第16話 確信
ブクマありがとうございます!!(*´▽`*)
「キッチンで吐いてごめんなさい。」
こちらへ体を向けているが、まだ心配なので背中に右手を回しさすっている。
「それは気にしなくて良い。いつもこうなの?」
いつもこうなるなら心配だ。
「いつも吐くわけでは・・・・・今日生理なの忘れてスカート履いてきて足元冷えてひどくなったのかも・・・・」
「ダメじゃん。」
うっかりさんだなぁ。
「だって、今日亮さんに会うし、ちょっとおしゃれしたかったし・・・・・」
は?何それかわいいんですけど。しかも口まで尖らせて。
思わず両手で顔を覆ってしまった。
「はぁ~~~~、全く。」
吐き気が納まった事への安堵なのか、自分への好意を確かに感じた事への安堵なのか、気付いたらしっかり抱きとめていた。
何かもうこれ、告白しても上手くいくんじゃないか?いや、待てよ。まだ体調万全じゃないからこんなかわいい事言ってるのかもしれない・・・・
「えっと・・・・」
彼女は体を固くして戸惑っている。
今はただ体調が良くなるのを待とう。焦らなくてもきっと大丈夫だ。多分。
今後の関係の事はゆっくり時間をかけても良いかもしれない。
「りょ、亮さん。」
ドンドン!
苦しい、と抗議されている。ちょっと強く抱きしめてしまった様だ。
「心配かけた罰でしばらく家で休んでいく事!」
このまま帰せるわけがない。両肩を強く掴みそう告げた。
冷えるならまずはスカートじゃなくて俺のスウェットパンツとか貸すか。
「はい・・・わかりました・・・」
「素直で宜しい。スカートで冷えるならスウェットとか貸すけど、他に欲しいのある?」
「そしたら靴下と、ホッカイロ欲しい。腰に貼りたい。」
「わかった!吐き気がもうないならソファに座ってて。」
他に靴下とホッカイロを所望されたが、靴下は新品があっても、ホッカイロがない。
とりあえずスウェットと靴下だけ先に渡す。スウェットは洗ってあるから大丈夫だよな。
「はい、スウェットのパンツと靴下。靴下は新品だし、スウェットは洗ってあるから安心して。」
かなり呼吸が荒くなってる。
心配でそのまま見つめた俺も悪かったのかもしれないが、受け取り、小さくありがとうと聞こえたかと思えば、目の前で着替え始めやがった!
スウェット履いてからスカート脱ぐから下着なんて見えないけどさ。
「警戒心ナシかよ・・・まぁ今度で良いや。ホッカイロないからコンビニ行ってくる。ベッド入って寝てて。」
急に恥じらいなくなったな。いややっぱりいつもと違う状況だからなのかも。
今度改めて注意しよう。
「?? あ!その前にバスタオルも下さい。」
「何に使うの?」
いや貸すけどさ。
「シーツが汚れるかもしれないからお尻に引く。」
「汚れても洗うから気にしなくても良いよ。」
「私が気にするし、恥ずか死ぬので貸して下さい!」
はいはい、かわいいかわいい。
具合悪いけど噛みつこうとしてる姿にニヤついてしまう。
バスタオルを渡した後、頭をぐしゃりと小突いてからコンビニへ向かった。
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自宅マンション近くのコンビニへ入り、目当てのホッカイロを手にした所で考えた。
生理痛って何日か続くんだよな?今少し休んで全回復とかするのか?
車で送るにしても途中でまた吐き気して高速だと止まれないし・・・俺は構わないけど、車で吐いたら一生気にしそうだよな。
それに電車で帰すなんてのは論外だ。
・・・うん、泊まらせよう。
いや、邪な気持ちが何もないかと問われればそりゃあ少しはあるが、純粋に心配だ。
そうなるとお泊りセット的なのが必要か?あと、生理用品も揃えておいてあげれば悩んでも泊まっていけるかな?
そう思いサニタリー用品コーナーへ向かい焦った。
夜用?!
そっか夜使うんだから夜用か。じゃぁ日中は違うのか?
さすがにそこまではわからないぞ。しずかに電話して・・・きっと寝付いただろうからそれは止めよう。
なんて悶々としていたら若い女性の店員の姿が見えた。
くっ・・・仕方ない。恥ずかしいがそうも言っていられない。
「あ、あのすみません。ちょっと教えて頂きたいのですが。」
「はい、何でしょうか?」
「あの~・・・生理用品って夜寝る時は夜用ってのが良いんですか?」
「・・・・・・・」
すげー嫌そうな顔してるな!
