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〜Runner〜  作者: 黒茶
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支部大会前日

 いよいよ明日が支部大会1日目だ。部活は疲労を残さないようにかなり強度の軽い練習で早めに終わった。

 その分ミーティングがある。自分の出場種目と開始時間。それぞれしっかり確認する。とはいえ、部として8時に集合なのだが。


 「ユニフォームやスパイク、ドリンクやタオルなど忘れないように。家に帰っても無理に練習はしないこと。各自しっかり確認するように。自分の出場する種目の開始時間から逆算して食事だったりをするように。以上でミーティングを終えます。」

甲斐部長が締める。



 いつもの様に4人で帰る。話題はもっぱら明日のこと。


 「いよいよ明日だね〜。早く走りたいよ〜。」

愛衣は落ち着いてるみたいだ。かなりリラックスしてるし、レースを楽しみにしている様だ。


 「俺は前日が1番嫌だよ。余計なこと考えちゃって。」健吾は緊張しているみたいだ。


 「そういえば中学の時に食べ物持っていくの忘れたことあったっけ?ちゃんと事前に準備しとけよ〜。」

あの時は結局なんとかなったが、流石にもう一度はないと思いたい。


 「あ〜、あったね、そういえば。すんごい表情しながら『、、、ない、、、』って。あの表情は凄かったよ。」

美桜も懐かしそうにあの時を思い出してるみたいだ。


 「確かにあの表情は凄かった。この世の終わりみたいな表情してたな。ムンクの叫びかってくらい凄かった。というかムンクでも表現できないんじゃないかってくらいの表情だった。」

これには愛衣も同意見だった。


 「うん。凄かった。人間てこんな表情できるんだってくらい凄かったよ。」


 「あの時のことは否定できないよ。心拍数200超えたんじゃないかってくらいだっからなぁ。」


 「でも大丈夫だよ!健吾。一回あんな顔しちゃったらもう同じ表情はできないよ!」

愛衣の励まし?に美桜がつっこむ。


 「そっち?表情じゃなくて忘れ物しないじゃないの?」

名波も同感だった。


 「忘れ物はしちゃダメだけど、あれ以上の表情を俺は見たいな、正直。」


 「忘れ物もしないし、表情だってもうあの時みたいにはならないよ。もう準備だってしたんだから。」

健吾にとっては相当な事だったんだ。

 

 周りから見てる名波達からしてもあの表情は写真に収めておく価値があるくらいのものだったが。地上波で流れたらモザイクかかるんじゃないかってくらいの表情だったから。


 「で、その準備したのを当日忘れないようにしないとねって話だよね。」

美桜が健吾に言う。


 「大丈夫だよ、美桜。それも含めて忘れない。同じ過ちは繰り返さない!」

健吾にとってはそれなりにトラウマなようだ。


 「2度あることは3度あるって言うもんね。」


 「ちょっと待て、愛衣。勝手に増やすな。下手したら2回増えるんだぞ。」


 少しリラックスできているような会話だ。明日が支部大会なのは変わらない以上、自分達がどう挑むかだけだ。


 その後も待ち時間の待ち方や、レースに入る時の心理状態なんかで盛り上がった。明日にはそれが実践できる。

 楽しみで仕方ない名波はふとスマホで天気予報を確認した。空気を読んでくれてか、穏やかな晴れ、風もあまり無いそうだ。


 「何見てるの?」

美桜が名波に聞く。


 「天気予報。明日は穏やかな晴れで、風もあまりないって。気温も20°だから走りやすいよ、きっと。」


 「やったね、天気ばかりは日頃の行いだから。」

愛衣は実はかなり日頃の行いがもたらすものを信じている。


 「暑くないってのは有り難いよな。何年前だったか4月なのに30°近い時あったし。よっしゃ、やる気出て来たー!」


 健吾だけじゃない。愛衣も美桜も気合いがみなぎってるのが分かる。目標は支部大会を突破して、都大会へ。そしてそこで上位入賞を果たし南関東大会出場。

 それが3人の今の目標だ。その第一歩目を明日に控えて、4人の精神状態はかなり良いと言えるだろう。4人とも支部大会を突破して祝勝会をやりたい。

 4人で最高の時間を過ごしたい。名波の気持ちは変わらない。高校進学先を選んだ時からずっと。


 4人と別れて家路に着いた名波は、明日の準備の確認と前大会の春季大会から始めた瞑想をする。

 良いイメージも悪いイメージも浮かべず、ただただ呼吸に集中する。コンディショニングの一つだ。

 数分の瞑想を終えて、リラックスしながら明日を待つ。支部大会1日目の明日を。

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