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参上!シルフィア団!!  作者: JULY
第一幕『快盗の誓い』
19/23

19話 未定

「一キロメートル魔導走に出場する選手はこちらに集まってください~! !」

「よし」


 競技場の裏手、選手たちの控え場にクレイが出場する競技者たちが集められる。いよいよ入場だ。彼はこの競技にでるために今までの人生を費やしてきた。勝って実業団のチームに入る、そうすれば夢も叶い、弟妹たちの生活費も払うことができる。絶対に負けることができない試合だ。


 スタッフによる点呼が行われ、最終確認が行われ前の競技の終了を待つ時間。競技服の裾を掴みじっとりとした手汗を拭う。そんなときクレイに声をかけてきた人物がいた。


「どした、緊張してるのか?」

「ノレド」


 同じ競技に出場する彼は最後までクレイの記録に迫ってきていた。悪魔が潜むと呼ばれる本番では何が起こるか分からない。自己ベスト記録では勝っているものの、本番でも勝てるかどうかはまったくの別問題だ。


「お前には悪いが、この大会俺が勝つぜ? プロを目指してるのは何もお前だけじゃねえんだからな」

「……うん、お互い全力で」


 クレイはいい勝負をしようという意を込めて手を差し出した。だがノレドは、その手を一瞥しただけで握り返すことはなくそのまま離れて行ってしまった。クレイは出した手をしまい静かに前を向いた。


 それからどれぐらい時間が経っただろうか、耳をつんざくような歓声がスタジアムの方から聞こえてきた。自分たちの競技がアナウンスされたんだろう。魔導走の短距離は魔術競技の中でも見ごたえがあって人気が高い。他の競技者には悪いが、今大会でもっとも観客たちが楽しみにしてると言っても過言ではない。


「それでは、入場お願いします」


 先頭をあるく選手たちが次々と競技場の中に入っていく。より一層歓声が大きくなって、いよいよ始まるんだという実感が湧く。クレイの目の前に並ぶ選手の数が徐々に減り、ついに自分が入場する番だ。


「見ててね、母さん」

「「「ワァアアアアアアアッ!!!」」」


ゲートをくぐりフィールドに入ると、自分たちを囲むように配置されている観客席から、歓声が自分に向けられていると感じた。全方位から包むように聞こえてくる声は、期待と情熱。すばらしいプレイを待ち望む熱い声だ。


 それからゆっくりと中央に進み、他の選手たちと合流。遅れて入場してきた選手たちを待つ。それからほどなくして全選手の入場が完了する。時間にして数分だったが、クレイにとっては何時間にも及ぶ体感時間だった。


『全選手の入場が完了しました。これより競技場が展開されます、選手の皆様はご注意ください』


 場内アナウンスが始まり、再び会場が熱気に包まれる。この競技が人気な理由の一つだ。フィールド内、選手たちがいる中心部が地響きを鳴らしながら、宙にせりあがってく。


 何度見ても見慣れない光景だ。あっという間に自分たちがいるフィールドが観客席の高さまでのし上がり、更に上昇する。上昇が終わると、今度はフィールドから魔力の地面と呼ぶべき半透明の巨大な楕円形の場が宙に形成される。


 空中に浮かんだ競技場の下、観客席の目線には巨大な画面が四面に浮かび上がり、観客たちはすぐ頭上を走る選手たちを見てもよし、中央に置かれた画面を見てもよしの大迫力な応援が可能なのだ。


『魔力トラック生成完了、第一走者は位置についてください』


 あれよあれよという間に、第一走者五人がスタート位置につき審判の合図によって一斉に走り出す。これは魔導走のため、一キロと言っても一瞬で走り終わる。飛び出さないように盛り上がった傾斜のついたコーナーを曲がり切ってあっという間に選手たちが戻ってくる。歓声を背に受け第一走者たちが次々とゴールの帯をきっていく。


 フィールドの下に投影されている巨大画面には、選手たちの走行時間と魔道具によって録画され再生速度を落とした映像が流れている。


「……」


 流石選ばれた選手たちだけあって全員が好タイムを出している。かろうじてクレイの自己ベストには届ていないものの、圧倒的に勝っているわけでもなかった。下手な走りをすればあっという間に抜かされるだろう。


