24話 200地点のお仕事どころじゃない その1
蓮夏は強い、そしてもっと強くなる。私は何てすばらしい師匠なんだろう。蕾だった少女がこんなにも才能を持っているなんて、誰が気づけただろうか?否。私以外には無い。
私達は200地点へと辿り着いた。道中、強くても400程度のモンスターしか出会わなかった。そして彼女はそれらに対応出来ていた。すでに500程のライセンスなら取れるだろう。
「200地点、やっと到着しましたね」
「ああ、やっぱ何か起きてるな。400級が何体も出るなんて・・・」
蓮夏はそびえ立つ壁を見上げている。
「大きいよな。俺も最初に見た時は驚いたよ」
街と呼べるほどに大きな拠点。ここが最深部の安全地であり、さらに奥へと潜るレイダーの安息の地だ。
「こんな大きな壁をよく建設できましたね」
「私も初めて見た時は人間ってすごいんだなって唸ったよ」
壁は20メートルは超えるだろうか。森を切り開き1キロほどの四方を囲むようにそびえ立つ。天井も覆って侵入出来ないようにして、それに加えて警備隊が24時間守っている。
今日はいつもよりも警備が厚い。やはりメナルクを警戒しているのだろう。ここまでで400級のモンスターが何度も現れる事が既に異変を表していた。
「人、多いですね。メナルク、ですか?やっぱり」
蓮夏はいつも通りを装って質問する。でも、彼女が恐怖に怯えているの分かった。彼女もまた、メナルクの被害者なのだろう。
「どうだろうな。たまにこういうこともあるが・・・まず前兆だろうさ。まずは拠点長に会いに行こう」
拠点は基本的に協会によって管理されている。個人の自由に管理されては安全衛生が脅かされるから。その為、拠点に設置された協会拠点管理局を中心に運営しているのだが、その局長を拠点長と呼んでいる。
「拠点長ですか・・・私あんまり得意じゃないです」
苦笑いを浮かべる蓮夏の気持ちもわかる。少々うざったいやつだ。確かに強い、現時点の最重要拠点を任されているだけある。
「ん?あぁ、迷惑かけられたことあるんだな」
笑うユウナ。君には笑い事かもしれんが、少女には少し面倒なのだぞ。これだからユウナは、まったく。
「大丈夫だ。私がいる、安心しな」
「あの、ありがとうございます」
蓮夏なら余計に絡まれるだろうしな。私には及ばないが。
「あいつはあー見えて、女心に関してはポンコツだ。そういう期待はしないことだ」
小声で伝える。ん?とトボけた顔のユウナのことは無視だ。コクンと頷く小柄の少女。
分厚い壁に取り付けられた拠点の入口、ここも警備隊が守っている。
「全員ライセンスを見せろ」
警備隊の人が私等に尋ねる。それぞれがライセンスチップを提示すると、小さな機械で身分確認が行われた。チップは体に埋め込まれていて、人それぞれだが殆どの人が手首の内側あたりに入れている。個人ごとに異なる固有の神経信号パルスを使って本人保証している。つまり、他人のそれを無理やり自身に埋め込んでも固有パルスが一致しないため、認証エラーとなる。現行、最高位の偽造防止策という。
「オーケー、入っていいぞ」
厳格な警備隊。も~少し愛想よくしろよといつも思う。まぁ、仕事だ、仕方ない。
「失礼な人たちですね。ライセンスなんて見なくてもレオさんとユウナさんなら顔パスでも良いくらいなのに」
「いや、私たちは本当に目立ってないのさ。目立ちたく無いのだよ」
「どれだけ隠蔽してるんですかまったく。これだけ強いのに噂にならないのが不思議ですよ」
「俺は強くないって」
「まだ言いますか?圧倒的ですよ、100地点だって今よりも鮮明に周りが見えましたからね。なんなら視力上がったかと思いましたよ」
笑って蓮夏の声を受け流す。
「でもほら、拠点長とかは知ってるんですよね、お二人のこと」
「いや、俺なんかは普通くらいの強さだって思われてるよ。実際戦闘面ではそうだし」
いや、戦闘面こそ君は恐ろしいほど強いんだ。私は知っている。
「んー、そうですかねえ」
納得いかない蓮夏を見て微笑むユウナ。
拠点の中を歩いて行くと大きな建物まで辿り着いた。拠点管理局、私達はドアを開いた。
「きたよー、クヴェル」
☆
「覚えてるさ、君の様な美少女を忘れる訳がない。蓮夏君」
甘いマスクをした色男、クヴェル。この拠点長を担う人間だ。早速蓮夏は嫌がって私の後ろにいる。
「は・・・はい」
蓮夏は2度しか彼に会っていないらしい。最初はライセンス250を取得する時、次は400の時。少し会話しただけだったそうだが、このクソ色男からすれば覚えてない方が難しいくらいだろう。
「そんなに怖がることは無い。なに、とって食ったりなんかしないよ。レオと、ユウナの連れだったのは計算外だったが」
下心しか溢れていない。
「でもまあ、今度ご飯でも行こう。君は確か解体師だったろ?400のライセンスを持つ解体師は貴重だからね。それに・・・ここまで来たってことは、状況は知っているんだろう?その上でここまで来たのなら、彼らが君を認めていることになる。であれば、長として声をかけない訳にはいかないさ」
低く響く声はお腹の子宮に響く。いやらしい男だ。
「そ、そんな。私はユウナさんとレオさんが居たから来れただけで。決してお役に立てるほどのものじゃないと・・・」
「あぁ、そういう意味ならクヴェルの通りさ。蓮夏は強い。お前こそ状況把握出来るほど情報集まっているのか?ここに来るまで5体も400級に遭遇したよ。壁より前の地点では500程のモンスターも出て3人も死人が出た」
クヴェルは眉をひそめる。
「ちょっと、レオさんっ」
「あぁ、400級が出たことも死者が出たことも聞いた。拠点に向かってきたモンスターに対して高レベル帯の奴らを殺し漏らしたとは聞いてない。おそらく、拠点を経由しない経路から外に出ていったか、壁から産まれているのか・・・」
「未だに漏れるルートは分からないんだな。調査するにも範囲が広すぎる、か」
ユウナの疑問は昔から言われていることだ。メナルクが起きる時、どこからモンスターが漏れたのかが分からない。どこから出てきたのかが掴めていない。




