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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編

カエル

作者: リシエル
掲載日:2021/11/08

 産まれたばかりのぼくは、一人の人間の子供だった。

 「いつき」と呼ばれた雄の子人間。

 父人間と母人間は、ぼくに優しかった。大切そうに、ぼくを育ててくれた。

 いつからだろう、ぼくは人間ではなくなった。


 ぼくは、人間の形をしたカエルになった。

 父人間と母人間はいつの間にかいなくなっていた。死んだのかな。人間の社会はとても残酷だそうだ。ぼくは子人間の時にカエルになってしまったからわからないけど、どこからかそう聞いた記憶がある。


ゲコ。ゲコ。


 池の傍で季節外れに鳴った。メスカエルが一匹もいないのに、ただただ鳴きたかった。

 一匹の雄の大人人間が毎日のようにぼくのところへ来ていた。

 誰だろう。知らない人間だ。


 その人間はぼくと泳ぐようになった。

 泳いで、楽しそうに笑って、そしてまた楽しそうにぼくに話しかける。ぼくはカエルだから、人間の言葉は喋れないのに、それでも構わず話しかけて来る。

 その人間が来るのが、毎日の楽しみになった。

 喋れないけど、話を聞いていたり、一緒にいたりするとなんだか楽しくなる。

 ぼくが一匹で寂しく鳴くことはなくなった。


 ある日、その人間はぼくに聞いた。

 自分がカエルになった理由がわかっているのか、と。

 わからない。

 そう答えたいけど、あいにくぼくはカエルだ。人間の言葉も発せないし、人間らしい動きができる自信もない。

 だからぼくはじーっと人間を見つめた。

 いつもの楽しそうな笑顔はどこにもない。初めて見た顔だ。なんか、難しそうな顔だ。


「だよな。わからないよな。」と、人間は言った。

「わかっていたらこうならないものね」と、呟いた。


 そうなのか。知らなかった。

 理由がわかればぼくは今のぼくにならなかったのかな。

 うん。やっぱり難しい。

 人間たちは、いつもこんな難しいことを考えているのだろうか。

 そうだったら大変そうだな。


 人間が言うには、ぼくの中の「人間のぼく」はふて寝しているらしい。

 そしてその人間のぼくが逃げたいと思った感情から、カエルのぼくが生まれたのかも、と。

 でもずっとカエルのままだと、カエルのぼくにも、人間のぼくにも良くないのだと、人間は言った。だから人間のぼくを起こしてみないかと、提案してくれた。

 それから毎日、人間と練習するようになった。


 最初は上手くいかなかった。

 「人間のぼく」を起こすにはどうしたらいいか、わからなかったから。

 でもだんだんに、ぼくの体の中に、「何か」があることを感じ取った。もやもやして、よくわからないけど、確かにそこにあった。

 それからは簡単だった。

 毎日毎日、その「何か」を感じていると、声をかけるような感じをイメージすると、「それ」は反応があった。日におってそれは大きくなった。


 今回はとうとう、起きてくれるかも、と思いながら、今日も「それ」を起こしてみた。

 後でくる大人人間を驚かしたいから、自分一匹で練習した。

 今日は、手応えがあった。何かが、激しく動き出した。


 胸の中で。脳内で。身体中で。 

 あつい。苦しい。つらい。悲しい。こわい。

 いや。嫌。イヤッ!


グサッ


 気がつくと、ぼくはまたカエルのぼくだけになった。

 唯一の違いは、両手が赤い液体で汚れた。

 胸が、頭が、体が、寒い。

 まるで冬の池に飛び入ったような。

 意識が切れそう。

 誰かが走ってぼくのもとへ来た。遠いけど、たぶん大人人間の声がした。

 ごめんなさいと。無理させちゃったと。

 違うよ。あなたのせいじゃないよ。

 ぼく、さっきわかったのだ。わかっちゃったのだ。


 人間のぼくは、起こされたくなかったのだ。


 だから起こしたぼくを、殺した。


 でも、それを大人人間に伝えられなくて、


 もどかしい、かな。

お読みいただきありがとうございました。これは元々、前に見た夢の内容を、足りない部分や、おかしなところ、忘れてしまった細かいところを少し補足したものです。母語は日本語ではありませんので、もしおかしいな言い回しや文法、誤字などがありましたら感想などでのコメントでお願いいたします。

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