第11話 欲求不満
素材の買い出しデートの後、気になって何度かメールをしたがまた既読が付かないまま数日経った。
これは、あれだな。
不具合で気づいていないんだろう。・・・そう思いたい、と言うのもあるが。
もう電話した方が良いな。
『プルルルルルル・・・・』
ブチっ!!
は?!切った?!
すぐに今電車に乗っていて電話に出られなかったという理由と、最寄り駅に着いたら折り返す旨と、メールに気付けなかった事の謝罪のメールが来た。
理由は明確で彼女が悪いわけではないが、何となくイライラしたまま電話を受けてしまった。
『亮さん?ごめんなさい、また気付けなくて。』
「いーよ、もう。気にしてないから。』
嘘だ。めっちゃ気にしてた。
未読スルーなんて気にする側じゃなかったのに情けない。
「週末、どうしてるかな?と思って」
会いたいんだよ。
『今週末は仮縫い完成させたいのでどっちも家で作業です。』
「・・・・あ~それって、俺がそんなに急いでないって言ってもやる感じ?」
前も言ったけど、俺は納期を焦らせてはいない。
『最近遊び過ぎてたんで、ちょっと真面目に作業したいです。』
「そっか、わかった。」
依頼主の俺がゆっくりで良いと言っているのに、予定を空けてくれなかった事にあからさまにイライラして電話を切ってしまった。
切り際何か聞こえた様な気もしたが・・・・・
「はぁ・・・・・」
大きく溜息をついて、スマホを見つめる。
「片山様?」
今日は仕事が遅くなり、会社のビルを出てすぐの所で電話をしていた。
声の主へ顔を向けると近くにある取引先の秘書の及川さんがこちらを窺っていた。
「どうされました?大きな溜息をついて。もしかしてデート断られましたか?良かったら私がお相手致しますよ?」
クスクスと上品に笑い、でも目をしっかり見つめて言ってくる。
彼女は俺が今まで付き合ってきたタイプに良く似ている。スレンダーで背が高い。
しずかさんとは真逆だ。彼女は背が低いし、あちこちがデカい。
及川さんは、モデルではないが、確かロシアのハーフかクォーターだったか。とても綺麗な目鼻立ちをしている。
そう言えば、元カノと別れてからシてないな・・・・・
思い出したら良からぬ言葉が口から出た。
「相手してくれるんですか?食事の後も?」
してはいけない事だとわかっている。
最近しずかさんの気持ちがなかなかこちらに向かない事にフラストレーションが溜まっていて、それを目の前の彼女にぶつけようとしている。
及川さんは少し驚いている。断ってくれても良い。
「あら・・・ではお付き合い致しますね。」
ニッコリとほほ笑む姿が魔女の様だと思ってしまった。
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事の後、先にシャワーを浴びた俺はベッドに腰かけスマホを見ていた。
しずかさんからは何も連絡が来ていない。
すごく寂しい、余計に彼女の顔を思い出してしまった。
途端に罪悪感が沸き上がってくる。どちらに対してもだ。
自分のした事を忘れてこのまま朝まで寝てしまいたかった。
だが、今日は平日だし、この後は退室しなくてはならない。
一緒に出て人伝いにしずかさんに彼女と一緒の所がバレるのは避けたい。
なんて最低な野郎だと思ったが、慌てて支度をする。
バスルームにいる及川さんに「明日、朝早いので。申し訳ないです。」
と声をかけ、部屋を後にした。
マジで最低だな、俺。
本日はもう1話公開します!