俺は最低です
「私を引き取ったこと後悔してる?」
そんな言葉が彩紀の口から発せられる。
俺は思わず彩紀の顔を見る。彩紀はうつむいていて表情が確認できない。
俺は思わず立ち上がる。
「そんなわけ……!」
当たり前のように、後悔なんてしてるわけないだろ、そう返すつもりだった。
でも、彩紀のことを見ていると、過去の後悔からだろうか、それとも彼女に対する後ろめたさだろうか。そんなものが胸につっかえて俺の言葉を押し止めてしまった。
「……」
何か言葉を返さなければいけないのに、返すべき言葉は分かっているのに、ただただ居心地の悪い空気が流れる。
「……ごめん、変なこと聞いた。忘れて」
彩紀はそう言ってリビングの扉へ向かう。彩紀の横顔が俺の真横を通る。
その横顔は煙立つ線香の前で佇んでいたときと同じようで───
「……! 待っ──」
声をかけようとするが、遅かった。彩紀は既にリビングを出ていた。
部屋の中に薄暗い沈黙が流れる。俺は顔を見上げ、天井の明かりを見つめる。
もうあんな顔はさせないと決めていたはずなのに。もうあんな思いはさせないと誓ったはずなのに。拳を強く握りしめる。
「───俺は最低だ」
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