「次、走る選手は準備してください」


 来た、そんなことを考えている間にクレイの番がやってきた。自分は第四レーン、外側だ。自己ベストを出した時も第四レーンで走った。魔導走のコースは遠心力で外にいかないよう、コーナーが外側に行くにつれて傾斜が傾くようになっている。


 外側に近づくにつれて傾斜がきつくなるため体力の消耗が激しい分、遠心力に負けずにしっかりとコースを踏みしめ速度を出しやすい。クレイの場合は速度と体力のバランス上第四レーンの傾斜が一番身体に合っていた。


 第四レーンを走ることが決まった瞬間、ガッツポーズでよろこんだぐらいだ。


「……」


 選手がスタート位置に着く。次の審判の合図で体内魔力を起動させ循環させる。一瞬、胸の中に潜む『コレクション』の力を引き出しそうになったが、すぐにそんな甘い考えを振り払った。自分の弱い心には絶対に負けない、そんな力に頼らないと勝てないほど自分は遅くない。


「ブーステッド……(魔力起動せよ)」

「……!!」


 強く短く息を吐いて全身に力を込める。体内に流れる全魔力を叩き起こし、働かせる。一瞬で起動した魔力は唸りを上げて身体に線を浮かび上がらせる。集中、歓声はすでに耳に入らない。深く息を吸い込み、前方、自分が走るレーンしか視界に入らない。


「……」


 神経を研ぎ澄ませ、スタートの合図を待つ。無理やり起こされた魔力たちが、力の出し場を求めて体内で暴れまわっているのを感じる。


 ――待ってくれ、今自由にしてやるから。僕も飛び出したい気持ちを抑えてるんだ、辛抱してくれ。


 ――まだか、早く、早く走りたいのにっ! !


「……ゴーッ!!」

「……ッ!」


 スタートの合図が出た、全身の筋肉に呼び掛けて身体を前に出す。ため込まれた魔力を爆発させるように 全力を開放。魔力がふんだんに流れ込んだ脚がコースを力強く捉える。すぐに第一カーブの傾斜がやってきた。さらに力を込めて坂を登っていく。速度を少しも落とすことなく頂点まで行き、下りに差し掛かる。


 ――調子は最高潮だ、どこまでも走っていけるッ


 下り坂をさらに加速させて降りる、魔力のおかげで脚の回転が追い付かないことはない。更に勢いを増したクレイは走る稲妻のように魔力の閃光を残しながら直線を突き抜けていく。全てが順調、そう思われた最終コーナーに差し掛かった瞬間、それは訪れた。


 ――行けるッ、このまま……!?


 コーナーの上り坂に足を踏みかけたとき、身体の異変に気が付いた。脚が、前に出なかった。それは周りから見れば誤差にも見えるだろうが実際に走っているクレイからはすぐに異変に気が付いたのだ。


 痛みや魔力の暴発なんかは感じない。走れないわけでもない、クレイは実際に今も全力で走っている。それなのに――


「明らかに、速度が落ちている……!?」


 思うように景色が後ろに流れて行かない。これだけ全力を出しているのに、体感的に全速の八割ほどしか速度が出ていないのだ。どういうことだと思ったが、それはどうやら他の選手にも起こっていたようで、直ぐに抜かされるといったことはなさそうだった。まだタイム的には自分が一位のはず……


 そんな不思議な現象が起きつつもクレイは走った。だが、観客のざわめきが起こったのもそれと同時だった。


 この時クレイに起こったことは自分でもわからなかった。クレイは全力で走っていた。魔力を伴った運動だ。仮に止まろうと思っても急には止まれない。それなのに、クレイは最後の直線、ゴールの手前で急に静止していたのだ。


