国立競技都市グランスポート
シルフィア団のエーシアとフィアは、魔列車に一時間ほど乗り国立競技都市グランスポートに来ていた。
今となっては国立競技都市と呼ばれているが、初めは、複数の競技場があるだけの場所だった。しかし、度重なる施設の増築と領地を拡大を続けるうちに、王都から通うぐらいなら、ここに住んでしまおうと宿泊施設まで立ち並ぶようになり、今の競技都市と呼ばれるまでになった。
その広さは広大で、領地内に山岳や海洋まで有しているとなればその規格外の広さが分かる。実際のところ、競技都市に入るだけなら王都から徒歩五分もかからずに入ることが出来る。問題はその広さ故、目的地まで列車でも使わない限り一日で着くことができないのだ。
今、二人が来ているのは、グランスポートの中心。大競技場に来ていた。この大競技場は、一言で言えば超巨大スタジアムのようなもので、中央に一周四百メートルのトラックが縦に三つ並び、それを一周千メートルの巨大トラックが挟んでいる形だ。さらにそれを取り囲むように観客席が並びその収容人数は驚きの百万人。最上段の席は見上げるほど高い。
「さすがに高すぎないか?」
エーシア達がいるのは、観客席の最上段。今は大会などが開かれているわけではないので観客席に人はいないが、最上段は別だった。流石にここまで巨大なスタジアムはグランスポートにも一つしかなく、つまりそれは世界的にも珍しいということになる。そのため、その大きさを一番実感できる最上段には常日頃から観光客が訪れているのだ。
「そうねー。ここが一番おっきなスタジアムだからね。国の祭典とか舞闘大会とかもやれるようどんどん増築を重ねた結果、観客席が十段できたってわけ」
「こんなに高いともはや何やってるか分かんないだろうな」
眼下では、米粒のような大きさになっている選手が練習に精を出している様子が伺えた。
「そういう訳だから遠見の魔術が付与された魔眼鏡が売られているのよ」
フィアは双眼鏡タイプの魔眼鏡を覗きながら言った。この魔道具、値段によってピンキリで安い物は一日しか効果がなかったりただ遠くのものを見るだけだったりするのだが、高価なものだと、遠くを見つつ全体を俯瞰して見れる複数窓機能や、注視した選手の情報が見れたり、白熱した場面を切り取り繰り返し見る機能など、複数機能がついているのだ。
「……お前のそれ、どこで買った?」
「……そこの通路だけど」
「……俺達が通った道の魔眼鏡の出店は一つしかなかったよな。しかもそれ一番高いタイプのやつだったよな……?」
「……」
黙ったまま動かないフィア。静かに振り向く顔には汗が滲んでいた。
「ちょーといいやつだったかなー?」
「ちょっとじゃないだろ! ウチは金銭事情がギリギリなんだろ!?」
「う、うるさい! 団長は私よっお金は私が好きに使うのよ!」
ギャーギャーと取っつかみ合いの喧嘩をする二人に、周りの観光客は残念な人を見る目で静かに遠のいた。しかし、そんな二人に声をかける人物がいた。
「観光ですかな? 元気なお二人さん」
「「はへ?」」
声をかけてきたのは初老の男性。身長は平均的だが、顎髭を胸まで伸ばしている。しかし、年不相応の筋肉質の身体で、シルフィア団の二人は即座に快盗のスイッチを入れた。
「えぇ。噂に名高いグランスポートの大競技場をひと目見たくて。今日は来ました」
「評判通りすごいっすね。巨大な建物をみるとテンションが上がるっていうか」
「ほっほ。楽しんでくれて何よりじゃ。して、お二方はなにやら揉めていたようじゃが……」
「あー、このバカ女――ッタ!? ……が帰りの列車賃まで使って魔眼鏡を買っちゃって……、それで揉めてました」
「あははは。ついつい我慢できなくなっちゃって~」
エーシアが作り話で老人の話相手をしている最中に、内容が気に食わなかったのか老人からは見れない位置で、フィアはエーシアを思い切り抓った。
「ほっほ。そういうことじゃったか。ならば儂からお小遣いをやろう。お嬢ちゃんより、君に渡したほうが良さそうかな?」
「あ、ありがとうございますっ」
茶目っ気に笑ってウィンクしながら、お金をくれた老人。エーシアは遠慮なく受け取って、手の中を確認すると。
「ちょ、こんなにいただけませんよ、おじいさん」
「いいのじゃいいのじゃ。歳を取ると、金の使いみちがなくてのう。貯まっていくばっかりなんじゃ」
