第17話 添い寝
「え? え?! あれっ?!」
ん・・・・・何か布団めくれた?
「ん・・・もう起きたの?」
何時だ?薄目でベッドサイドの時計を確認する。
「えっあの、あれっ。」
しずかが何か慌てている。
ふぁ・・・何か良い匂いするな。寝ぼけながら両腕でしっかり彼女の頭を抱える。
「抱き心地良さそうだったのでつい・・・」
眠い、もう少し寝たい。
「まだ6時前だからもう少し寝てなよ・・・」
よしよし、とおでこにキスをした。
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がっちり腕でホールドしたしずかがどうやらその後寝れなかった様で、結局7時前に二人して起きた。
先にベッドから出てキッチンでお湯の準備をしていたら、一緒に寝ていた事が不服だったのか、小動物みたいに吠え出した。
昨日、先にベッドに入るしずかに俺はソファで寝るとは説明していない。
「客用布団ないし、ソファだと寝られないから。文字通り添い寝だけだよ。」
嘘だ。客用布団はある。だが事前に干していなかったし、ソファで寝れない事もないが、一緒に寝るくらいしても良いだろう、と勝手に判断した。
寝顔を近くで見たかったのもある。
「そうなんだろうけど、そう言う事じゃない!」
キャンキャン言ってるな~。
「何か今日ポメラニアンみたいだね。」
「ポ、ポメ?!」
「キャンキャン言っててかわいいわ。あ、柴犬カットの方のポメね。」
怒るかと思っていたが、
「ポメは好き♡」
まんざらでもない様子だ。
「あれ、怒るかと思ったけど。そう言えば初期段階で猫に似てると思ってたんだよね。なんだっけな、垂れ耳で目がまん丸の・・・・スコティッシュフォールドか。」
実家で飼っている猫だが、家を出てから飼いだした猫なので品種までぱっとすぐ出てこなかった。
「私スコに似てるの?」
「ふふ。機嫌直してくれた様で良かった。」
嬉しそうだな。怒り始めたら今後はこれでなだめよう。
それより、
「昨日よりは顔色良いけど、それでも良いとは言え無さそうだね。」
「暖かくして、薬も先飲めば何とかなるかな?」
「ん~じゃぁ、もう少し日が高くなってから送っていくよ。」
「はい、ありがとうございます。」
もう少し一緒にいられるのは俺も嬉しい。
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彼女は昨日のスープと残っていたゼリー。
俺はハムエッグとトースト、トマト、コーヒーとしっかり朝食をとった。
ごちそうさま、と彼女が言う。
「はい、どういたしまして。俺シャワー浴びてくるからゆっくりしてて。」
一緒に寝たのと、彼女の体温が高かったのもあって汗をかいている。
「う~私もシャワー浴びたい。」
「お、じゃぁ一緒に入る?」
「入りません!!」
「即答か~わかってたけど寂しいわ。」
ははっ、と軽く笑って浴室へ行く。
シャワーを浴びながら昨日からの出来事を考える。かなり気を持ってくれてる、と判断しても良いのかな。
何か進展すると良いけど、なんて淡い期待を持った。
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家でまったりし、お昼を軽く食べて午後になった。
他人の家でずっといさせるのもかわいそうなので、俺はかわいそうだが、いよいよ送る事にした。
好きな人と一緒に長くいられるとはこんなにも幸せだっただろうか。
前回送った際、ばっちり道は覚えた。
「道覚えてるの?」
「うん、そうだね。そんな難しいルートじゃないし。」
好きな人じゃなかったら覚えないけどな。
横目に写る彼女は感心した様な表情をしている。
送る間ずっと口数が少なかった。まだ辛いんだろうか。
「ほい、お疲れ様。本調子じゃないならゆっくりしなよ。」
「うん、ありがとう・・・・・」
「気にしなくて良いから。」
「・・・・・・」
あれ、降りないな。
「しずか?」
夕方だからなのか、彼女の顔が夕日で紅潮している。
「あ、あの・・・お礼にコーヒー淹れたら飲んでくれる?」
おずおずと左袖を掴んで上目遣いでそう言った。
「くっ・・・・天然が・・・!」
「え?」
たまらず頭をハンドルに突っ伏した。そのまま顔を左へ傾け返事をする。
「じゃぁ、俺もお言葉に甘えようかな。」
そう答えたらほっとした様な笑顔を向けた。
なんだその笑顔!めちゃめちゃかわいいだろ!!