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6話 調整した結果

「どうかな?」


 青髪の少女へと尋ねる。ここは彼女の住む街、イユレン。数万人規模の街だがウテルス周辺では小集落と分類されている。


「世界が・・・違います」


 驚く顔を見るのは調整士冥利に尽きる。


 パースの能力は大きく三つ。感覚共有、感覚補助、そして神経制御。


 感覚共有なんて大層な名前が付いているが、基本的には音声や視界が共有されるもので、スピーカーやカメラの類いでの共有でしかない。


 パースにはローカルネットワーク展開の機能が付いており、数キロメートル離れても通信が可能だ。それを使って音声、映像が共有される。


「ユウナさんとレオさんの筋肉が、良く見えるんです。モヤッとしてたものがクリアに見えてます」


 蓮夏は視覚と嗅覚が拡張される能力を持っている。パースの入出力履歴を確認すれば本人の能力傾向が分かる。


 おそらく、元からかなり特異な観察力を持っていたはずだ。それを視界からノイズを取り除くような形で調整した。パースから直接網膜へ投影する画像でノイズキャンセリングする仕組みだ。


「あ、あの!レオさん、よろしければ、模擬刀で手合わせいただけませんか?失礼なのは承知の上のです。でも、すごく、自分の力を試したいです」


 そう、そしてもう一つ。


「ほほう、よかろうよかろう。私も気持ちは分かる。ユウナの調整はドラッグみたいなものだからな。気をつけろ?自身の本当の力であって、本当の力ではないからな」


 彼女らは模擬刀を持って対峙する。


「いいよ、かかってきな。私はパースはつけないでおくよ」


 ギリと唇を噛む蓮夏。


「後悔しないでくださいねっ!」


 地面を強く蹴る青髪の少女。身のこなしは荒削り、でもセンスは良いのかもしれない。と、いうよりも、筋力強化しているように見えるが扱いきれていない。


 即座にレオの懐へと潜り込むと、踏み込んだ右足に合わせて模擬刀を水平に切り出した。


「っ!」


 鈍い音が響く。レオの持つ模擬刀が、青髪の少女の斬撃を体スレスレで受け止めている。


「うん、完璧に急所を狙えてる。でも反撃は耐えられるかな?」


 ニヤリと笑うレオ。


 体をヒネるレオは刀を受けたまま回し蹴りを繰り出す。重い一撃が蓮夏の横腹をえぐる。


「がはっ」


 顔を歪める少女。吹き飛ばされると倒れる手前で踏ん張った。


「ほう、見えてるね」


 蓮夏は回し蹴りをギリギリで急所から外して、自ら飛んだ。見えている。レオの蹴りは攻撃力こそ抑えていたが、スピードはかなり早かった。


 すぐに地面を蹴る少女。今度は振りかぶり頭上から振り下ろす。受けようとレオが刀を構えた瞬間、少女は視界から消える。模擬刀だけがレオに襲いかかる。


 模擬刀を受け止めた瞬間、レオもまた唇を噛んでいた。小柄な少女は同じ様に回し蹴りをレオの右足へと見舞っていた。


 模擬刀を受けたレオの刀は即座に少女へと振り下ろされる。当たる、ギリギリのところで首を傾げて直撃を免れていた。


 その格好のまま二人の動きが止まる。


「んー、やるねえ。君、自分の筋力強化、気づいてないでしょ」


 蓮夏はその場で仰向きに倒れ込んだ。青髪がサラリと地面に広がる。


「ふぅー、つ、疲れました。あれだけしか動いていないのに」


「と、ところで。筋力強化って・・・私がですか?」


 神経制御。本来使わないパースの機能だ。というより、使うことができない機能だ。耳の穴に挿し込む有機端子は皮膚から内部神経へと繋いでいる。装備者の心拍などのヘルスモニターでしかない。


 が、その神経経路を使って様々な事に利用できるのだ。


 蓮夏のパースには視神経へ直接映像情報を流し込むように制御を入れてある。それにより、さらに早い認識へと繋げている。


「そうだよ、君は筋力強化の異能(イディオ)も持ち合わせているんだよ。気づいて無かっただけだ」


 調整で施した【直接神経接続】は調整できる人間がいなかった。神経接続と一言で言っても、脳回路は十人十色で、誰一人として同じ形式(フォーマット)じゃない。


 人によって脳内のオペレーティングシステムが違う、というのが一番近いだろうか。1+1を計算するにもその脳内神経の相互作用は全くもって別物だ。


 それが故に、パースの使用履歴やその人の性格、立ち振る舞いを参考に想定、設計するしかない。


「そんな、全然気づきませんでした・・・どうすれば使いこなせるんでしょうか?全く知識がなくて」


 神経接続は使い方によっては危険だ。目的はどうあれ無理やり電気信号を体内に流すことになる。自分の体で色々試したが、今回であれば高揚感で済む。と言っても、それがドラッグとレオが呼ぶ理由だが。


「そうだねえ、リデルに来たらどうだい?私らとしばらく行動するなら、まあ教えてやらんでもないぞ」


「本当ですか?ご迷惑にならないならとても嬉しいのですが・・・」


「あぁ、俺も構わないよ」


 笑って応える。


「別に減るものでもないしな、またチキンステーキ食べさせてくれると嬉しいな」


 相当美味しかったらしい。確かに美味かった。また食べたいのは俺も同じだ。


「ありがとうございます!少しだけ時間ください!家族と、話してみます!」


 青髪の少女は頭を勢いよく下げた。



挿絵(By みてみん)

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