2 魔軍炎上
(注1)カルラ族は鳥類から生まれた通信能力を持つ人型種族。亜空間で唯一科学力を有する
(注2)衛門は元ドミヌスの最高管理責任者で最上級のロボット
(注3)ワームは慎吾が脳の周辺に飼っている磁気生物
(注4)この節魔軍炎上は第一部ドミヌス転生編の最後のシーンを受けています
亜空間霊界の鳥界の森から、続々とカルラ艦隊の母艦が離陸して辺境地域へ向かった。
姫白龍は間違っていた––––––亜空間霊界軍は魔軍が亜空間霊界に到達するのを手をこまねいて待ってはいなかった。
辺境地域方面の空が燃えるように赤く染まった時、カルラ艦隊は魔軍の船団を迎撃すべく発進した。千五百年前の戦いでは、魔軍を独力で相手取る力がなかったカルラ族は、防衛線を鬼界の鬼閻城の線まで引いて、鬼軍とともに魔軍を迎え撃つしかなかった。その結果カルラ族の住む鳥界の森は魔軍の手で焼かれた。しかし、今回カルラ族は魔軍が鳥界の森に入る前に、辺境地域で撃退する構えだった。
前回の魔族との戦いで大きな損害を被ったカルラ族は、この千五百年の間に飛躍的な進歩を遂げていた。
カルラ族の艦船は、母艦も小型の単座戦闘機も亜空間移動エンジンで高速で飛ぶことができ、高速連射できるレーザー砲を備えていた。魔族の妖力に科学力で対抗する準備ができているカルラ軍は自信に満ちていた。
千五百年前の戦いで人口の約半分を失ったカルラ族は、今回は魔族にその借りを倍にして返すつもりだった。
各母艦は戦闘域に入る前に、多数の単座戦闘機を発進させた。大船で攻めてくる魔族に対して、小回りが利く小型機で戦うのはカルラ族が伝統的に用いてきた戦法だ。
編隊を組んだ単座戦闘機を前面に出したカルラ艦隊が辺境地域に入った時、辺境の空は本当に赤く燃えていた。空を焦がしていたのは火を吐く魔族の大船団だった。
炎に包まれた船に乗って攻め寄せてくる魔族は焼魔に違いなかった。
しかし、カルラ族は怯まず、燃える船団に向かっていった。
カルラ艦隊の旗艦に乗艦していた衛門は、燃える魔族艦隊をセンサーで走査した。衛門は手早く次から次へと魔族の船を調べたが、どの船にも生きたものの反応を見出せないので訝しく思った。
生命反応がない者が操っている燃える船––––––それが何を意味するのか。自動操船なのか。亜空間の経験がなく、魔族に遭遇したことのない衛門にはにわかに判断がつかなかった。
カルラ族の単座戦闘機の群れが、火を吹いている魔族の船団に襲い掛かった。レーザー砲の橙色の光が槍のように船体を突き刺して無数の穴を開け、羽型の櫂をずたずたに切り裂いた。
カルラ族の戦闘機が魔軍の船に群がって攻撃しても、なぜか敵は反撃してこなかった。
船体に穴を開けられた魔族の船はバランスを崩し、燃えながら次々と落下していった。
ドウンッ
カルラ族の母艦も大型のレーザー砲の砲門を開いた。魔軍の船団は外しようのない標的で、強力なレーザー砲の照射でいとも簡単に爆発し、粉々に飛び散った。
おかしい。なぜ反撃してこない––––––
何かの罠か––––––
とにかく攻撃の手を緩めるな––––––
カルラ族の間で通信が飛び交った。
カルラ艦隊は敵の反撃がこなくても手を抜かなかった。相手は妖力を持つ魔族なのでいつ何が飛び出すかわからない。カルラ艦隊は全力で攻撃し、魔族の船団を徹底的に破壊し撃滅した。
魔軍の船は最後の一隻まで撃墜され、カルラ族は千五百年前の恨みを晴らすことができたように思われた。
しかし、勝利と呼ぶには余りにも手応えが無く、誰もが何か落し穴があるのでないかと疑った。カルラ族は理屈に合わないことは信じない。
なぜ魔軍は反撃してこなかったのか––––––原因を究明するために、カルラ族は地上に降りて墜落した魔族の船の残骸を調査した。
衛門も調査に立ち会ったが、魔族の船を炎上させたのは、魔族そのものが原因だったことが判明した。焼魔は死ぬと自ら発火する。何らかの理由で乗員の焼魔が死んで発火したために、それが火災を引き起こしたのだ。
即ち魔族の大船団はカルラ艦隊が攻撃する前に、既に自滅していたのだ。
いったい何者が焼魔を殺して発火させ、結果として魔族の船団を炎上させたのかは大きな謎だった。カルラ族は、何千年もの間姿を消していた降魔軍が依然どこかに存在していて、焼魔をその強力な妖力で殺したのではないかと想像した。
カルラ艦隊の勝利と魔族船団の謎の炎上の報告は、ただちに亜空間霊界に伝えられた。
亜空間霊界の上空に待機していた龍軍は、勝報を聞いて地上に舞い降り、霊山龍神宮もいったん戦闘態勢を解除した。
一方、カルラ艦隊とともに辺境地域にいた衛門から、慎吾あてに魔軍を撃破した者の探索を支援して欲しい旨メッセージが届いた。衛門は自分のセンサーでは広域をカバーできないので、慎吾のワームの力を借りたいと言ってきたのだ。
慎吾はカルラ艦に乗り込み、衛門が待つ辺境地域へ向かった。
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