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翡翠の魂装者  作者: TAKA
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第三話『風船と天狗ー③』

 マギアが作ったバルーンアートの犬は本物の犬に姿を変えた。

「もう分かっちゃったかな?俺の能力。」

「まぁ目の前で作ってるとこ見せられたら流石にな。バルーンアートで作ったものを本物に変えるってところか。」

「正解正解大正解。それが俺の風船魔術(バルーンマジック)中々便利なのよこれ。」

そう言いながらマギアは犬を作り続ける。蒼哉はそうはさせまいと距離を詰めようとする。しかし狗天がそれを邪魔するように葉団扇で突風を巻き起こす。蒼哉は突風に吹き飛ばされ校舎の壁に激突する。その間にマギアは十匹の犬を作り上げる。

「さぁ行っておいであの男の首を食いちぎってこい!」

犬達は一斉に蒼哉に襲い掛かる。蒼哉は瞬時に魂気を解き犬を殴り飛ばす。そして即座にポケットに入れておいた小石に魂気を込めて犬達を破裂させる。蒼哉が再び距離を詰めようかと考えているとマギアは2つのバルーンアートを作成していた。 

風船魔術(バルーンマジック)(グリズリー)獅子(レオン)!」

熊とライオンのバルーンアートはみるみるうち本物となった。2匹は蒼哉に襲い掛かるために突進してくる。先程と同じ様に石をぶつけて破裂させようとするが石が当たっても2匹は破裂せずそのまま突進してくる。

「何で破裂しないんだよ!」

蒼哉は突進してくる2頭を避け距離を取る。何故2匹が破裂しなかっのか、それには石に込められた魂気の量にあった。風船魔術で作った作品が破裂する条件はいくつかあるがその1つの他者の魂気が触れた瞬間に破裂する場合作品の大きさによって破裂に必要な魂気の量が変わる。作品が大きくなればなるほど必要な量は大きくなる。

「魂気で破裂するわけじゃないのか?じゃあ思いっ切り!」

蒼哉は熊に向かって魂気を纏ってパンチを放った。熊に拳が接触したその瞬間、熊が破裂し衝撃波が蒼哉を襲う。衝撃波を受けた蒼哉は吹っ飛ばされ壁に激突した。

(破裂した!?やっぱり魂気が原因か?じゃあ石で破裂しなかったのは?石のサイズの問題か、いや魂気が原因なら魂気の量か…。)

蒼哉が混乱しているうちにマギアは新しいバルーンアートを作り始める。それに気付いた蒼哉は完成を防ごうとする。

「そうはさせへんよ、″天狗礫″。」

狗天は羽団扇を軽く仰ぐ、すると葉団扇から大量の風の玉が放たれる。風の玉は勢い良く蒼哉に向かっていった。蒼哉は飛んできた風の玉を拳で撃ち落とす。

(威力は低め、だが数が多すぎる!あいつ(マギア)の完成をどうにか邪魔しないといけないのに近づけねぇ!)

蒼哉は強引に距離を詰めようと全身に魂気を纏って狗天の元に突っ込んでいく。狗天は天狗礫を放つがそれををものともせずに距離を詰める。

「脳筋やね、そんな男はモテへんよー。」

「男にモテる気はねーよ!」

「まだまだ元気そうやねー″天狗の爪″!」

そう言うと羽団扇の周りに風が集まり刃のようになる。

「接近戦は苦手や思た?プロをなめんといてよ。」

「別に舐めてねーよ。ただお前、得意ではないだろ?」

振り下ろされる葉団扇を片腕で受け止めがら空きの腹に向かって渾身の蹴りを入れる。狗天は防御が間に合わずに吹っ飛ばされた。蒼哉がそのまま追撃の姿勢に入ろうとしたその瞬間、耳をつんざくような咆哮が響き渡り動きが止まる。

