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異世界転移で勇者になった私は叔父と奇跡的に再開した。  作者: プロト・シン
一章『私は叔父と奇跡的にサイカイした』
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第9話〔叔父とはじめての討伐依頼その④〕再開14日目[夜中]

 琥珀に色付く瞳、赤い皮膚。


 体格は――自身と比較して若干向こうが優っている。


 恐らくオーガと分類される魔物と仮定するが、第一接触からしてゴブリン以上に凶暴だ。


 そのつもりで相手が姿を現したかは定かではないものの、目が合った次の瞬間には怒涛のラッシュが始まった。


 右に左に考え無しか打ってくる攻撃に思わず防御へと徹する。


 しかし拳鍔(ナックル)越しでも骨に響く。


 その上一度の攻撃が長い。


 随時に息を吸う間は生まれるものの再始動が早いしで、とにかくシンドイ。


 若者の相手は真面だと疲れるとばかりに受け流したりもするが――さすがに。


 オジさんもう限界。


 ダメージは今のところスキルを要所で使用しているのと被弾がないので然程だが、とにかく集中力が足りていない。


 飽きるとも違うが、若い頃はもっと持続力というか目の前の事に熱中が出来た。


 しかし如何せん年をとると限られた時間でしか向き合ってはいられない。


 ああ、若者かどうかは存じ上げませんが、気が咎める自分を抑えつつ。


 相手の打撃に不愉快であろう拍子リズムの打ち込みを――胴体ではなく、拳その握拳モノの側面や下から当てて。


 攻撃を受け流すと同時に、その拳に蓄積する痛みでとうとう相手が後退る。


「グッ、ガ、――ッ」


 突き出す度に増す苦痛と腫れ、それは見るからに。


 ……痛いよなァ。


 しかし闘争の内、泣き言や文句等は――。


「ニンゲンメ……」


 ――話せるのか。


「……コロス」


 無論そうなる。


 続いて最初から腰布に所持していた棍棒が手に握られ。


「オマエコロス! ツギハオンナッ!」


 雄叫びとも取れる感情の色が瞳を一層濃く魅せてギラつく。


 通常であれば、少なからず臆するところだ。が。


「悪いが、保護者ってのはそんなコトじゃ引き下がれないんだよ」


 意味が伝わったのかはさておき、僅かな灯りに睨み合う瞳。


 ――てな訳で、叔父さんちょっと頑張っちゃおうかな。なんてね。




  …




 剣道三倍段という言葉がある。


 要は徒手で戦う場合、相手が太刀等を持っていると地力で優っていないと勝つのは難しいといった表現なのだが。


 まあ流石に三倍は言い過ぎ、でも道具を使うのは基本的な優位性を持つ上で確かな事だ。


 取り分け力の伝わり方は段違いと、断言したって嘘偽りはない。


 拳鍔でも直接受けるのは絶対に避けて流す。


 スキルは再使用時間(クールタイム)に気を付けて回避行動主体での運用。


 本来であれば攻撃用で有る技すらも特性を活かし防御や転身に利用する。


「――ッ! ガァアッ!」


 激情、言葉にせずとも伝わってくる。


 さぞ苛立つ筈だ。


 一方的に打ち込むその手には確かな応えは返って来ない。


 優勢を保てば保つほどに焦れる展開が続く。


 果たしてその状態をいつまで維持できるだろうか。


 否、均衡が破れる。


「……ガ?」


 文字通りに膝から崩れ落ちた。


 棍が掠めて裂けた衣服の内側は差し支えない、ダメージは無きと断じて言える。が。


 ……体力が。


「アキラメタカ、ニンゲン」


 ――気持ちではなく、基礎体力スタミナの方です。


 ただここまで持ち堪えた事には一定の評価はあったぽく。


「――シネ」


 早々に止めを刺しに来る。


 なので本当に申し訳ない。


 詫びる理由は二つ――。


 一つは最後の最後で僅かに足りなかった事。


「ッ、……ガ?」


 咄嗟に気付き振り返ったものの、次の瞬間には赤鬼の身体に刹那の光りが糸状の軌跡を刻み付ける。


 そして、既に事切れた遺体がバラバラと崩れ落ちるのを見詰めながら、二つ目。


 ――若者に勝ちを譲れぬ老害を許しておくれ。


「オジさん、大丈夫……?」


 恥ずかしながら膝を折る姿に差し出される一見華奢な手の平。


「スマヌ、助かったでござる」


「……大丈夫そうだね」


 しかと掴んで立ち上がる、その手の先に――。


「これは筋肉痛になるな」


「なら、明日はお休みだね」


「いや来るのは明後日なんで」


「ぇ、何で……?」


 ――其処には、おじさんなりの理由があるのです。








  叔父とはじめての討伐依頼/了


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