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シャイニングおじさん 〜ギャグの練習〜

おじさんのがんばりで彼女を変える話。ギャグの練習です。やばかったらすみません(TдT)

比奈は噴水を見つめていた。セーラー服がなびく。

春風柔らかなある日、比奈はひとりさびれた駅前で立ち尽くし、ちいさな噴水を眺めた。

泣きそうな表情。それは徐々に強まり、やがて決壊しかけていた。

つぎの瞬間、

「ぽーん!」

高く叫び下ろす声が噴水から噴き出し、おじさんか飛び出してきた。

「シャイニング!マーベリック!ダンシング!シャイニングおじさんだよ!」

「……もしもし、警察ですか?」

「やめろ!通報だけは!」

シャイニングおじさんは噴水から上がる。水浸しのまま服を着る。スーツ姿。

「じゃ、わたしは仕事があるので」

「え、なんなんですか?」

「いや、別に……?たんなる趣味だが」

「趣味!?」

比奈は焦って声を高く上げた。

近くのハトの群れが飛び去った。

「趣味……そして実益」

「実益!?」

「あそこにお饅頭屋さんがあるだろう」

「え、はい……」

「あそこには、50歳になるおじさんがいて、プラモデルを愛している。カレーをよく食べ、奥さんは……いない……」

「はあ」

「つまりそういうことだ」

「どういうこと!?」

すると、おじさんはため息をついた。

「君、そんなんじゃだめだよ。もっとシャイニングしないと」

「シャイニングって?」

「それはね、ブレイキングさ」

「ブレイキングって?」

「それはね、バーニングさ」

「バーニングって?」

「それはね…」

「もういいわ!」

比奈は持っていた金属バットでいきなりシャイニングおじさんの腹部をホームランした。

「ブレイキング!え、聞かなくていいの?」

聞きながらおじさんは噴水へ落ちた。

「やれやれ」

それを無視して比奈は電話をかけようとした。

「もしもし、警察ですか…」

「まてい!」

すると背後にて轟音。

噴水の中で仁王立ちするおじさんをスルーする比奈の後ろで、徐々に噴水はせり上がり、やがて空へロケットのように飛んでいった。

「え?」

一部始終を見損ねたまま、比奈は振り返った。

「なんですか?どこ?」

噴水があった穴を覗き、比奈はため息ついた。

「ふっ、まだまだね」

すると、その穴から大量のヒヨコが溢れ出してきた。

「うわああ、かわいい!」

「シャイニング!」

ヒヨコたちが声とともに吹き飛び、中からシャイニングおじさんが現れた。

「うわー!」

ヒヨコたちは平然としている。あたりのハトが餌を求めて混じる。何気なく。

シャイニングおじさんはちいさな高いお立ち台の上で、ひたすら小さく踊っていた。

「おじさん……また……」

「シャイシャイシャイ!!シャイニング!」

「なんて必死で小さな動き……」

手首だけを交互に、直角に曲げかえるだけの小さな動きにて、おじさんは小刻みに揺れていた。

「シャイニングリマスターガーディアン!」

「もういいよ……」

比奈はスマホを耳にあてた。

「もしもし、警察ですか?」

「まてい!」

おじさんはお立ち台に入っていたバネで大きく飛ぶと、いつしか構えていたスタッフたちが準備していたスポンジのプールに落ちた。

「テレビのお笑いみたいなやつがある!」

比奈はあたりを見回した。

「これはドッキリだ!わかった、絶対ドッキリ!はやくカメラ出てこい!もうわかってるんだからね!」

「これはドッキリではない……」

おじさんはククク、と笑った。

「え、ただやったの?……ふーん」

比奈はスマホに手をかけた。

「警察ですか?」

「まてーい!」

「おじさん……」

「あのなあ、おじさんだって50代だぞ、こんなことほんとにやりたいわけないだろ!いい加減にしろ!」

「何急にキレて……」

「キレてないですよ」

「古いよ」

「はあ〜〜」

おじさんは深いため息をついた。

「なんなんですか」

「いいか、わかってくれよ、おじさんが面白いことするのは……おじさんが面白いことするのは……ある子供のためなんだ」

「え……」

「実は近所に不登校の子供がいてな。ほら見えるか、あの大きな家だ」

「あれは……」

比奈は暗い表情でそれを見た。高級そうな古びた屋敷。

「おじさんは悩んでな、何かできることはないかと」

「ありませんよ」

比奈は暗いままの表情で言った。

「だって……それ……それは……」

「がんばってるんだよ、ずっとずっとさ、毎日テレビ見て、漫画読んで、工場でつくったお饅頭売って、研究してるんだ」

「お饅頭やさん……でも……」

比奈はつぶやいた。おじさんの手を取り、見つめて言う。

「もう私、学校行ってませんから」

「な……!」

おじさんは硬直した。震えて泣き出す。

「残念だ……そうだったのか……」

「はい……いままで、励ましてくれようとしてたんですね、なのに、ごめんなさい」

比奈は涙ぐんだ。そして言う。

「いままで30年以上もの間、ありがとうございました」

「ああ、比奈さん、あんたももう48歳だな」


あたりのハトとヒヨコが驚いたような顔で二人を一瞬見た。

春風が吹く。繰り返された春は、二人が正気にかえるとともに、あの日の空気を失った。

ふと、あたりに人々が集い、拍手した。

バスが動き、電車が走り、人々があらわれた、

「ここは……」

「まさか、もとの時空……比奈とおじさんはずっと比奈の空想の中に……」

「いえ、ドッキリです」

「今日は比奈さんが正気に返りそうだったから、準備しておきました」

植え込みからでて来るカメラ。噴水がついたロケットもトラックの荷台に載って戻ってくる。

ヒヨコも一匹残らず業者に返却されるため集められた。

「忙しいですねー」

「そのようですな it's so busy」

「なんでラーメンもしもし語?」

「英語ですよ」

比奈とおじさんは微笑んだ。さっきの柔らかな春風がまた吹いた。ハトがエサを求めて、パンを持ってやってきたお爺さんに群がる。日が昇る。朝が来る。学生やジョギング、犬の散歩が集まり、ドッキリ部隊はそそくさとひいた。昼の明るさを演出していた明かりが落とされると、夜明け真っ只中の薄暗さに戻る。

「じゃ、比奈さん、もう明日からはそのセーラー服、着替えてくださいよ」

「いやです」

「え……」

「あしたは、もっとかわいいの、着てきます。いえ、あしたからは悪役令嬢に転生したって設定で、ドレスにしますから……」

「いい加減にしろ!何歳だと思ってるんだ!」

シャイニングおじさん激高。

「バーニング?」

「バーニングじゃないよ!」

「バーニングじゃないの……?」

とたんに背後のお饅頭屋さんにくっついていた工場が爆発し、おじさんは青ざめた。

「シャイニング?」

と小首をかしげて、比奈。

「ブレイキング……」

「また出資してあげますから……」

「シャイニング!」

おじさんは嬉しそうに構えた。

そのとき、

「あ、いつものでーす」

そう言って警察が現れ、シャイニングおじさんを連行して行った。

「呼んでたんかい!」

「シャイニング〜」

比奈はハンカチを振った。かつての優雅なひきこもりお嬢様のあり方が、そこにはあった。

まさかのご完読ありがとうございます。どうか多目に見て、許してください。

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