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〜Runner〜  作者: 黒茶
12/20

男子100メートル走準決勝

 予選突破をした選手たちだけでの戦い。それ相応の実力を持った選手たちだけでの戦い。男子100メートル走準決勝。

 予選と違うのは決勝進出の条件が、各組上位2位+タイム上位2位。タイムで準決勝進出が決まった予選との違い。ここで一気に8名まで絞られる。

 決勝進出が叶うのはわずか8名だけ。いよいよといった感じだ。


 入念に準備をする名波。予選はいい感じで入れた。その時のまま入れれば大丈夫。ここからは10秒台もちらほら出てくるが、それは名波も同じこと。

 中学の部活を引退した後もトレーニングを続け、高校入学後も怪我一つなく順調に来れた。

 あの熱い熱い夏の合宿も、本当に辛い冬季練習もしっかりとこなして来た。名波もしっかりタイムを縮めていた。

 だからこそ自分の走りがしっかりできれば負けないという自信がある。去年の自分とは違うんだと、親友の3人に見せたい。


 走順は1組目に甲斐部長。2組目に名波。3組目に翔だ。出来ることなら3人全員決勝に進出したい。そこで公式大会でしか味わえない緊張感と高揚感の中で勝負がしたい。

 日頃の部活で一緒に走ることもあるが、やっぱり練習と公式試合ではまるで違う。走ってみたいんだ。わずか11秒ほどのわずかな時間でも、同じ時間を共有したい。

 一緒に懸命に練習してきた仲間と同じ時間を過ごしたい。できることなら支部大会決勝だけでなくその先も。

 

 そう思っていたのは名波だけではなかった。翔も自身のコンディションを整えながら同じようなことを思っていた。

 思えば冬季練習で大きく伸びるまで、大した成果もあげれなかった。きついきつい冬季練習でお世話になった甲斐部長と同学年で自分のはるか先へ行く友と勝負したいと思っていたのだ。

 そのチャンスが掴めるかもしれないと思うとなんとも言えない興奮を覚えた。

 (早くレースがしたい!)

負けることなど頭に微塵もなかった。成長した自分がどこまでいけるか、どれだけの力を出せるかを知りたいのだ。


 それに野村先輩のこともある。4×100メートルリレーでは一緒に走るが、男子100メートル走の枠は2年の自分が手に入れた。

 3年生にとっては最後の大会になる人もいる。1年の時からずっと頑張って来たはずだ。その人から出場枠をもぎ取った形なのだ。

 情けないところを見せれない。勝つところを見せたい。来年があるからいいやなんてこれっぽっちも思えない。3年生がいてくれる間に結果を残したいと翔は思っていた。


 野村先輩のことで言えば、甲斐部長も同じ気持ちだった。1年の時から一緒に走って来た。夏の合宿も冬季練習も超えて来た。

 タイムでの結果だから仕方ないが、出来れば2人で都大会、そして南関東大会を目指したいと思っていた。

 実際何度も何度も一緒に結果を出そうと声を掛け合った仲だ。リレーでは一緒に走れる。できることなら、個人100メートルでも一緒に目標にむけて走りたかった。

 だからこそこの大会、負けるわけにはいかない。勝って都大会に出場するんだ。都大会で上位進出して南関東大会を目指すんだ、と。

 

 3人はそれぞれの想いを胸に男子100メートル走準決勝を待っていた。


 そして男子100メートル走準決勝が始まろうとしていた。


 「3人揃って決勝進出しような!友!翔!」

 「はい!!」

 名波と翔が同時に返事をした。


 男子100メートル走準決勝1組目。甲斐部長の出番だ。調子は上々。変な緊張も焦りもなかった。


 「オン・ユア・マークス」


 スターティングブロックに足をかける。スタート位置に手をつきいよいよだ。


 「セット」


 号砲が鳴りスタートを切る。普段通りのスタートだ。スタンドからは声援が飛んでいるが甲斐の耳には届かない。

 ほんの少しでも早く前へ。ほんの少しでも早く走るんだ。

 加速局面を終えてトップスピードへ。減速局面に入るのを少しでも遅く!

 少しでも早く、少しでも前へ。そしてゴール。


 (良い走りができたな。良かった。)

 甲斐は少し安堵しながら電光掲示板を見てる。程なく結果が出る。



男子100メートル走準決勝1組目


2 甲斐 亮介 都立高倉高校 11.02


 着順2位で決勝進出!ほっと一息ついて甲斐は思う。

 (次の決勝で勝てば都大会だ。もう一段階上げないとな。)


 甲斐の決勝進出を見て武者震いする名波。


 (部長は有言実行した。あとは俺たち2年だ。)


「オン・ユア・マークス」


スターティングブロックに足をかける。スタート位置に手を置く。そこからのわずかな時間がやっぱり好きだ。


「セット」


 号砲と共にスタート。なかなか良いスタートが切れた。加速局面を意識して、トップスピードへ。そして自分の前を誰も走っていないままゴール。


 納得の走りができた名波は、電光掲示板に結果が出るのを楽しみに待つ。

(やっぱり好きだなぁ、この時間)



1 名波 友 都立高倉高校 10.98



 おぉ〜という驚きの声。支部大会で10秒台が出ると大体こうだ。

 周囲の驚きとは反対に名波は落ち着いていた。まだまだ上げていけるという感覚があるからだ。

 ひとまず着順1位で決勝進出。


 (あとは翔だな。あいつはこうなって来ると燃えるから大丈夫だろう。)


 実際翔は燃えていた。2人続けて決勝に。更には10秒台も拝めた。あとは2人に続くだけだ。


 (絶対決勝進出してやる!)


 気合十分な翔。硬くなることもなく焦りもない。調子も良い。


 「オン・ユア・マークス。セット」


 号砲と共に一斉にスタート。良いスタートが切れた。加速局面が終わるのが少し短かったような気もするが、ここからトップスピード。減速局面に入りそのままゴール。

 走り終わった翔は

 (うん、悪くなかった。)


電光掲示板にタイムと名前が載る。



2 足立 翔 都立高倉高校 11.07


 「よっし!」


 ガッツポーズする翔。着順2位で決勝進出が決まった。


 都立高倉高校陸上部男子100メートル走は3人とも準決勝を突破。


 「おつかれ、友、翔。」


 「お疲れ様です、甲斐部長。翔もお疲れ様。」


 「お疲れ様です!部長、友!やりましたね!」


 「あぁ、3人とも良い走りができたな。」


 「はい、手応えありでした。」


 「次は決勝ですよ!決勝!勝てば都大会!ヤバい、早く走りたい!」


 翔は少々興奮気味だが、甲斐部長は落ち着いてる。余裕がまだあるようだ。


 「翔、喜ぶのも良いけどアフターケアちゃんとな。」


 「はい!決勝に向けて万全にします!」


 自分もケアをしっかりしなきゃなと思う名波。故障なんてごめんだ。次の決勝に向けて早速勝負は始まってるのだった。


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