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15話 蓮夏の過去 その4

「あ、おかえりーアーゼスっ」


 何だこのピチピチのギャルは。私よりも遥かに膨らんだ胸部が揺れている。


「あぁ、ただいま、柘榴【ざくろ】」


「早かったねっ!って、あ、この子?」


 アーゼスの後ろに隠れていた私を見つけるとその女は腰を屈めた。


「えええ、可愛いー、名前は何て言うの?」


 くそ、可愛いじゃないか、この女。そして揺れる胸がチラチラと視界を刺激する。


「えっと、蓮夏です」


 人見知りな私は彼女の目を見れずに自己紹介をした。


「そっかー、蓮夏ちゃんかー!会えて嬉しいよーっ」


 ギュッと抱きしめられて手のやり場に困った。いい香りがする。雪先生とはまた違う、爽やかでそれでいて少し甘い香り。


「私はね、柘榴。宜しくねっ蓮夏ちゃん」


 この押しの強さでこんな美女に言い寄られれば男なんてイチコロだろう。私だってちょっとイチコロだ。アーゼスは、もしやもしやではなかろうな?


「あ、あの、宜しくお願い、します」


 そんなことを頭で考えていても、人見知りは発動するらしい。彼女は私から離れると満面の笑みを向ける。


「うん!ほら、中に入りなよっ」


 柘榴さんに導かれて私達は灯さんの実家の扉を潜る。アーゼスは当然慣れているようで特段驚きもしないが、とても立派な門だ。中の庭は大きく広い。流石に端が見えないなんてレベルではないが、周りに比べれば3倍程はあるだろう。


「ひ、広い」


「ん?あぁこの庭ね。気持ちいいんだけどね、広い庭って。でも草むしりやらで大変よ」


 たしかに、私も施設で時折園内清掃で草むしり等を行うが大変だ。何十人と皆でやって1日で終わるのだ。


 灯さんは名のあるレイダーだったから、そこそこ裕福な暮らしが出來たのだろう。命をかけているのだ、当然か。


「アーゼスから聞いたのだけど、蓮夏ちゃんは今13歳だったよね?何のお仕事してるの?」


 歩きながらも話題を振れる優秀さ。ヒノウチドコロが無い。


「えっと、解体、士」


 この年で解体士するのはやはり少し特殊だ。言うのにすこし憚れる。隠したい訳ではないのだけど。


「え、解体士してるの?すごっ!怖くない?」


 こういう反応が普通なのだ。時にはまだ微かに生きた動物を割くこともある。


「怖くは、ない」


「へぇえ、すごい。お姉さん感激だよー」


「切り裂き蓮夏って言われてんだぜ?」


「ちょっと!」


「あはは、何それすごいじゃん!カッコイイよー。あ、ってことはパーセプション?」


 パーセプションというのは感覚神経強化能力者のことだ。


「うん」


「なるほど。アーゼスだめだよ?こんな可愛い子、ウテルス連れてったりしたら」


「ん、あぁ。あー、それは、蓮夏が決めることだろ?」


 こやつ、私をウテルスへと連れ込む気だったのか?


「あ、ほら、連れてく気まんまんじゃん!蓮夏ちゃん、だめだよ危ないんだから」


 小さな池や綺麗にされている植栽を眺めながら庭を通ると木造の大きな家の前へと着く。


「さ、どうぞ入って」


 木の暖かみがある内装で、2階建てになっている。大きな応接間へと案内されるとアーゼスは手慣れた手付きで荷物を下ろしソファーへと腰をかけた。


「ほら、蓮夏も座りな」


 コクンと頷いてアーゼスの隣に座る。腰が思っていたよりも深く下るもんだから、後ろにひっくり返るかと焦った。ソファーが今まで座ったどれよりも柔らかのだ。ふわふわと気持ちが良い。


「お茶持ってくるね」


 そう言うと腰まで伸びる綺麗なストレートの黒髪を揺らしながら部屋を出ていった。


「アーゼスは良くこのお家に来てるの?」


 探っておこう、柘榴さんが居ない間に。


「あぁ、殆ど毎日かな?食事のお世話になってるのと、寝床も借りててね」


 ピクリと心臓が揺れる。


 何?寝泊まりもしてるのか?


「あ、あれ?アーゼス自分のお家あるのに?」


「灯さん、居ないだろ?親父さんも腕っぷしが立つんだけど、最近体悪くして家を守ることもできないからって、用心棒みたいなことをお願いされててね」


 街は平和に見えるが、やはり女性だけともなれば危険はあるものか。


「野生のモンスターも本当に稀だけど、夜迷い込むこともある。街に問題が起きた時も、警報器や見晴台、街外部との連絡手段とか、灯さんが残したものが沢山この家にはあるんだ。だから街を守るのにもここに居てくれると助かるって、ね」


 この街にはレイダーが二十人ほど滞在しているという。あるものはここが住まいの者、あるものは調査協会からの依頼で雇われている者と、二種類だ。


「おまたせー」


 ガチャとドアが開くとお茶を柘榴さんが運んできた。


「はーい、どうぞ」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


「蓮夏ちゃん、敬語なんて使わなくていいよ。柘榴って呼んでよ」


 にこりと笑いながら私の前へとコップを置く。冷たそうなお茶が揺れている。


「あ、えっと」


 アーゼスを横目に見ると、彼は頷いている。


「う、うん。分かった、柘榴」


 ぱっと花が咲くように口を開けて喜ぶ柘榴。


「私も蓮夏って呼んでいいかな?」


「いい、よ」


 小恥ずかしいものだな、人に言い寄られるのは。


 「良かったぁ、じゃあ蓮夏、宜しくねっ」


 あぁくそ、可愛いな。アーゼス惚れてんだろうな。くそ。何となくそんな気がする。




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