彩紀は反抗期です
俺の名前は浅見一。
年齢は今年で34才になる平凡なサラリーマンだ。
そろそろお兄さんと呼ばれるのが厳しい年になった俺にはある悩みがあった。
悩みというのは、最近抜け毛が多いとか、周りの人間が次々と結婚しました報告をしてくるとか、少し太ってきたとか、体力が落ちて、家に帰る頃には燃え尽きた灰のようになってしまうとかいう年齢からくるものではない。
俺は焼きたてのホットケーキを片手に扉の前に立った。
深く深呼吸をする。大丈夫だ。絶対に上手くいく。だってあの子が大好きだったホットケーキだぞ? 上手くいかないわけがない。
俺は意を決して扉を開け、声を上げた。
「なあ彩紀っ! ホットケーキを焼いたんだが一緒に食べないか!?」
「一人で食べれば? あと勝手に部屋に入らないで」
彩紀は俺を睨み付けながら、勢いよく扉を閉めた。
そう、俺の悩みは彩紀が反抗期に入ったことだ。
なぜだっ! なぜなんだ彩紀! 昔は嬉しそうにホットケーキを食べていたではないか! 目を輝かせながら口のなかに放り込み、俺がビックリするほどの勢いでホットケーキを完食していたじゃないか!
しかもあの態度! あの冷たく突き刺さるような視線!
2、3年前までとはまるで別人だ! あれはあれでまた違った良さはあるが…… 俺はやっぱり優しい彩紀がいい!
ああっ! ひねくれつつも優しかった彩紀は何処にいってしまったのだっ!
「どうしてこうなってしまったんだっ! 何かいい方法は無いのかっ!」
「取り敢えず口じゃなくて手を動かしてくれ。残業になっちまう」
……同僚は今日も冷たい。
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