手のひらの上には金貨一枚。価値で言えば王都勤めのエリート騎士の一ヶ月の給料に値する。ストリートマジシャン時代のエーシアの一年分の給料が届くか届かないかぐらいの大金だ。
「失礼ですが、貴方は一体……?」
「ほっほ。それは名乗らない方がお互いのためな気がするのう」
「「――ッ!?」」
正体を見抜かれた? ありえない。こちらはまだ何も行動を起こしてないのだ。カマを掛けられている――
そう判断した二人はあくまでも観光客のフリを続行した。
「おじいさん、そりゃ一体どういう意味……」
既に老人の姿は無く、周囲の観光客もいつの間にか居なくなっていた。その只者でない、技に冷や汗を流す二人だったが、気圧されている場合ではないと、気を引き締め任務を開始した。
◆◆◆◆
「思わぬ軍資金も手に入ったことだし、作戦開始するわよ」
「さっきのじいさんはスルーするのか?」
「んー……別に私たちの正体がバレたわけではなさそうだし、特に害はなさそうだなって」
「お前がそういうならいいけどさ」
「ということで、作戦開始よ」
『変装弾!!』
赤と白の派手な弾をチェンジャーに装填した。この弾丸に込められた力は、シンプルながら強力かつ、快盗業には欠かせない力の一つ。フィアのチェンジャーの銃口が向けられたのは、自身のこめかみ。迷いなく引き金を引く。放たれた光の粒子はフィアの頭を貫通し、身体の周囲を旋回。その後心臓部に直撃したとたん、パッと粒子は弾け、全身に隈なく付着。光が収まるころには姿ががらりと変わっていた。
その姿は一言で表すと、ユニフォームだった。陸上選手が着るように、走る身体に干渉しないように布の面積は少なく、惜しみなく晒されているヘソが煽情的だ。さらに細かいことに常日頃この格好で日々研鑽を積んでるかのようにしっかりと日に焼け、きめ細かく色白なフィアの肌が、きつね色に色づき、これはこれでフィアの魅力を引き出していた。
「私は陸上選手。落ち葉を隠すなら森の中ってね。ここに潜入するには最適の変装でしょ?」
「そうだな。じゃ俺の番だな。俺が選んだのは――」
変装弾を込め、フィアと同じようにこめかみに向かって撃ち放つ。フィアと同じ光景が再現されたのち、エーシアの変装が完了する。
エーシアの変装はフィアとは対照的に布の面積が増えていた。
「……あんたのそれはなんなの?」
「これか? これは選手の記事を書くため取材に来てる記者だな。それも、今はまだ無名だが、今後の活躍に期待できる将来有望な選手に他社より先に唾をつけ独占記事を書いてやろうと意気込む自称”選手を見る目には自信がある”記者の変装だ」
「無駄に凝ってるし実際いそうで言葉にしづらいわね……」
ベージュのコートとそれに合うようなパンツとあまり服装には拘ってない感じを装い、帽子にカメラ。首には白々しくも、謎の団体から許可を得ていますということを証明するカードがつるされている。
「やっぱり選手を観察するのに一番怪しまれないのは記者かなって」
実際、このグランスポートには毎日大勢の競技関係者が出入りしている。選手はもちろんのこと、彼らを教えるコーチといった実際に競技に直に関わるもの。さらに競技に用いられる道具を制作している組織や商会などの選手たちを支える人たち。はたまた、彼らの試合や練習を取材し記事にする記者、そして世界中から押し寄せる大勢の観光客。人の出入りだけなら王都にも引けを取らない。
「なかなかいい目のつけどころだわ。じゃ、私はさっそく下で練習してる人たちに混じってくるから。アンタはこの辺から離れたところで活動しなさいな」
「は? おいまて勝手に……」
「それじゃ、また夜に会いましょう」
そういって、観客席の手すりに身を乗り出す。エーシアの制止も聞く耳を持たず、ふわりと身を投げ出した。慌てて手すりから、下を覗くエーシア。真下では真っ赤な血の花を咲かせたフィアの死体が――あるわけもなく。器用に手すりにつかまりながら、すいすいと降りていくフィアの姿があった。気が付けばすでに地に届いて選手たちに紛れていた。
「いや、すごいの前にバレてないのか……?」
観光客、下にいる選手たちの中にも最上段から豪快に降りてきた銀髪の少女を捉えた者はいなかったようだ。
しれっと選手たちと一緒に外周を走り始めているフィアを見て、彼女の潜入技術を信じるエーシアだった。
「よし、俺も……っていや普通に降りるけどな!?」
『はやく、こうどうかいしする』
独り言のつもりだったが、ばっちりと幼女に聞かれていたようだ。
