片恋戦士、ここに誕生!
「君、起きたまえ」
「…あ、あなたは…」
彼女は黒いロングコートに身を包む仮面を付けた銀髪の紳士に支えられながら立っていた。
「変態…?」
「違う。黒いロングコートに身を包む仮面を付けた銀髪の紳士だ」
「ここは屋上ですか?なんでこんなところに…」
「ワタシが怪物のヘドロから君を助けたからさ」
「ってことは、あなたが怪物を倒してくれるヒーローですね!?」
「違う。ヒーローは君だ」
「はっ…?」
「君がヒーローになるんだ、今から」
「えええ!何言ってるか分からないんですが!?」
「分からなくていい、説明は後だ」
「いやいや今してください!」
「助けたいんだろう?あの少年のことを。ならば早く受け入れた方がいい。
君が抱く彼への片想いは、ここにいる誰よりも強かった。あの怪物を倒すにはその強さが必要なんだ」
「ちょっとなんで片想いって知ってるんですか!」
「ずっと見ていたからからな。さあ、このヘッドフォンを装着すれば、君は怪物を倒す【片恋戦士】へと変身する。
覚悟はいいかい?さくら少女」
「あなたの話がどんなに嘘臭くても、私は神田くんを守りたい!!」
紳士からハート型のヘッドフォンを受け取ると、勢いよく頭に装着した。
さくら少女は光に包まれる。
『片恋パワー80、90…100%!パワー満タン!変身!』
ヘッドフォンから聴こえる機械音
ジワジワと身体の底から湧き上がる熱
(私…、本当に変身している……!!)
「恐怖さえ打ち破る想いの強さ、見込み通りのようだな」
彼女は光に身を任せ、片恋戦士へと変身したのだった。