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参上!シルフィア団!!  作者: JULY
第一幕『快盗の誓い』
16/23

事情聴取

 中略(騎士団グランスポート詰所に任意同行されたフィアは、事情聴取を受けることに)

フィアが連れてこられたのは、グランスポートの中心部にある、騎士団の詰め所だった。グランスポートにある支部のような立ち位置だが、流石騎士団というべきか支部とはいえ造りが壮観で、巨大な白き門は見る者へ畏敬の念を抱かせる。


非常時に備え、様々な魔術式が刻まれた罠や、耐魔力が高い材質の壁など有事に備えた造りになっている。


そのまま建物の扉をくぐると、中にはたくさんの人が右へ左へせわしなく動いていた。つかつかと正面のカウンターへ歩いていく女騎士は受付の女性に声をかけた。


「リオードです。例の彼女を……連れてきました」

「確認します……では係りの者を」

「お願いします」

「かしこまりました」


受付となにやらやり取りを済ませた女騎士がフィアたちの元へ戻ってきた。その間もずっと隊長を担いでいる姿は見ていてシュールである。


「行きましょうか……あ、ゲルドさん。隊長を医務室までお願いします」

「はっ!」


ゲルドという騎士が、担がれた隊長を引きとり医務室へ連れていく背中を見送ってから、女騎士は歩き出した。


「ここから先は一般の人は許可なく立ち入れない領域ですので、あまり他の物などには触らないようお願いします」

「分かりました」


そういって女騎士は魔力によって作られた半透明な壁を何も抵抗なく通り抜ける。そのままフィアもついていこうとすると。


「あいたっ」


半透明な壁に阻まれた。ペタペタ手で触ってみても、感触は堅牢そのものでちょっとしたことではビクともしない。シルフィア団でもこの壁を越えるのはどうするか、など思案していると慌てた女騎士が結界を調整した。


「すみませんっ、今通れるようにしますから」


結界の向こう側から操作をしてフィアが通れるように設定を変えた。すると、堅牢に感じられた魔力製の壁が、光のベールカーテンへと変わり素通りすることが出来た。あの結界を今度アジトにも実装しようなんて考えているとどうやら目的地に着いたようだ。


連れてこられたのは騎士団の事務所とべきか。皆一様に机と書類に向き合い、作業をしている。帯剣している者は少ないが、せわしなく部屋を出入りしている者も多い。


「そこに座ってください。担当の者と変わりますから私はこれで」

「あ、はい」


女騎士もフィアを目的の場所まで連れてきたと思えばすぐに部屋を出ていった。恐らく、私を襲った宝持人の対処でこれから忙殺されるのだろう。それを踏まえて辺りを見渡すと、どこか文官たちの表情も険しい表情を浮かべていた。


フィアが座っているのは部屋の脇にある休憩スペースと言える場所だ。ふかふかのソファに腰掛け、目の前であくせく働いている文官たちを見ながら、出された飲み物を飲んでいた。すると、くつろいでいるフィアに声をかけてきた人物が。


「お待たせしました。貴女が例の……」


女騎士が担当の者といっていた人物だろう。やってきた人物を一言で表すならば、堅物。服装もきちっとした礼装で、眼鏡を掛けており髪も後ろにまとめられている。嘘や冗談の類が一切通じない生真面目な性格だろう。


「……えっと、ランです」

「ランさん、ですね」


考えてみれば、今までこの変装での名前を名乗ったことがなかったので今適当に名付けて名乗った。陸上選手だから走るを意味するランと名乗ったがあまりに安直だっただろうか。しかし今の時代、親の一存で将来本人が恥ずかしがるような名前を付けられる事例も多い。突飛な名前でも訝しげられなくなったのはいい時代になったと素直に認めてもいいのだろうか。


書類を片手にソファの対面に腰掛ける担当官。その鋭いまなざしが虚偽の類は一切許さない、といいたげにジッとフィアの眼を見つめていた。


……なんかこの人機嫌悪い……?


