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〜Runner〜  作者: 黒茶
18/20

女子4×100メートル走リレー

 「橋本先輩凄かったなぁ。都大会進出だよ。」


 「うん、やっぱり3年生は強いよね。負けられないんだって感じがあるっていうか。」


 「美桜、わかるよ、それ。3年生って本当に一生懸命だからか、すごい気合いが伝わって来るよね。」


「最後に勝負を決めるのは気持ちってよく言うもんな。そういう意味だとやっぱり3年生は競う上で強敵だよ。」


 健吾と愛衣はその3年生に混じりながらも勝ち上がっている。まだ出場してない美桜は少し寂しさと焦りを感じてしまった。


 「次は女子の100メートルリレーだね。なんとか都大会出場してほしいよね。」


 愛衣が次のレースの話を始める。


 「そうだね。簡単にはいかないかもしれないけど、頑張って欲しいよ。」


 「女子の100メートルリレーは目標都大会出場だっけ?そう考えるとここが勝負どころだもんな。確かタイムレースで決まるんだろ?」


 「うん。男子も女子もリレーはタイムレースで決まるよ。着順よりタイムだね。」


 「やっぱりリレーはバトンパスが命運を分ける感じなのかな。中距離の私からしたらわからない感覚だけど。」


 美桜の言葉はもっともかもしれない。学生駅伝では襷を繋いでいくが、大きなタイムの差にはならない。しかし100メートル走リレーという短い距離ではコンマ数秒で結果が大きく変わる。

 同じ陸上部でも、同じ「走る」と言う競技でも本当に大きく違う。


 「中距離やってると短距離って難しいなって思うし、短距離やってる人からしたら中距離って難しいって思うみたいだからね。陸上って奥が深いよ。」


 「ははは、奥が深いか。確かに愛衣の言う通りかもなぁ。走ってる最中はレースプランと駆け引きぐらいしか考えてないんだけどなぁ。」


 笑いながら健吾が言う。



 いよいよ迫ってきた女子4×100メートル走リレー。各々がしっかりアップを終え、バトンパスの確認に入っている。


 都立高倉高校の女子4×100メートル走リレーの出場者は

第1走者が2年生の新里 春

第2走者が2年生の笹川ささがわ 佳代かよ

第3走者が1年生の進藤 光

第4走者が3年生の今井 和美だ。


 「3人とも調子は悪くないみたいだし、バトンパスをしっかりできれば都大会出場のチャンスはあると思う。」


 3年の今井が言う。


 「頑張って都大会出場しましょう!和美先輩!」


 春が言えば


 「上手くいけばきっと大丈夫ですよね!頑張りましょう!」


笹川 佳代(以降「佳代」)も。

 

 「私も頑張ります!」


 1年生で唯一リレーのメンバーに入った光も言う。


 皆んな気合いは充分だ。リレーという種目で、皆んなで勝ち上がりたい。4人の共通意識だ。


 「それじゃあバトンパスの確認、時間までやろう。」


 今井先輩の一言で、再度バトンパスの確認に入っていく。兎にも角にもスピードに乗った状態でバトンを受け渡せれば、タイムはかなり縮む。だからこそバトンパスは本当にリレーにとって大事だ。


 しばらくして女子4×100メートル走リレーが始まる時間になった。


 4人は集まり円陣を組む。4×100メートル走リレーの時の伝統だ。


 3年の今井が言う。


 「いい、みんな。しっかり実力出し切ることだけを考えて!ミスを絶対に恐れないこと。勝負して勝ちに行こう!」


 「はい!」

 3人が答える。


 「都立高倉高校、ナイスバトンラン!」


 「ナイスバトンラン!」


 都立高倉高校は2組目だ。1組目がスタートした。もう残り数分で2組目も始まる。そしてすぐに1組目がレースを終えた。


 4人は別れてそれぞれのスタート位置に向かう。

 それぞれがスタートの合図まで準備をする。1走の新里はスタートを、2、3、4走の3人はバトンを貰うためのスタート位置を確認する。



 「オン・ユア・マークス」


 第1走者の春がスターティングブロックに足をセットする。まもなくレースが始まる。


 「セット」


 号砲一発でスタートが切られた。春は必死に第2走者にバトンを繋ごうと全力で走る。今日走った100メートルのレースより早く走れている。

 第2走者が近づいて佳代がスタートの構えをとる。上手くバトンパスをするために、入念に位置を確認してきた。

 そして佳代がスタート。加速し始める佳代に春が近づく。春の左手から佳代の右手へバトンが渡る。


 「佳代ー!行けー!」

 佳代の後ろから春の声が響く。声に押されるように佳代はスピードを上げていく。


 (春から繋いだこのバトン、光に絶対に届ける!)


 バックストレートをぐんぐん走って、第3走者の光に近づいていく。唯一1年の光は緊張していた。


 (私がバトンミスで先輩達のレースを終わらせちゃいけない。)


 その思いからか、少し安全にスタートを切ろうとしていたが、今井先輩の言葉を思い出した。


 「ミスを絶対に恐れないこと。勝負して勝ちに行こう!」


 光は勝負に出た。


 (ミスれないけど、ミスを恐れちゃいけない!)


 スタートを切る光。そして加速していく光に近づいていく佳代。バトンが繋がる。しっかりと繋がった。


 バトンをしっかり握り全力でアンカーの今井先輩の元へ走っていく光。


 「光ー!ファイトー!」

 佳代からの声を背に光は強く思った。

 (このバトンを今井先輩に!)


 それしか頭にないくらい無我夢中で走った。どんどんとアンカーの今井に近づいていく。

 今井がスタートの態勢に入る。光とのタイム差から、早くスタートを切りすぎるとテイクオーバーゾーンを超えてしまう恐れがあった。

 それをしっかり理解してスタートのタイミングを図る。ベストのタイミングになるようにスタートを切った。

 加速していく今井に近づいていく光。バトンはしっかり渡った。ただ少し詰まってしまった。


 「和美先輩!ファイトー!」


 アンカーにバトンが渡り、ホームストレートでの勝負になる。3年の今井のラスト100メートル。


 (4人で繋いだバトンを持ったままゴールして都大会に進出するんだ!)


 必死の走りでゴールへ向かう今井。そしてフィニッシュ。

 着順は3着だが、4×100メートル走リレーはタイムレースで都大会へ行けるかどうかが決まる。


 ゴールした今井の元に光が来る。


 「お疲れ様です!和美先輩!すみません、すこしバトン詰まってしまって、、、。」


 「お疲れ様、光。バトンが詰まったのは光のせいじゃないよ。私が少しスタート切るのが遅かったからだから。ごめんね。光は気にする必要どこにもないよ。」


 「和美先輩も気にする必要なんかないですよ!私安全にスタートしようか考えていたんですけど、和美先輩の言葉を思い出してミスを恐れずスタートで勝負できました!」


 「うん、ありがとう。光が勝負できたなら本当に良かった。私は去年勝負できなかったから。本当に良かった。」


 2人で話しながら移動して春と佳代との合流を図る。もちろん電光掲示板を気にしながら。タイムはどうだったのかを早く見たい。

 そうしているうちに電光掲示板に結果が出た。


女子4×100メートル走リレー2組


3 都立高倉高校 53.26



 そして女子4×100メートル走リレー3組目のレースが始まろうとしていた。

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