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〜Runner〜  作者: 黒茶
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プロローグ

何本も何本も走る。

滴る汗と反比例する様に飲むドリンク。

日差しに光る汗が何故だか凄く綺麗に見える。

走り終えて地面に座った時に見える空の青が一段と深く感じる。

走り終わった後の心地よさ、満足感がそう思わせるのかもしれない。



誰よりも早く先にゴールへ。

今までの記録よりも更に先へ。

思いは人それぞれだけど、先へ行くんだ。

自分のアクセル全開で青春を駆け抜ける。



 陸上競技場で行っている自主練習。

名波(ななみ) (ゆう)は満足がいかないのか練習を辞めない。

目標をこれと決めたら、それ以上の目標以外に変えない高校2年生。

全国出場、ファイナリスト、入賞、表彰台、そして優勝。

都立高倉高校に入学してもう一年が過ぎた。


 もともと足が早かった名波は中学から陸上部に所属していた。

 市立多摩第3中学校では専門的な指導を受けることもない3年間だった。


 無理もない。

公立中学に都合よく陸上に強い教師がいたらそれは幸運だったろう。

 ただ時代もあって自分で陸上競技について調べて学べる環境でもあった。


 専門は100メートル。

 一応100メートル以外にも200メートルをやっている。

中学時代、専門の100メートルでは全国まで進出した実力者だ。


 しかし日本は広かった。

全国大会予選敗退。

ファイナリストにはなれなかった。


 11秒台前半で走れはしたものの、10秒台すらいる世界だ。

 11秒前半のタイム持ちが当たり前なこの全中では勝ち上がれなかった。

 とはいえ全国出場をできるほどのタイムと実績から多くの高校から話が来たのは言うまでもない。


 高校でも陸上を続けると決めていた名波は、高校でこそ全国のファイナリストになり、そして表彰台に登ることが目標だった。

 スポーツ推薦で私学に進むことが一番その道を成功に導けそうだが、名波は選ばなかった。


 理由は2つ。

1つは都立高倉高校は自宅から程よく近く都立ながら都大会や南関東大会に出場する生徒をよく輩出しているから。


もう1つは親友達の存在だった。

競技種目は違えど、3年間一緒に懸命にやってきたチームメートがいたからだ。

 名波ほどではないものの、1人はあと少しで全国に手が届くところまでいったくらいだ。名波の本気を間近で見ながら、自分たちの競技で名波に負けまいと必死に努力していたこのチームメートと、もう3年間自分達の目標に挑戦したかったのだ。

 全国大会での表彰台という大きな目標を掲げながらも、馬鹿にすることもなく純粋に応援してくれた親友達だ。

名波のただならない努力を知り、自分も負けまいと努力を重ねた親友達。

 もちろん名波自身も親友達の努力はよくわかっている。

だからこそ、同じ高校の同じ陸上部で3年間過ごしたかったのだ。


親友は3人。


葉山(はやま) 健吾(けんご)

矢島(やしま) 美桜(みお)

(たちばな) 愛衣(あい)


 葉山は800メートル、1500メートルもこなしていた。

その1500メートルであと少しで全中に手が届く程の実力者だ。

 矢島美桜と橘愛衣も800メートルと1500メートルを共に専門にしていた。

2人ともぎりぎりではあったが、都総体に出場したくらいの実力を持っている。


 短距離と中長距離で、種目も目標も違えど4人は揃って陸上競技という孤独なスポーツを一生懸命にやってきた。

 互いに刺激し合い、タイムが伸び悩んでいた時には励まし合い、3年間を過ごしてきた。

 最後の大会が終わったあと、名波から同じ学校でまた3年間頑張らないか?と言われた時にはためらいがあった。

名波は全国まで出場し、高校では全国のトップを目指すと聞いていたから。


自然と強豪私立に進むものだと思っていたのだ。


 自分達に気を遣わせてその目標を難しくさせてはいけないんじゃないかと、つい思ってしまった。


 そんな心を読んだかの様に名波は言ってくれた。

「みんながいなかったら、俺ここまで頑張れなかった。みんなにいい所見せたかったし、みんなのいい所たくさん見たかった。でも、全中では予選で負けて目標に届かなかった。今度こそ高校ではみんなの前で表彰台に上がりたいんだ。目標はそれぞれだけど、その目標に向かって一緒に走らない?」


 そう言ってもらった3人全員が泣きそうだった。


名波友は真っ直ぐな性格だ。

言葉に嘘偽りがないなんてすぐわかる。


 高校進学という将来を決めかねない大事な選択を迫られている受験生からしても、進学の動機としては十分過ぎた。

 また一緒に走りたい。

3人が進路を決めるのにそう時間はかからなかった。


 4人に共通しているのは文武両道を掲げていた点。

都立高倉高校の学力は中の上。

みな十分届く。

 もちろん、実力が落ちない様に自主練は欠かさずに。

こうして、4人は都立高倉高校で高校生として3年間過ごすことになるのであった。



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