「では、色々お話を伺わせてもらいます」


と、言いながら何かをことり、と机に置いた。それは手のひらほどのサイズ装置、魔道具だろうか。

しげしげと眺めていると、机上の魔道具から、無色のベールが展開。フィアと担当官二人をすっぽりと円状に包み込んだ。


「これは……?」

「端的にいえば聴収用の魔道具です。外部への映像と音を遮断します。情報については厳重に管理しますのでご安心ください」


ベール越しに外をみると、空間が歪んで、鮮明に外の様子を伺うことが出来なかった。人々の顔もボヤけてただの肌色の模様にしかみえない。


「確かにこれなら、周りに聞かれる心配もないわね」

「ええ。ではまず初めに、貴女はフードを被った人物に襲われていたわけですが、何か心当たりはありますか?」

「心当たり、ですか?」

「はい、何か思い当たる節があれば話してください」

「えっと……」


正直、ありすぎる。というか、自分を襲わせるように仕向けているので作戦通りの結果であるのだ。とはいえ正直に答えるわけにもいかない。


「いやー、特に心当りはないっていうか―?」

「そうですか」


表情を変えることなく、手持ちのボードに書き込んでいく担当官。捜査に協力できなくて申し訳ないがこちらもこちらの都合がある

。このまま嘘を混ぜながらのらりくらりとかわして早く解放してもらおう。


「ではお次に、あのフードの人物について何か知っていることや気づいたこと、犯人の手がかりになりそうなことがあればお教えください」

「えっと、顔はフードで隠れてたんで分からなかったけど体形と背はそこまで大きくなかった気がします」

「……命を狙われていた状況でよく見えてますね。何か、武術などをお習いに?」

「(しまったぁあああっ!? コイツ私を疑ってる!)」

「い、いやぁ……私も生きるのに必死で……偶々そう見えただけで特別武術なんかは」

「そうですか。ではお次に、この記事の人物は貴女で間違いないですか?」


担当官は、そういってある新聞記事の切り抜きを机の上に置いた。そこには”神童現る”という煽り文とともに銀髪の少女が笑顔で映っていた。


やはり来た。恐らく、騎士団側は被害者だった私よりも、神童である私の方に用があるはずだ。


一般的に現代魔術は完成の域にあると言われている。私達から言わせれば未熟も未熟の極みだが、それは私達からすればであって、現代人の感覚からすれば魔術は既に解明され尽くした技術なのだ。その現代人的な感性で言えば、たった数日でありとあらゆる魔術競技の記録を抜き去り、トップを総なめにするような魔術は、ありえないのだ。


それを可能にする方法は、それこそ王国で禁じている禁術を用いるか、今までの魔術概論を根本的に覆すような大革命技術。王国側として放ってはおけないだろう。実際、フィアも騎士団が動き、捕えに来るとは予想していたが、まさか自分が捕まるとは思っていなかったのだ。


「ええ。間違いなく、この記事の美少女は私よ」


嘘をついても仕方ない。そもそも相手側は様式美で尋ねているだけで、フィアの正体を確信しているだろう。ここで嘘を述べればより面倒なことになること間違いない。そう判断したフィアはここは素直に認めて相手側の出方をみることにした。


「そうですか。では記事の内容も真実ですか?」

「ええ。ここに書いてある内容は全て事実よ」


「ならば、なぜこのようなことを?」

「それは……試してみたくなったのよ、自分の力をね」


まあ、あながち嘘ではない。シルフィア団は、現代魔術とは比べ物にならないほど強力な、魔法の域に届きかけている魔術を使えるのだ。そんな力を手に入れて少しだけ自分たちの存在を誇示したくなったのだ。このわざわざ世間に対して目立つ行動をしているのもシルフィア団の第一段階の計画のうちなのだ。断じて好きでやっているわけではない断じて。


「では、ここ数日の間に並み居る選手たちを寄せ付けない魔術を手に入れたと、いうわけですね?」

「ええそうよ。何か問題ある?」

「……いえ、特には。ただ貴女が使っている力が王国法に違反しているのではないかという声も上がってきていますので、その辺りのことはどうですか?」

「失礼ね、私は禁忌に手を染めるような外道に堕ちた覚えはないわ。何なら検査でもなんでもして構わないわ」


手のひらを見せてあくまでもやましいことは何一つないとアピールする。本当に検査されていたとしても、シルフィア団が用いる魔術はこれといった証拠も残らないため身体の隅から隅まで検査魔術を掛けたところで怪しいものは何一つ検出されない。現代魔術の技術水準が低いということも相まってる。そのためあえてフィアは強気に交渉を吹っ掛けることが出来るのだ。


