第一話『Fラン大学生と少女-④』
男を吹っ飛ばすや否や蒼哉は追撃の為に距離を詰める。倒れた男の顔面を蹴り上げ持ち上がった体に回し蹴りを放つ。なすすべなく男は蹴りを食らい再び吹っ飛ぶ。そのまま攻撃を続けるかに思えたが蒼哉は攻撃を中断する。
(今の蹴り、いいのが入ったと思ったが感触がおかしかった。ここでそのまま責めるのは悪手だな。)
蒼哉が男の違和感を考察していると男は立ち上がり先ほどのノーガードとは打って変わってボクシングのピーカブースタイルの構えをとる。
「あんたボクシングやってたんだ」
「昔の話だ、小僧力が使えるようになったみたいだがなぜ″魂装″をしない?」
「魂装?何かまだあるのかいこの力には。」
(こいつ力が使えるのに″魂″がいない?それともまだ目覚めていないのか何にせよこいつは魂装なしの一撃であの威力を出した。目覚める前に潰すしかない!)
「おい、なにぼーっとしてんだよ。まだ俺の事舐めてんのか。」
男が考えているうちに蒼哉はガードの上から攻撃を放つ。正拳突き、掌底、回し蹴り、横蹴り。様々な攻撃をするが男のガードは崩せない。
(鱗の硬さだけじゃねな、俺みたいに力で強化してるみたいだな。だったら!)
蒼哉はもう一度正拳突きを打つ。先程よりも強い衝撃が男を襲う。連打を打ち続けていると徐々に鱗にヒビが入り始める。
「俺の鎧にヒビだと、何故だ!」
「おいおいガード解いちゃっていいのかよ。ご自慢の鎧が泣いてるぜ?」
男は拳を振り回し蒼哉を引き剥がそうとするが瞬時に回避して鱗のない腹部に攻撃を加える。男は苦悶の表情を浮かべながらも反撃する。
(小僧の攻撃が俺の防御よりも上だと!ありえん。俺の鎧+″魂気″で固めていたはずなのに何故だ。)
魂気とは人のもつ生命エネルギーのようなものである。今までの戦いでは蒼哉は手や足に魂気を流して威力、硬度を上げ攻撃をしていた。男はそれを全身に流すことで鎧の防御力を高めていた。ならば何故男の防御より蒼哉の攻撃を上回ったのかその答えとは
(こいつまさか全身を強化してるんじゃない、拳、足の部位ごとに全ての魂気を集中させてるのか!?)
なぜここまで男が動揺しているのか、その理由は効率にある。腕に集中させている状態から足に集中させる、そうするには腕にある魂気を腕→心臓→足と移動させなけばならないだから攻撃と魂気にラグが生じる。それよりも全身にまんべんなく流して強化する、そのほうが圧倒的に効率がいいのである。ならば何故蒼哉はわざわざ効率の悪い方法を選択しているのかそれは至極単純。
「お前が考えてることに答えてやるよ、それはなこの方法のほうがシンプルに威力が強い!」
蒼哉はそう叫ぶと振り回される腕の隙間を縫うように近付き顔面に向かって回し蹴りを放つ。蹴りは男の顔面を綺麗に捉え男を吹っ飛ばす。
(小僧が俺の防御を超えてきた方法は分かった。ならばこちらも同じ方法で対抗するまで!)
(とか相手は思ってるんだろうがそれは有効とされるのはあくまでも同じスピードの奴がやることで攻撃と防御の差を埋めてんだよ、鈍重なパワーファイターのお前と機動力重視の俺じゃあ土俵が最初から違うんだよ。)
男は蒼哉と同じように攻撃の来る部位に魂気を集中させようとするが、集中させた部位に攻撃は来ない。他の部位に攻撃が入る。蒼哉の狙いはここにあった。男の防御を上回る攻撃をすることで相手が自分と同じように一点に集中させ防御する、そうして薄くなった部位に蒼哉は攻撃をする。一撃で粉砕するスタイルの男とスピードで翻弄して戦うスタイルの蒼哉、男は現状防御をして反撃の気を狙うしかない。そうなった時点で蒼哉の手のひらの上であった。
(何故だ何故だ何故だ何故だ!何故俺は先程まで魂気を使えなかった小僧に押されている。俺は強者のはずだろう。弱者を蹂躙し支配する、そのはずなのに何故。)
男の気が動転している隙を蒼哉は見逃さなかった。自分が知っているだろう格闘技の技をすべて叩き込む。まるで嵐のように放たれる連打はいつしか男に防御させる気すらなくさせた。そして男が最後の力を振り絞り反撃をする。
「てめえは弱くなっち待ってたんだよ、身も心もな。」
蒼哉はそうつぶやくと反撃してきた拳を避け渾身の強化した後ろ蹴りを放つ。蹴りは男のみぞおちに入り男は吐血しながら吹っ飛ぶ。吹っ飛んだ男はそのまま駅の金時計に激突し止まった。
「これで少しはあの子たちの気が晴れるとい い な。」
蒼哉はそう言うとその場で倒れてしまうのであった。