 これまで身体に乗っていた風のような速度が嘘みたいに消え去り、ピタっと勢いがゼロになったのだ。


「……?」


 何が起きたのか分からない。自分は今ゴールしたはずだ、なぜ目の前にゴールテープがあるんだ? ゴールしてないのか?  それならまだ走らなくては――


 そう思い一歩踏み出そうとした瞬間、クレイの横を勢いよく通り過ぎていく者が。


「……あ」


 すでに背中しか見えないが一番最初にゴールテープを切った男、ノレドがざわめく観客たちに向かって勝利のポーズを取っていたのだった。



◆◆◆◆



 それからすぐに審判らは今の不可思議な現象について協議がかけられた。が、いくら競技場に設置された魔力を検知する魔道具を検査し、映像を見直しても。ノレド・グラドマが他選手について妨害魔術を行使した証拠は出てこなかった。しかも仮に彼が妨害魔術を使ったとして、競技場内で起こった運動エネルギーの消失ともいえる現象を誰も魔術論理で説明することができなかったのだ。


 となればそこから導きだされる結果はただ一つ、ノレド・ドラグマの勝利が決定したというだけだった。


「まさか……本当に宝持人が他にいるとは……」

「すぐに動くわよ、宝持人の正体は把握したんだし今すぐ奪いにいかなくちゃ……、エーシア? エーシアッ!」



◆◆◆◆



「……」


 負けた……、自分はあっけなく負けてしまった。クレイの中で何かがガラガラと崩れる音がした。もうダメだ、自分はおしまいだ。これ以上頑張ってももう……


 クレイの気持ちがどんどん落ち込んでいくのに比例して見た目にも変化が表れ始める。肉がボコボコと膨張し、手足が人間のものでなくなっていき――


「クレイッ!」

「……!」


 息を切らしながらやってきたエーシアはクレイに声を掛けた。彼は誰もいない物陰で、壁に寄りかかるように座り込みながら、身体を変化さえ始めていた。もうすぐ完全な宝魅人へと変貌してしまうだろう。


「呑まれちゃダメだッ! 自分を強く持てッ」

「負けたんですよ、僕は……もう何もかも」

「終わりなもんかッ! 思い出せッなんのために走ったのか!」


 エーシアは変わりゆくクレイに近づいて、胸倉をつかんで無理やり立たせた。まっすぐに目を見てクレイの心に呼び掛ける。


「お前が負けたのは、お前のせいじゃないッ! お前はよく走ったッ、勝ちだよッお前の勝ちなんだよッ」

「僕の……勝ち?」

「そうだッ、最後までお前は『コレクション』の力を使わなかったッ、正々堂々自分だけの力で走ったのだよッ」

「……そうだ、『コレクション』の力を使えばあんなやつなんかにぃ……」


 クレイの胸元が光だし、『コレクション』が目覚め始める。より身体の変化が加速し、手足は完全に人のものから変わってしまった。それは獣を想起させるような毛でおおわれた腕、そこから鋭く伸びた爪。脚はまるで俊敏に動くための獣のように地面を捕らえるスパイクが生え、筋肉が肥大化してパンパンに張っている。


「違うそうじゃないッ、お前は確かに結果は負けたかもしれないッ、でもちゃんと届いた相手はいるッお前の走りで心動かされた人がいるッ、俺もそうだッ」

「……ッ! ! そんなこと……」


 競技場内にて、選手の身体が異形へと変わっていく様子が観客席に映像として流れている。人々はどよめき指をさしては口々に化物だと非難し、口をそろえて言った。「あんな化物が一位を取らなくてよかった」と、間もなく大会の警備兵たちが変貌しかけているクレイの身柄を拘束し検査に掛けられるだろう。


 そうなれば『マリスコレクション』の存在が予定外のタイミングで世間に露呈してしまうだけでなく、完全にクレイを元に戻す手段が絶たれてしまう。


 エーシアがクレイを掴みながら目線を脇に逸らすと警備兵たちが集まりいつ拘束するか機会をうかがっていた。


「そこのキミッ、危ないから離れなさい!」

「ダメだダメだダメだ、それじゃお前を助けられないッ……早く……フィア!」


 そうこうしている間にもクレイの身体は少しずつ宝魅人のものへと変わっていく。完全に覚醒していないのはまだ彼の心の中の瀬戸際で耐えているものがあるからだ。その時、鈴のような声色と、涙ぐみながら震えている声が聞こえてきた。


