第14話 期待
マンションから出て反対側へ進む。駐車場へは駅方向とは反対にあるためだ。
「もしかして車で送ってくれようとしてますか?遠いし、電車で帰りますよ?」
駐車場へ着いたら察知して先に言われた。
そんな目を真っ赤にした状態で帰すわけがない。
「そんな目してて、電車で帰せないよ。責任感じてるから送らせて?」
小さく「別にそれくらい・・・」と聞こえたが、あえて聞かなかった事にした。
多少強引ではあったが、一応は納得してくれた様だ。
住所と何となくの道のりも教えてもらった以降は何も会話がなかった。
俺もどうすれば良いのか的確な答えが出ず、運転に集中する事にした。
集中した甲斐、と言うか道もそんなに混んでなかったので早目に最寄に着いた。
彼女の家付近は一方通行が多いらしく細かく教えてもらったら程なくして着いてしまった。
「ここか~」
通りより少し奥まった所にあるマンションを車内から見上げる。
「送ってくれてありがとうございました。」
「どういたしまして。お礼はお部屋でお茶で良いですよ。」
いつもの様に軽口を言う。
「付き合っていない人を家には上げません。」
うん、知ってる。ガード固いの最初からだったね。
「わかってる、冗談だよ。」
頭をなでながら言う。
「家まですぐそこだけど、気を付けて。今日はゆっくり休んで?前も言ったけど、ジャケットはゆっくりで構わないんだから。」
「・・・はい」
すぐ家に入ってくれて良かったのに車が見えなくなる所まで見送ってくれた。
嫌われていたら見送ってくれないだろうし、そもそも車に乗らないだろう。
期待して良さそうだな・・・・・
安堵と期待でニヤニヤしながら今来た道を戻り家路に着いた。
短いので本日は2話分公開でした。
明日は1話分の公開です。