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14話 蓮夏の過去 その3

 私はルーフィンの街にいる。昨日、アーゼスに連れてもらってきた。朝出発して、夜に着いたのだけど、なかなか遠い道のりを二人で歩いてきたのだった。それはそれで、ふたりきりだったしで楽しかった。


 道中でも危険はなく、所々で休憩できる小さな街があって寄り道したりした。


 街にはレイダーをしている守り人が雇われていて、アーゼスの顔見知りの人もいた。都度私のことを紹介してくれる中で、レイダー界隈の横のつながりが広いことを知った。年齢も年寄りから若い人まで、今もレイダーの人から辞めて支援や裏方、まったく別の仕事をしている人など、実に多岐にわたる。


「よし、今日は鉱山に行こう!もちろん安全な所までしか行かないからさ」


 私達は朝食を食べていた。幸せ、と声が漏れそうなシチュエーションだ。夜を共に過ごし朝を共に食べる・・・なんて、そんなわけ無くて。私は近くのホテルに泊まって、朝ごはんで集合しただけだ。でもまあ、それだけでも十分に幸せだ。


「うん、行きたいっ」


 目を輝かせて返事をする。施設で暮らしていた私は、仕事をしていた。12歳を超えると職場体験があり、自分に合った仕事を選ぶ。


 私は目が良かったこともあり、素材選別の仕事をしていた。肉ごと運ばれるモンスターもあり、割いて必要な部位だけを取り出すのだ。


 歳場の行かない少女には過酷な仕事、ではあるが。抵抗はすぐに消えた。食べ物のために動物を殺す屠殺の仕事も同じだろう。


 何より、素材の違いが見て分かるから作業効率が他の人に比べて何倍も高かった。それもあって、どんどんとのめり込んだ。


「切り裂き蓮夏の腕がなるだろ?」


「モンスターはいないんでしょ?」


「蓮夏にかかれば、鉱石だって同じだろ?それにモンスターの残骸を運ぶレイダーもいるかもしれないさ」


 笑うアーゼス。職場の人が言った私の忌まわしき通り名が、キャッチーなこともあってすぐに広まった。


 悪い気がしていない自分がすこし気色悪かった。やってることは血に塗れた仕事なのに。でも、誰かがやらなければならない、それだけは誇りだった。


「俺が死んだ時には蓮夏が割いてくれよ」


 冗談まじりの声。だけど、その言葉が重く重く心を締め付けた。


 人が死ぬと、モンスターと同じく、解体する。解体師、私のやっていた仕事とはまた別で職業がある。


 埋葬師。


 異常細胞を持つ私達は、死してなお、活動する。私達の死は思考が止まった時と定義されている。感情を失った時とも言える。異常細胞は脳からの制御から開放されると、自律的に動くようになる。


 バグと呼ばれるその現象は細胞によって構成される有機回路が知能に代わり役目を果たそうとするから、らしい。


 その中心となる部位を切り離すことでバグを引き起こさないようにし、切り離した部位だけで活動したとしても問題を引き起こさないレベルまで細分化するというのが、埋葬士のやること。


「そんなこと、冗談で言わないでっ!」


 怒った顔を彼へと向ける。解体士と近い埋葬士の仕事は何度も見たことがある。技術交流や、モンスターでも起こるバグの研究を共同で行ったりもする。


「あ、あぁすまんすまん」


 少しバツの悪そうな顔をしながら謝った。言い過ぎたかと反省する。


「ううん、大丈夫。ごめん、大きい声だして」


 それに、身内が死ねばそれを見届けることとなる。灯さんの時は執刀儀は雪先生がつとめた。故人に最初に刃を入れる儀だ。故人とゆかりのある人が、故人とゆかりのある刃で。


 店先で食べていた朝ごはんを終えると、お会計を済ませてくれたアーゼスが寄りたい所があると言った。


「こっちでお世話になってる灯さんの両親と、その姪の人と、せっかくだから会わせたいんだ」


 灯さんには私もお世話になっていた。そのご両親には私も挨拶しておきたい。


「うん、分かった」


 笑顔で返事をする。

 

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