「「お兄ちゃんッ!!」」

「……ったく遅いんだよ」


 フィアに抱きかかえられながら、下の客席から抱きかかえられてきた少年少女。クレイの弟妹だ。彼らは目に涙をこらえながら変り果てているクレイの毛深い身体に抱き着いた。


「キミッ、そんな子供を近づけて――」

『停止弾』

「なんだこれは――!?」


 フィアが黒と黄色のストライプが入った弾丸をセットし地面に撃つと、シルフィア団の紋章と共に光の帯が宙に浮かび上がりクレイたちを囲んだ。警備兵たちがその領域に近づこうとすると謎の力に弾かれてそれ以上先へ進めなかった。


「それは……?」

「暴徒鎮圧用を主とした新弾丸よ。あとであげるわ」


 フィアはさらっと新武装について語っているがそういうのはちゃんと共有して欲しいと思いつつ、エーシアは目の前の光景を笑みを浮かべながら見守った。まるでこれで勝利は確定したかのように。


「「お兄ちゃん……」」

「お前たち……どうして……」


 クレイは大きくなった手で二人の小さな肩を掴んで、しゃがみ込み目線を合わせた。


「兄ちゃん、一位になれなかったんだ……」

「うん、でもねお兄ちゃん、かっこよかったよ!」

「……え?」


 予想外の一言だったのかクレイの身体が止まった。不思議なものを見るように反対の弟の方を見ると。


「うん! すっげーかっこよかったよ!  俺もあんな風に走りたくなったよ!」

「――あ」


 その瞬間、クレイの脳内にとある映像が勢いよく流れていった。 それは、一人の男の子が走るきっかけになった出来事。母親に連れられて観戦した陸上競技。目の前を走る選手たちの情熱と、迫力に少年の目には光が灯った。


 その帰り道、母親にねだって買ってもらった小さな陸上靴。ボロボロになるまで街で走り回ったあの時の記憶――



◆◆◆◆



「今のは――」


 記憶の旅が終わり元の世界に帰ってくる。すると、二人の弟妹はヒシっとクレイに抱き着いていて、クレイの手にはとあるボロボロの靴が握られていた。


「どうして、この靴がここに――?」

「ようやく思い出したみたいだな。『本当に大切なモノ』を」

「あなたは……」


 気が付くとクレイの身体の変化はすっかり止まっていた。エーシアがその大きな手に握られている小さな靴に手を当てる。


「これをまたキミの心に戻せば、元の身体に戻せる。いいよな?」

「……はい、僕にはもう必要ないってわかりましたから」

「分かった」

『解錠弾!!』


 エーシアがシルフィアチェンジャーに『解錠弾』を装填し引き金を引く。銃口からは黄金色の鍵の形をした炎が噴き出した。


「「お兄ちゃん?」」

「大丈夫だから、すこし離れててくれ」


 クレイはぴったり張り付いて離れない弟妹たちを優しく引き剥がし、胸を開けた。エーシアはその空いた胸に優しく鍵を差し込み回す。


 クレイの胸が四角形の亀裂が奔る、エーシアはそれを優しく開くと中に入っている。靴型の『マリスコレクション』を抜き取ると、代わりに小さな靴を金庫の中に入れた。するとボロボロの靴は光の玉に変わり金庫の中を光で満たした。


 扉を閉めれば、カチッと施錠の音と共に、光の奔流がクレイの身体に起こっていた宝魅人の変化を元に戻していく。


「聞いてはいたが実際に元に戻れるとは」

「ウチの天才エンジニアの技術の結晶だから当然よ、それよりも……」


 フィアはエーシアが持っている片足だけの靴。魔力的な波動は感じない、なのに説明できない強大な力を感じる。本物の『マリスコレクション』であることの証左である。


「ねえ、ちょっとそれ貸して」

「いや、あとにしろよ、今はカードにしまうのが先だ」

「いいから、ちょっとだけ、ねえ私にしまわせてよ!」


 エーシアは手を伸ばしてフィアが手に届かない位置までコレクションを持ち上げた。ぴょんぴょんとフィアは飛び跳ねながら奪おうとしていた。その様子をすっかり人間にもどって穏やかに眺めるクレイとその弟妹たち。だが、人々は忘れていた。


