第18話 彼女の香り
ブクマありがとうございます(*´▽`*)
「少しだけ待ってて!」
と玄関先で待たされる。泊まる予定ではなかったから部屋を片付けたいんだろう。
「もう良いよ!」
5分もしない内に廊下からぴょこっと顔を出し案内される。
「あれ・・・?もしかして家より広くないか?」
長めの廊下を進んでリビングへ出た。角部屋だからか窓が三面にあり明るい室内だ。
家具も低いから余計に広く感じる。
「どうだろ。廊下の分広いかもね。」
リビングと・・・隣の寝室も含めてもうちより確実に広いだろう。
「へ~・・・・・意外。きれいにしてるのは意外じゃなかったけど、カーテンとかピンクかと思った。」
玄関で少ししか待たされなかったから基本的にいつもきれいなんだろう。
良く考えたらピンクの服を着たのは一度しかなかったが、全体的な雰囲気で勝手にピンクのイメージを持っていた。実際はサックスブルーのカーテンで清潔感が出ている。
「テーマはおしゃれイケメンの部屋だから。」
人差し指を立ててドヤ顔で言ってくる。
「うん、イケメン住んでそうだわ。」
ブルーと木調の家具で西海岸風のインテリアでまとまっている部屋だった。
「でしょ~?」
ふふふ、とほほ笑む彼女の後ろにぬいぐるみを発見した。
「あ、でもかわいらしい物発見。テディベアか。」
「あそれね、」
そう言ってテディベアの背中をベリベリ音を立てて何かを取り出した。
「え、ホラー?」
「これ繰り返し温められるホッカイロなの。これレンチンしてお腹に戻して、今日みたいな時とか抱えてテレビ見たりするんだよ。」
「その図は何だかかわいいわ。」
浮かぶ。シュン、としてソファに座り込んでいる姿が。
ソファに座ってくつろいでて、と言われたが、花の手入れをしたりお湯の準備をしている姿を眺める。
「ずっと見られると落ち着かないんですが・・・」
「ん~?ちゃんと生活してて、良いな、って思って。」
一緒に住んだらしずかとなら心地よく過ごせる気がした。
はい、とドリップで淹れられたコーヒーを渡された。
「おいしい・・・ありがとう。」
「ううん、こちらこそ昨日からお世話になりっぱなしで。色々助けてくれてありがとう。」
「家まで上げてくれたんだから、お世話のし甲斐があったかな。」
何となくしずかの俺への好意も確認出来たしな。
コーヒーを飲んだら落ち着いてゆったりしたくなった。
「しかし、ここ居心地良い部屋だな~俺も泊まってっちゃおうかな?」
「・・・・・いいよ。」
「えっ!!!?」
まじか。泊まって良いのかよ!
「その代わりほんとに何も出来ないよ。まだ生理中だし、お布団も亮さん家と違ってシングルだから一緒になんて寝られないからね。」
「あああ・・・そうだった・・・」
心底がっくりして項垂れた。好きなコが目の前にいるのに手出せないとか地獄だろ!