「あぁ、いえ結構です。今はそこは問題ではないので」

「え」


何気なく担当官は言ってのけるが、フィアにとってそれは予想の裏をかくような言葉だった。


「そろそろ本題に入らせてもらいますが――」


フードに襲われていたことでもなく、禁忌に手を染めたと疑われるような超常な力を行使したことでもなければ、この担当官が聞きたいこととは一体。フィアは目の前にいる人物が只者ではない予感がしていた。ちらりと視線を外し、周囲の状況を探る。


「(幸い、こちらから外もみれない代わりに、外からもこちらが見えないはず。武装は取られてないから……)」


カード状に圧縮されたシルフィアチェンジャーを確認する。こちらの意思一つですぐにカード状から現物に解凍され使うことが出来る。もしもの場合、速攻で銃を抜き、フィアが担当官の服装に変装し離脱する。そんな緊急計画を頭で描きながら、フィアは担当官の言葉の続きを待った。


「貴方方が狙うお宝、マリスコレクションについてですが……」

「なっ……」


フィアは絶句する。なぜこの女がマリスコレクションのことを知っている? 私達の正体が? グループだということが、なぜ、なぜなぜなぜなぜ――


「なんのことかしら。まりす、これくしょん? おとぎ話こと?」

「とぼけなくて結構です。私は貴女達の正体を知っています。このことを外部に漏らすつもりもありません。ですから速やかに、貴女が掴んでいる情報を話してください」

「……」


信用、するべきか。フィアは決断できずにいた。確かに各地には、シルフィア団の手ごまとして使える工作員が潜伏し、フィアの命令一つであらゆる任務を遂行する。その数はもはや膨大でフィア自身でさえ把握しきれない数にまで膨れ上がっている。目の前の彼女もその一人なのか。それにしては、配下である証明、耳の裏に刻まれているシルフィア団のマークを見せてこない。つまり彼女はこちら側ではない……? ならばなぜこちらの正体が見抜かれているのか。


「……貴女が私たちのことをどうやって知ったのかは聞かないわ、聞いたところで本質的な解決にはならないから。でも一つだけ聞かせて頂戴、貴女がマリスコレクションの情報を手に入れて何をするつもりなのか。私と利害が一致するなら協力するのも藪坂ではないわ」

「質問を質問で返さないでください。私がこの結界を解いて貴女の正体をバラスこともできるんですよ? どちらの立場が上にあるのかお忘れなく」


まるでとりつく島もない。担当官は明らかにフィアに対して快く思ってないようだ。この担当官、かなり実力者だと見える。無理に逆らってこの場にいる騎士団全員を相手にするには余りに分が悪い。更に王都からも増援が来る流れになっている。


「貴女が情報を渡すのなら、王都への増援要請は取り消すよう手配しましょう。これは貴女方にとっても悪くない話のはずです。金剣の化物たちと交えることは避けたいでしょう?」

「(この女ッ……! 私達が最も恐れる事態を読み切って……)」


せめてアジトにいるボスやエーシアと連絡が取れれば……と思わずにはいられなかった。目の前の女がそのような隙を見逃してくれるとは思わないが。


答えは初めから決まっていたのかも知れない。一枚のカードを伏せて机の上に置いた。


「……これは?」

「今、グランスポートにいる宝持人の情報よ。この場で見て理解したら処分するように」

「……ッ! ……」


カードを取り、そこに書かれていた情報をみて肩を震わせる担当官。彼女の内情までは知ることは出来ないため、彼女が何を想っているのかフィアは分からないが、ただならぬ何かを感じとっているようだった。


「……それでこの情報を得るためにあんなやり方を?」

「この際だから全て話すけど……録音とかしてないでしょうね」

「誓いましょう」

「そうよ。私は今回の宝持人が陸上選手であると踏んだ。そうでもなければこんな場所でマリス反応なんて出ないわ。そしてその宝持人は絶対に力を使いだす。その力を使って他を圧倒し優越感に浸る、だから私はそこを突いた」

「圧倒的な記録を出し続けることで選手たちの反感をわざと買うことで宝持人側から接触させた、と。しかし結果的に上手くいきましたが、宝魅人が釣れる可能性は未知、余りに無謀な賭けでは」

「いえ、確信があったわ。コレクションを使って記録を伸ばすような自尊心が低い輩の場合、自分の記録を抜かれるなんてことは許せないハズ。なんとしても潰しにくる」


事実、相対した宝持人からはただならぬ敵意を感じた。それに身のこなしやあ、攻撃のパターン、敵意の隠し方からみても闘いの素人であることは自明。宝持人が選手であるという読みも当たっている。