「おいおいおい、こんなのありかよ...。」

蒼哉が見上げるとそこにいたのは真紅の鱗、巨大な翼、刃のごとき牙、正にファンタジーにでできそうなドラゴンそのものだった。

 「風船魔術(バルーンマジック)(ドラゴン)、俺の大作楽しんでくれや!」

ドラゴンは蒼哉に向かって爪を振り下ろす。蒼哉が爪を避けるとドラゴンは続けて尻尾で薙ぎ払おうとする。蒼哉は回避が間に合わないと判断し全身を魂気で覆う。防御を選択した蒼哉の判断は間違いではなかった、しかしその一撃は想定を大きく上回っていた。尻尾が衝突した瞬間蒼哉は中学校近くの森まで木々をなぎ倒しながら吹っ飛ばされた。

「あんなのどう倒せばいいんだよ、殴ったところで意味なさそうだしよ。」

蒼哉が文句を言っているとドラゴンは翼を広げ飛翔し蒼哉の元に突っ込んでくる。

「取り敢えず避けてから考えるしかねぇ!」

突っ込んでくるドラゴンを避けるとドラゴンの顔面に向かって蹴りを放つ、しかし全く効果がない。その後もギリギリでドラゴンの猛攻を回避しながら攻撃をするがドラゴンにダメージは見られなかった。

(いったいどうすればいい!魂気で破裂させる?このサイズが破裂したらここら一体大惨事だ。破裂させずに気絶させる?リモートで破裂させられたら余計に酷い事になっちまう。なら他に何かあるか、考えろ、最善の一手を!)

 蒼哉はどうすれば周囲に被害を出さずにドラゴンを倒せるか考えている中先程作られたライオンが横から襲い掛かる。ライオンの攻撃を回避しているとドラゴンが邪魔だと言わんばかりにライオンを尻尾で薙ぎ払う。その後すぐにライオンはドラゴンに踏みつぶされて肉塊になった。それを見た蒼哉何かに気付いたのかニヤリと笑った。

 「さぁて…イチかバチかやってみますか!」

蒼哉はそう言うと左手を手刀の形にして魂気を集中させ始める。その間にもドラゴンは蒼哉に向かって攻撃を続ける。攻撃を回避しながら蒼哉は集中させた魂気を変化させる。

 (より鋭く刃を研ぐイメージ、ドラゴン(あいつ)の首を一撃で切り落とせるように。)

蒼哉は風船魔術の破裂する条件を理解していた。一つ目は熊の時のように一定量の魂気で触れること。二つ目は生物の場合は生きていること、これは先程ライオンが潰されたことにより把握した。そしてそこから蒼哉が判断したのは

 (時間をかけすぎるとリモートで破裂されかねない、だから一撃で殺す!けど首まで俺の攻撃が届かない…。どうすれば。)

 蒼哉が状況を打破できずに足踏みしている中ドラゴンの頭に向かって石が投げられた。飛んできた方向に視線を向けるとそこにいたのは先程逃がしたはずの茜だった。茜は蒼哉に向かってウインクをするとドラゴンに向かって石を投げ続ける。茜の姿を見て蒼哉は瞬時に理解した、彼女は一瞬の隙さえあれば自分がドラゴンを倒してくれることにそのためにドラゴンの気を引いていることを。

 (お兄信じてるから、必ずお兄ならやってくれるって!) 

 「………ホントに大馬鹿だよお前は!」

 茜を怒りながらもその表情は笑っていた。そしてその瞬間は瞬く間に訪れた。ドラゴンは茜に向かって牙を突き立てんと地上に頭部を近づける。茜を噛砕かんとしたその時蒼哉は一瞬でドラゴンの首まで接近し左手を振り下ろす。その姿はまるで己の全てをその一撃にのせる示現流の剣士の如く鋭く、力強かった。その一撃はドラゴンの首を真っ二つに切り落とした。ドラゴンは破裂することなく胴体はそのまま倒れこんだ。

 「やったねお兄!信じてたよ!」

 「お前無茶しすぎだ、死ぬかもしれなかったんだぞ!でも…ありがとな来てくれて。」

そう言うと2人は目を合わせて笑った。

 



 






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