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気になる彼女はあちこちデカい  作者: 新浜ナナ
9/19

第9話 俺は不機嫌だったらしい

 バチン!!!

 選手同士の衝突音が響く。

 近くへ来た選手の荒い呼吸音や足音が響く。



「一番前って臨場感あるね・・・・・」

「そうでしょう?!」

 フフンと得意げに言う顔がドヤ顔だ。ちょっと笑ってしまった。


「席の上の方から見ると全体が見えてゲームの流れが見やすかったりするんですけど、私は断然最前列派なので!」

「うん。」

 この為に先に行って並んでいたのか。なるほどな。

 空席もあるけど、前列の方は空きないし、結構人気あるんだな、ラグビーって。


「初めて観る人には最前列の方が好きになってもらえるかな、と思ったんですけど後で上で見てみます?」

「ここで良いよ。一番前で観たかったから朝から並んだんでしょう?」

「えへへ、そうです。選手の表情も見られたりするし、迫力がすごいから前が好きなんです。」


 色々と説明してくれているその楽しそうな表情を見るのは好きだが、先ほどの光景と照らし合わせる。


「ガテン系好きって言ってたね。」

「何です?」

 ちょうど歓声が上がって聞き取れなかった様だ。

「いや、何でもないよ。」

 繰り返す事でもないか、と思わずごまかしてしまった。


 なるほど、自分はタイプ外だったと言う事か。


 今まで付き合った女性はあからさまに好意をぶつけてくる事が多くそれに慣れていたから自分にさほど興味を持たない女性がいる事にこの前自覚したはずだったが、今また軽く衝撃を受けている。


 まじで自意識過剰野郎だな。恥ずかしいわ。

 自分のアホさ加減に落ち込んできたな。はは・・・



 落ち込んでいても試合は勝手に進んでいくわけで、目の前でスクラムが始まろうとしている。

 ふっと横を見ると、完全に目がハートになっている彼女を見てしまった。

 はぁ、俺も結構胸筋とか鍛えてるのにな。



 ********************


「ん~~~!!」

 しずかさんが両手を目一杯上に上げて伸びる。ずっと座っていると体固まるよな。

 でも、その動き結構胸強調してるよ?

 他の男にそれ見せたくないんだけど。


 とは言えず。

「もう1試合あるんだっけ?」

 たった今第1試合が終わったばかりだが、もう1試合残っている。


「そうです。同じチケットで2試合観られるんですよ!」

「すごいね。チケット代安すぎない?」

 ¥1800は本当に安いと思う。ただでさえ安いのに、彼女はチームのファンクラブに入っている為これより安くチケットを手に入れているらしい。

 本人のみ有効なので、俺は正規の値段になってしまうと謝られた。いや、充分安いから。


「もう少し高くても良さそうですよね。」

「そうだね、まぁ需要と供給のバランスの見極めは難しそうだけど。」

 人気はありそうだが、見づらそうな場所の空席は目立った。値段を上げると新規顧客の獲得を得られない、と考えているかもしれない。


「それより。さっきの試合、ほぼ時間通り終わったから次まで時間結構ありますよ?何か買いに行きます?お酒とか。」

 ラグビーの試合は時計上90分だが、重い反則や重篤な怪我の場合、レフェリーが時計を止める事があるらしい。

 1時間半で終わる事は珍しいそうだ。確かに先程の試合はやや一方的な試合だったかもしれない。


「いつもどうしてるの?」

「私は大抵スタバ行ってます。」

「そっか、今はお酒よりコーヒー飲みたい気分かな。」

「じゃぁスタバ行きましょ!」


 ひしめく人々の合間をうまくぬって正門から外へ出る。

「こんなに人いるとは思わなかった。」

「結構人いるでしょう?」


 はぐれない様に、と手をつなごうとしたが、この状況に慣れているのか、スイスイ先へ進んで行かれてしまう。

 く・・・俺の左手の立場・・・!


「何飲む?」

 門を出て少し歩き着いたスタバで注文を聞いた。

「低脂肪のカフェモカ・・・って自分で頼みますよ?」

「いーよ、ついでだから。」

「私払います。」

「いいって。」

 奢る事でしかメンツを保てないってどうかとも思うけど。


「ありがとうございます・・・」

 強く言ってしまったので、微妙に納得していない顔してるな。口尖ってる。



 ********************


「面白かった。」

「ほんと?!良かったです。」


 2試合目は面白かった。両者拮抗した展開で初心者でも楽しめた内容だった様に思う。

 彼女の推しチームとやらが勝った。1試合目と違って必死に応援する姿がいじらしかった。


 また観てみたいと思ったが、選手を見る彼女の目が時々うっとりするのは見たくないかな。



「さて、夕飯兼デザインの打ち合わせですけど、大丈夫ですか?体調とか。後日でも良いですよ?」

「何も問題ない。」

 帰らそうとしていると思って少しムッとしてしまった。


 自覚はなかったが、

「・・・そんなに機嫌悪いとゴハン行きたくないんですけど。」

「え・・・!?あれ?今機嫌悪かった?」

 結構顔に出てしまった様だ。いつも嫌な状況でも営業スマイル出るはずなのにな。


「はい、つい先ほどまで。たった今いつもの亮さんになりましたけど。」

「全然気付けてなかったや・・・ごめん。」

 手を口元にあて目を瞑った。

 は~・・・自分らしくないし、男らしくない。





 少し歩いた所の居酒屋に入ったら同じ様にラグビー観戦帰りらしき人達が多数いた。数人は知り合いの様だ。遠くから手を振っている。


 道行く先でも、「しずかちゃん!」と何度も声をかけられていた。

 連れがいる事を考慮してか、挨拶程度ですぐ別れていたが、おじさん達は彼女と話したそうだった。

 彼女はおじさん達に大人気だ。基本笑顔だし、人懐っこい感じがするから納得ではある。


 おじさんだけなら何とも思わないが、年が近そうな体格の良い男性が数人来店した時にまた驚かされた。

 お互い親しげに挨拶を交わしている。言葉にこそ出していなかったが目が「格好いい♡」と言っている。


「彼らは?仲良さげだね。」

「引退した元選手達です。チームに残ってスタッフをしてたり、社業専念したりしてるんですよ。選手の時から何度も話した事あるので顔見知りなんですよ。」

「恰好良いね。」

「あ、男性から見てもそう思います?恰好良いですよねぇ。」


 くっ、聞くんじゃなかった。これ以上ラグビーの話題を続けてたら俺のHPが減る。

 俺も鍛えている方だが、あそこまでの体格ではない。あちらは仕事としてあの体格なんだから比べる必要はないのに、何だか男として負けている気分になってくる。



 強引にジャケットのデザインの話しに変え、素材を一緒に探しに行く約束を取り付けた。

 一人で探しに行くと言っていたが、俺が気に入らなかったらどうするの?二度手間になると申し訳ないから一緒に行くよ?と言いやんわり押し切った。

 それもそうか、と納得したみたいだったが、言いくるめられているのに気付いていないので変な男に騙されるんじゃないかと心配になった。


ラグビーのチケット代金現在は違います。¥2000かな?少しだけ値上がりしました。

ワールドカップ後のラグビートップリーグの試合、秩父宮会場はほぼ全席埋まってました。とても良い盛り上がりでしたが、事件とコロナの影響で途中で全試合なくなってしまいました。

試合再開したらまた盛り上がって欲しいなあ。

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