『マリスコレクション』は一つではないということを――


 実際に身をもって体感したクレイだからこそ、反応が早かった。全身が思うように動かせなくなる、鈍化の現象を。


「「ぅぁあああああ……ぬわぁんんだぁぁあああくぅううぉれぇえええええ」」


 『コレクション』を奪い合っている二人も見事に鈍化現象に巻き込まれ、倒れこんた。驚くべきは体勢を崩しもつれ込みんで倒れる最中、脚が完全に地から離れて身体が完全に浮かんでいるにもかかわらず落下までゆっくりと動いていた。


 これではまるで時間の流れまでゆっくりになっているように……


「せやぁッ!」

「「ぁあああ……」」


 その時、二人が取り合っていた『コレクション』を物凄い勢いで奪い去った人物がいた。その姿を見たクレイは心の中で「しまった」と思った。その人物はクレイの代わりに一位の座を奪った人物。競技の最中にも似たような鈍化現象を引き起こして勝利をもぎ取った。


「ノレドッ!」


 気付けば鈍化現象は収まって普通に声が出せるようになっていた。怯える弟と妹を身体の後ろに下げて叫んだ。


「おい、それ返せ!」

「……ふふふ……に」


 ノレドは肩を震わせながらうずくまっていた。声をかけてもまるで聞いておらず自分の世界に入ってしまっている。


「ついに手に入ったぞ! もう一つの力がぁッ!」


 ノレドの激高する感情と共に魔力が放出される。その波動を受けた面々はお特殊な反応をしていた。吹き飛ばされているのにその動きはゆっくりと、宙に漂っている。受け身を取ろうとしても身体が上手く動かせず背中から堕ちた。


 クレイは弟たちを抱き寄せて庇いながら地に落ちた。土ぼこりを払いながらエーシアとフィアがノレドの方を見ると、彼は『コレクション』を高く空へ掲げたあと勢いよく自分の腹に叩きつける。すると『コレクション』は禍々しい波動を出しながら体内に埋め込まれていく。


「これで、揃った……。ついに俺は最強だぁ!!」


 その瞬間、ノレドの表皮が変貌する。人間の姿から異形と化した宝魅人の姿へと。しかしそれはクレイが変身しかけていた獣のような姿と違い、無機質な魔動人形のような凹凸の少ない非生物てきな見た目だった。


「すばらしい、力が溢れて止まらない……」

「おい、あれ、宝魅人になってるのに自我があるんじゃないか?」

「あり得ないけど、今はそれどころじゃないわ。ジャック、今すぐ変身してコイツの相手をして。私は観客たちの非難とか色々するから」

「了解」


 そういうとフィアは宙に浮かんだ競技場からぴょんと下の観客席のところまで降りて行った。エーシアはキッと宝魅人を睨みつける。すぐに『変身弾』を用意するが周りに人の目もある。認識阻害のシルフィアマスクも事前に着けていない。この状況で『変身』しようものなら姿がバレてしまうだろう。


 すぐにエーシアはフィアの後を追って競技場から飛び降りる。宙に身を投げ出しこめかみに銃口を当てて引き金を引く。


「シルフィアチェンジ!」

『チェンジブレット! シルフィアジャック!!』


 銃口から黒い煙が噴き出しエーシアが纏う。黒煙が晴れるとそこにはスーツに身を包む一人の快盗の姿があった。頭を覆うヘルメットに開いた目元部分。そこにシルフィアマスクを付ければ変身完了だ。


 すぐに鋼糸弾を撃って競技場に引っ掛けると身体を引き寄せ上に戻った。宝魅人から『コレクション』を盗み取る正義の快盗シルフィア・ジャックとして。







 

























































圧倒的に優勝。

約束通りお宝を渡すクレイ、その宝がエーシアの元に渡される瞬間、ノレドに奪われる。ノレドに渡ったコレクションは吸収され完全体へ、が宝の制御が上手くいかず宝魅人になってしまう。

元々二足で一組だったコレクションを一足ずつ入れられていたため、お宝の力が完全に引き出されていなかったため、二人はなんとか制御できていた。そのためノレドは自分ならお宝の力を完全に制御できると勘違いしていたが、二つ揃い完全体となったお宝はゆうに彼の支配力を上回り、制御不能、宝魅人化してしまう。←ここで終わり

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