セクハラと思われたら敵わない。すかさず、
「いや、今彼女が家で生理痛で寝込んでて、心配だから泊めようと思ったんですけど、種類がここまであるとは知らなくて・・・寝てるから起こしたくなくて店員さんに声かけたんです。」
とフォローした。それはもう饒舌に。
「あ、なるほど。そうですね、寝る時は夜用が必要かと思います。お泊りの予定じゃなかったのならこちらの昼用もご用意してあげると良いと思います。」
「あ、そうですか。ご丁寧に、ありがとうございます。」
俺の手元の化粧品お泊りセットを見て察知してくれたらしい。
「いえ、彼女さんお大事に。良くなると良いですね。」
いや、彼女ではないんですが。
ややこしいのでそういう事にしておく。まぁ?近い内にそうなるかもだけど。
今日用意したごちそうはきっと食べられないだろうな。軽いものを何か買って行くか。
部屋に戻って声をかけたが返事がない。ぐっすり眠っているようだ。
寝顔を見て安心したら腹が鳴った。そういえば昼飯食べてなかったな。
自分で作ったごちそうを自分一人で食べる事にした。
一緒に食べたかったなぁ。まぁまた今度作れば良いか。
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「しずか?」
ベッド端に腰かけるとちょうど目を覚ました。
「はい、貼るホッカイロ。」
ありがとうと小さく呟いた彼女は体を起こしつつ辺りを見回した。
「あれ・・・?今何時?」
「もうすぐ19時、コンビニから帰ってすぐ声かけたけどぐっすり寝てて。そのままにしてたんだけど、お腹は?すいてない?」
しずかは昼飯食べていないからな。
「・・・・お腹すいたけど、あんまり食べられない・・・・・」
「そう言うと思ってカップスープとヨーグルトやゼリーは買ってきたけど?」
ポタージュは牛乳とか入っているので、今回は避けた。
「!!!お母さん!!」
「誰が母だ。」
少しは元気出たのかな。リビングから入り込む灯りだけなので顔色まではわからない。
「こっちに食事持って来ようか?」
「ううん、リビング行く。」
「準備しておくからゆっくりおいで。」
「うん、ありがとう。」
お湯を沸かし始めたら寝室からしずかが出てきた。が、顔色はあまり良くない。
「もう今日はこのまま泊まっていきなよ。外寒いしまた具合悪くなるぞ。」
もうすぐ12月なので夜はだいぶ冷え込むはずだ。
「お泊りはさすがに・・・・」
目の前で着替え始めたりするのに、そこは頑なな。
「その状態で長時間車で送るのも心配なんだよ。」
「うう・・・だって、生理用品とかお泊りセットとか何もない・・・」
「はい。」
コンビニで買ってきた紙袋を手渡した。
お泊りの化粧品セットと歯ブラシ、生理用品が2種類入っている。
「え、夜用も?!」
「引くなよ!恥をしのんでコンビニの店員さんに教えてもらったんだ。俺より年下らしき女性の店員しかいなくて、怪しまれるの覚悟で聞いたんだ。」
実際まじで怪しまれたしな。
しずかを見ると袋の中をじっと覗き込んで考え込んでいる様子だった。
「あと、そんな状態の女性に何かしようなんて思わないから。本当に心配だから泊まってって欲しい。」
何も出来ないのもまじで辛いけど。
「はい・・・お言葉に甘えます。」
うん、素直に従ってくれたみたいだ。
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簡単な食事の後、お風呂はどうするのか、と聞くと足だけ洗いたいとの事。
浴室へ連れて行き、使うタオルやシャワーの使い方を説明していたら、両脇の裾辺りを引っ張られる感触と同時に背中に軽い重みがかかった。
「ありがとう。」
多分頭を背中に着けてるんだろうな。ハグしてくれたら良いのに。
裾にかかっている手首を掴んで前へ持って行く。勢い付けてしまったので鼻をぶつけたみたいだった。
「どういたしまして。」
重ねた掌が熱い。甘えてくれて嬉しいよ。心の中でだけ呟いた。
スーパー彼氏