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18話 蓮夏の過去 その7

 レイドランと私は空洞内の壁の前に居た。ここはエレベーターの入口から見えていた足場の上だ。下を覗くと数百メートルも向こうに地面が見える。幸い私は高所でも大丈夫だから良かった。


「うえー、たけー」


 アーゼスが漏らす。命綱は付けているが、この高さに平然としていられるここの人たちはすごい。レイダーとしてのライセンスを持っている人が殆どだから、多少身のこなしはできるが、この高さを落ちて無事なことは無い。


「なっはっは。恐いのもすぐに慣れるわい。お、蓮夏ちゃんは平気か?」


「もちろん恐いですけど・・・命綱あるんでそれほどは」


「おお、肝っ玉が座っとるな。仕事なくなったら俺が雇ったる。待っとるぞ」


 暖かい人だ。ここの人たちは皆豪快というか、気っ風がいい。


「さあ、ちょっと見てみてくれ。ここらへんの壁はどうや?もう数年前に掘り終わりにした場所なんやがの」


 あたり一面に広がる壁は凸凹に採掘されている。少し集中する。特に表面には貴重な金属の反応は無さそうだった。


「特に、ここらへんは貴重なものは無さそう・・・ですが、ちょっと待ってください」


「ほう」


 この壁自体は変哲もないが、ある点を中心に薄っすらと歪みがあるのが見えた。


「この辺りの鉱石って、レアアースの含有鉱石でしたよね?」


「そうだ、よく知っとるな」


「この奥10メートルくらい、ですかね。鉱体があるかもです」


「ほう、どうしてそう思う?」


「ここ、ここを中心に岩石の歪みが広がってます」


 目を凝らすレイドランさん。


「んー、薄っすらと見えるような気もするが・・・俺等が削った影響にも見える」


「そうですね、私もそう思ったんですが、岩石の歪みが綺麗に楕円になっています」


「俺にはまだ疑問でしかないが、嬢ちゃんが自信あるならやってみようか。よし、おめーら、ここを15掘るぞ!」


「ってことで、オジサンと勝負や」


 ニカと笑うレイドラン。自信はある、が、もちろん経験の差で私の考慮が漏れていることもある。私の一言で大人数を動かすなんて、本当に良いものなのかと気にはなるが、ここは胸を張ってうけよう。


「はい、わかりました!勝負ですっ」


 笑顔で返す。レイドラン達は手際よく作業を始める。アーゼスと私は一度下に降りた。2時間程で掘れるらしく坑道探検をすることにした。


「なあ、なんで壁に歪みがあるとそこに鉱石があるってわかるんだ?」


 薄暗いライトが照らされた道を歩いていた。


「レアアースを含む鉱石はただの不純岩石よりも硬度が高い傾向にあるんだ。おそらく火山活動で岩石が押し上げられた時に、鉱石は潰れずに周りの相対的に柔らかい岩石が潰れるの。鉱石の形に従って岩石の潰れ方に歪みができるってこと」


 アーゼスは頭にハテナを浮かべている。その表情が可愛い。


「な、なるほど。わからん」


 諦めて笑うアーゼス。


「そもそも歪みなんて見えなかったし、やっぱすごいよ蓮夏」


「レイドランさん達が採掘した結果次第だよ」


 小さな川のような水流がある。先には水たまりが見えた。


「これ、こんなところに水があるんだね」


「湧き水で岩石を侵食して出来た空洞がこの先にあるんだよ。そこも綺麗な場所だから見せてあげたくてね」


 水たまりは深くてそこが分からない。数メートルはあるのだろうか。10平方メートルくらいの広さの水たまりは綺麗に光りを反射する。


 静かな場所だった。微かに遠くの採掘の音が響く。風はないけど涼しい。


 アーゼスは歩く。私もそれについていった。先の水たまりの場所からさらに下っていく。


「ここら辺は、水が引いた後なの?」


「あぁ、そうらしいよ。10数年前にさっきの水たまりの空間を見つけたらしいんだけど、その時は水で埋まってたらしい。潜って調べたりしたけど、途中で諦めて放置してたらこうやって水が引いたそうだよ」


 人が一人歩ける程の幅の通路を下る。


「長い時間をかけてこうやって出来上がるのって、壮大だよな。あ、ほら見えてきた」


 通路の出口が見える。光が漏れている。


「ここも観光ポイントだ」


 出口を跨ぐと、世界が一気に広がった。またしても言葉を失う。


 エレベーターを降りたあの場所程は大きくないが、ここも圧倒するに十分広い。球体の空洞に、半分が水で浸っている。鍾乳洞になっていて、水面から大きな円錐の岩がたくさん飛び出していて、天井からもまた円錐がたくさん伸びていた。


「・・・」


「すごいだろ?俺もこの前見たばっかりだけど・・・何回見てもすごいな、ここは」


 水面に幾つもの鍾乳石が反射して映っている。大きなライトが通路付近に設置されており、この空間を照らしている。風が無いため水面がピタッと止まっている。時折天井から伸びた鍾乳石の先から水滴が落ちると水面に波紋が広がっていく。


 神秘的だった。地中深くにこんな場所があるなんて想像したことも無い。


「もっと鉱山の奥深くまで下りていくと、同じように水によって浸食された場所があって、そこでは鉱石が溶けずに残っているらしい。そこに行くまでは残念ながらモンスターが巣くっているんだけどね・・・光を照らせば金属鉱石がキラキラと輝くんだってよ。いつか行ってみたいよな」


「すごいね、ここでも十分に素敵な場所なのに。鉱石が輝く空間か・・・うん。私も行ってみたい」


「もうちょっと頼れるレイダーになったら、きっと蓮夏を連れてってあげるよ」


 彼の横顔は綺麗だ。今もまた、うっすらとライトに照らされた彼の横顔は、綺麗だった。


 ふと、自分のリュックのポケットに入っているものを思い出した。そうだ、彼にせっかくかったプレゼントを渡せずにいたことを、すっかり頭の隅にやってしまっていた。


「あ、あのさアーゼス」


「ん?どうした?」


「あの、これ」


 そのポケットから取り出したプレゼントは少しお洒落なリボンが付いた長細い箱をしている。


「本当はあってすぐに渡そうと思ってたんだけど、タイミング無かったから今になっちゃった」


 笑って見せる。アーゼスは私の手に持つものを見て


「これ・・・俺に?」


 こくんと首を縦に振る。


「ありがとう、すごくうれしいよ。これ・・・開けていいかな?」


「うん、是非」


「ネックレス?かっこいいじゃん!えー嬉しいな、ありがとう!」


 良かった、喜んでくれているようだ。


「大切にするよ」


 そう言うとそのまま自分の首にかけてくれた。うん、似合っている。戦闘の時は服の中に入れれば邪魔にもならないだろう。ネックレスのデザインが蓮の花であることを説明しようと思っていたが、まあいいだろう。私だけが知っておくのも楽しい、いつか時が来たら教えてやろう。それは私の分身みたいなものなんだて。


「じゃあ、約束ね。きっといつか鉱石が光る空洞まで連れてってね」


 アーゼスは大きくうなずき、私へと手を伸ばし握手を求める。その手を掴み、レイドランがそうしたように強く強く握ってみた。すると彼もまた強く握り返す。


 私は、いつまでも待っているよ。アーゼスが連れて行ってくれるのを。


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