19話 蓮夏の過去 その8
私達は鉱山の下りケーブルカーに乗っていた。
「しっかし、本当に鉱体を見つけるなんて・・・素直に感心するよ」
そう、レイドランとの勝負に私は勝っていたのだ。あの場所を8メートルほど掘り進むとドンピシャでレアアースの鉱体にぶつかったそうだ。大きさこそそれほどではあったみたいだけど、私の目が実際の現場でも役に立つというのが分かって自信になった。
「まあ、たまたまというか・・・自分でもすこしびっくりだし」
レイドランからはぜひ大きくなったらココの仕事を受けてくれないかとお誘いをいただいた。考えておきます、なんていう社交辞令で返事してしまったが、こういう場所での仕事も楽しいのかもしれない。
そうするとアーゼスの近くで仕事できるかもしれないし。
アーゼスはレイダーだがウテルスへ常に潜っているわけではない。メインは鉱山での採掘の用心棒で、深く潜る時にでてくるモンスターの排除を行う。
依頼を受けてウテルスに潜ることもあるそうだが、彼の所属するルーフィンの調査団がそもそもウテルスの依頼を受けていない。
「俺も負けてられないな。今度ライセンス更新しようと思っててさ、目指せ500だ」
「すごいよ、よっぽどアーゼスの方がすごいってば。でも、気をつけてね、本当に。500って、上級だよね」
彼は今すでに440のライセンスを持っている。この年齢で全レイダーの平均である350を超えているのだから、すでに高レベル帯だ。師匠と呼ぶ灯さんは700を持っていたと言って、それを目標にしている彼からすればまだまだなのだろう。
ケーブルカーを降りると周囲が少しざわついていた。
「どうかしましたか?」
アーゼスが乗り場で集っている人に声をかける。
「あぁ、どうやらモンスターが出たらしい。数体がここらで見つかって駆除されているみたいだが・・・ただの野良ならいいんだけどな。君らもきをつけろよ」
私達は目を合わせる。緊張が走った。
「ありがとうございます、あなた達も気をつけて」
「蓮夏、急ごう。まずはルーフィンへ、それからすぐにイユレンへ送るよ」
そういうと、直ぐに走り出す。ルーフィンはイユレンへの道の途中に位置する。私も柘榴の事が気になるから、すぐにでもルーフィンへと向かいたかった。
悪い予感がする。世界が少しいつもよりも、淀んで見える。黒い瘴気が薄っすらと混じっているような。
☆
私は眼の前に倒れているモンスターの解体をせずに走り出した。アーゼスが倒したそれは大きな狼のようなものだった。
「まずいな。メナルクか」
アーゼスが漏らす。
「大きくなければいいんだけど。急ごう、蓮夏」
怖くて声が出なかった。コクンと頷きアーゼスを追う。その後数匹のモンスターに出会ったがアーゼスの敵では無かった。私は彼に守られて無事だった。
ルーフィンへと到着すると、街の入口に街中のレイダーがモンスターを駆除していた。先の狼よりも大柄なクマのようなのもいる。
「蓮夏は街のシェルターへ!」
アーゼスは言葉を残して戦闘へ加勢する。私は走った。シェルターの場所は聞いている。
横目に見えるアーゼスは、難なくモンスターを切り捨てていく。でも、気をつけて。私は、あなたを埋葬なんて、したくない。
「蓮夏っ!」
街の中を走っていると、大きな声が響く。柘榴だ。こんな状況にも関わらず外で私を待っていたらしい。後から聞けばアーゼスから帰る旨の連絡を受けていたらしい。
幸い街にはモンスターが入り込んでいない。でも、戦闘能力のない彼女が外にいるのは危険過ぎる。
「柘榴!」
私は叫んだ。彼女の顔を見て安心した。
「蓮夏、無事?早く、こっち!」
走る足を早める。もう少し、柘榴の所までもう少しのところだった。アレは唐突に落ちてきた。雷が落ちたような轟音と、閃光に包まれる。地面が激しく揺れて、私は飛ばされた。