「なるほど……大方理解しました。では私が聞きたいのは次で最後です」

「ええ」


何が来るのか、フィアは身を強張らせながら質問を待った。


「最後になりますが連絡を入れても無視した挙句独断で行動し結果捕まってしまった馬鹿な快盗団の団長に心当たりは?」

「……あっ、ってええ!?」

「はぁ。何やってんだよバカ」

「え、エーシア!? どうしてここに!?」

「どうしてってお前が助けてって呼んだんだろうが」


目の前の担当官の姿が光の粒子とともに弾け、代わりに不機嫌そうにフィアを見つめる黒髪の青年の姿があった。この担当官が初めからフィアに対して不快感を表していた理由も明らかになった。彼が今言った通り連絡を無視し独断専行、挙句失敗し助けを求める。怒るのも当然だ。


「……で、これからどうするつもりだ」

「どうも何も、今見せた通り宝持人は魔力波長までしっかり特定済み。テラ達に頼らなくとも私達だけでグランスポート全土を走査できるわ。そして完全奇襲でお宝ゲット、それで話は終わりよ」

「……そうか」


計画を聞き、賛同はしているが何やらエーシアの歯切れが悪い。担当官に変装していた時から違和感があった。宝持人の情報をみてから様子がおかしくなったことから、宝持人のことを知っているかも知れないが……


「ねぇ。さっきからアンタ、様子が変よ? もしかして何か私に隠して――」


フィアがエーシアの様子について聞き出そうとしたとき、結界の外側からノックされた。


「そろそろ時間だ」

『変装弾!!』


エーシアは再びチェンジャーの力で眼鏡を掛けた女性尋問官の姿へ変わる。


「え、外から音聞こえてるけど!? この魔道具だいじょぶなの?」

「問題ありません。外からはこちらの音や映像は全て遮断されていますが、外からの刺激はある程度内側に聞こえるようになっています」

「そ、そう? ってかしゃべり方そっちに戻すのね」

「では、王都からの増援は私の方でなんとかしておきます。貴女はここから出たら合流するまで下手に動かず待機していてください」

「あの……一応私が団長なんですけど――」

「いいですね!?」

「はいぃっ勿論です!」


大人の女性に凄まれてたじろいでしまうフィアだった。


「では、結界を解除しますので」


机上に置かれている装置に軽く触れ操作して、二人を包んでいた結界が解除された。結界の外からノックしたであろう女騎士が待っていたように声をかけてきた。


「お疲れ様です。えっと、ランさんだっけ。大丈夫。この人怖くなかった?」

「私の間違ったイメージを広めるのは止めてください。あ、貴女はもう帰って大丈夫ですよ、ご協力ありがとうございました」

「あ、はいどうも」


これ以上この場所にいてもできることはないと、そそくさと詰め所から逃げ出そうとするフィア。しかしこの時、フィアの中にはこの場から去ること以外に考えていることがあった。


”私がコレクションを手にしたい”


確かにエーシアには釘を刺された、一人で動くな、と。フィアとて先の失敗がある以上あまり大きな顔はできない。だが、だからこそフィアは失態を取り返したいのだ。団長としてのプライドもある。何もできないままでは終われない。


「(せめて、宝持人の監視くらいならいいわよねっ)」


足取り軽やかに部屋を出ようとすると、前から書類を抱えながら歩いてきた文官とすれ違う。その時すれ違った文官が一枚の紙を落としていった。そのことに気付かず文官は歩いていってしまう。


「あのっ、落としましたよ……行っちゃった」


その紙を拾ってみると、そこには何も書かれていなかった。何も書かれていない白紙の紙をわざわざ持ち歩くだろうか。それとも何か魔術的な仕掛けでもあるのか、と裏面を見ると――


”監視もダメだからな”


「は、ははは……」


ちらりと、エーシアの方を見ると、満面の笑みだがその目線だけが鋭くフィアを貫いていた。


その後言いつけ通り何もすることなくいい子で待っていたフィアはエーシアと合流したのだった。







フィアと担当官エーシアとのやり取り後フィアとエーシアが活動。

フィアの走査の情報から特定クレイを闇討ち、大会まで待ってくれと懇願。←ここまで

大会は三日後、その間にクレイの一番大切なものを探すことに。

当日まで探すが見つからない。

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