********************
「私は具合悪いので夕飯を作りたくありません!」
唐突にそう主張してきた。体が辛いのに料理なんてさせないよ。
「全然構わないよ。そしたらどうしようか。食べ行く?出前?コンビニ近くにあったよね?」
送る途中でコンビニや居酒屋は数軒目に入っていたので知っている。
「もう外出たくないから出前にしよ。」
そう言って彼女はスマホを開いて調べ始めた。
「これは~?」
床に座っていた彼女はソファに座っていた俺のすぐ横にやってきてぴとっと腕を付けて画面を見せてくる。
急激になついてくれるのは嬉しいが・・・
あ~まじで何も出来ないの辛いわ。
「お風呂先入って。」
出前を食べ終え少し経ってから促された。
「あー着替え、なんてないよね?」
こちらも泊まるつもりではなかったので着替えなんて物は何もない。
そう言うと思案顔をして隣の部屋からTシャツを持ってきてくれた。
「半袖だけど、暖房入れるから。」
「ありが・・・・ねぇ、これサイン入ってるけど良いの?」
渡されたTシャツは大き目でサインが入っている。これはもしかしなくてもラグビー選手のTシャツなのでは・・・・
「男物それしかない。あ、サイン入ってるけどちゃんと新品だよ。イベントでもらったの。油性で書いてもらってるから気にしないで。」
「うん・・・これしかない事に逆に安心した。」
昔の男の残したTシャツじゃなくて良かった。
風呂場で使い方の説明を受けてる際、シャンプー等が何種類もあり用途によって使い分けてると聞かされた。
しずかの髪がきれいなのはそういう背景もあるんだろう。
入れ替わりで彼女が風呂に入っている間は平常心を保つ事に努めて、普段見ない癒し系猫動画を見まくった。
あ~これこれ、こんな感じだよな、しずかって。
と、たまたま見つけた白くてふわふわなスコティッシュフォールドの猫を見て思う。
色白で髪=毛がふわふわしているのが、正に!て感じ。
風呂から上がって戻ってきた彼女がテレビ見てなくて良かったと言うので
何で?と聞いた瞬間ドライヤーを使いだした。
リビングでドライヤーするんだ。
一瞬びっくりしたが、まぁそれぞれやり方あるものだよな。ていうか、
「それさっき貸してくれたやつより良さげなドライヤーだね。」
「うん~これ私専用。温度調節が20℃毎に出来るの。お高いので誰にも貸しません!」
「なんだそれ。」
お互いほほ笑み合う。こんな何気ない瞬間で幸せを感じるとは・・・
髪を乾かして終えたしずかが髪を梳かす為ブラシを取りに行ったりで目の前をウロウロしている。その度、
「良いにおいがする。」
「シャンプーとかボディオイルのにおいだと思うよ。でも、」
自分の横へ座り胸の近くへすり寄り匂いを嗅いできた。
「亮さんも同じにおいだね。」
大き目のVのニットを寝間着にした彼女が長い袖を口元に当てて笑う。
・・・・・・・・・うふふ、じゃないから。
「全く、このコは・・・」
「ん?」
小首をかしげるのももうわざと煽ってきているとしか思えない。手を出して来ないのわかってるからって油断しすぎだろう。
「キスしたい。」
「ぴゃっ!!」
肩を跳ねさせ驚いている所も猫っぽいな。
「りょ、亮さんキス激しそうだから嫌。」
「どんなイメージなんだよ。優しくするから・・・」
見つめても拒絶が見られないから返事を待たずにしずかを引き寄せた。
サラサラの髪の間に左手を滑らせ後頭部を抑える。顔ちっちゃいな、とは思っていたが当然頭も小さいな。掌に収まるんじゃないか?
なんて考えつつ唇の位置を少しずつ変えてキスを重ねる。
彼女は目も口もキュっと閉じたままで肩をすくめて、自分の胸の前で両手は拳を作っている。まるで手錠をかけられたみたいだな。
その姿に少し背筋がゾクっとしもう少し攻めてみようかと思いついた。
唇から頬、耳へ。耳も何か所もキスを重ねる。びくっと肩が揺れて
「っふ・・・・・」
たまらず声が漏れた様だ。きっと耳が弱いんだろう。
良い事を知ったと内心ニヤつきながら耳朶から首へ、同じ箇所を何度もキスを重ねて肩へ降りていく。
キスが鎖骨まで到達しようとしたその時、
「りょ、亮さん、もうダメ。終わりっ。」
と制止された。
「何でだよ、もうちょっと・・・」
「本当にダメ。やめて。」
納得出来ないぞ、と不満顔でしずかを観察すると首筋に色づいている箇所を見つけた。
きっと明日には彼女も気づくだろう。
いや、まぁ跡着く様にはしてたし、確信犯なんだけども。
白くてふわふわなスコティッシュフォールドと言えば・・・
〇ムさんです♡