――さて、と。
この辺りが手頃な感じか。と岩の陰に隠れて腰を下ろす。
……やっぱりサハギンとかが、主力になるのか……?
武器は銛で、背ビレが大きい感じの。
それで何故か王様は太ってたりするんだよなぁ。
いやぁ本当、海で何食べたらそんなに太るんだろうなァ。