◆◆◆◆
「それで、お客さん。どちらまで?」
「そうだなー……」
店で買った、グランスポートガイドブックを開きながら行先を決めていた。地図には魔術が掛けられており、現在地が分かり、行先を指定すれば、目的地に天を貫く巨大な光の柱が立ったり道中の道筋を示してくれたりする優れものだ。さらにこの光は地図の持ち主にしか見えないため、至る所に光の柱が乱立する、ということもない。
この地図はそれなりに値が張るものだが、ここには人には厳しく自分に甘い横暴団長の姿はない。今頃偽りの仲間たちとともに青春の汗を流しているところだろう。
「――ふぇっくしょんっ」
「どうしたのフィーナ。風邪?」
「う、ううんなんでもないよ」
「よぉーっし! 次は走り込み十本だッ! 水を飲んだら始めるぞ!」
「「「はいっ」」」
フィアは運動に目覚めていた。
「で、行先は決まりましたか?」
「あ、じゃあ、この海洋エリアまでお願いします」
「わかりました。じゃあ出発します」
エーシアが乗っているのは、グランスポート名物人力車だ。ただしそれを引く車夫は現役の選手である。余りにも広大な敷地のため、徒歩で巡るには一般人には体力的にも負担がかかる。かといって敷設されている魔列車を使おうにもピンポイントで移動するには不便だ。そこで考案されたのが人力車である。これなら、乗る側も負担が少なく長距離を移動でき、選手からも働き賃金を貰いながら鍛えることが出来る。競技都市ならではの共存関係といえる。
「……」
人力車に揺られながら、景色を眺める。競技都市ならではの独特の光景だった。まず、すれ違う人のほとんどが運動着を着て走っている。ときどき通り過ぎる広場のような場所では人々が集まって筋肉増強に励んでいた。それは老若男女都問わず、子供まで元気に身体を使って遊んでいる。
こんな街で趣味が読書なんです、なんて言おうものなら強制的に外に連れ出されかねない。陰性の人間涙目だろう。
更に目を引くのが、等間隔で運動場が設置されておりそれが全て人で埋まっているのだ。球技のコートが充実しており、チームを組んで本気で大会優勝を狙っていそうな人たちや、今日たまたまその場で会った人たちで球技を楽しんでいるような人々など、本当に様々だ。
「本当にこの街の人たちは身体を動かすのが好きなんだな」
「えぇ! 僕たちは昔から身体を動かすのが大好きなんですよ」
それを語る青年の瞳には、清々しいまでの熱い気持ちが宿っていて、かつて光を失い引きこもり生活の経験があるエーシアには直視するのは耐え難かった。
「そ、そうか。ちなみにお兄ちゃんはどんな競技をやってるんだい? 持久力がとんでもなくありそうだが……」
現在、エーシアを乗せた人力車は、人が出せる最高速度に近い速さで走行していた。人力車専用路があるため、事故が起こることはないと思われるが、この速さに慣れるには相当な胆力がいるだろう。
にも関わらず、車夫の青年は同じペースでかれこれ二十分は走り通しているが、息の乱れ一つない。しかもそこに会話を挟む余裕すらあった。
「えぇ、えぇ! そうなんですよ! 最近持久力には自信がありまして! この程度なら全く余裕なんですよ。おじさんは僕を引けて運がいいです」
「そ、そうかい……自信があるとかそういう問題じゃない気もするが」
流石に人の域を超えている。すわ彼が《マリス・コレクション》を……と思い立つが、冷静に考え直した。そもそも身体能力など魔術でいくらでも強化できる。当然、競技の中には純粋な身体能力のみで競う物もあるが、その逆に魔術を用いて行われる競技もある。魔術の実力も本人の気質に入るからだ。世界的に見ても、魔術有り無しの競技の人気はどちらも同程度にある。
この青年がそういった魔術を用いる競技を行っている人物だとすれば、身体強化魔術を使っていてもなんら不思議では無い。更に言えば、この人口三万かつその半数と同じ数が日々出入りしているグランスポートで、偶然乗り込んだ人力車の車夫が目的のコレクションを持った人物? 有り得ないだろう、一体どんな確率なのか。
「ちなみに、にいちゃんはどんな競技をやって――」
「おじさん、見てください。間もなく海洋エリアが見えてきますよ」
そう言えば今の自分は、大人の記者だったと思い出し、おじさんと呼ばれることには目を瞑った。
言われるままにその方向に目を向ける。そこに存在する光景に、エーシアは思わず目を疑った。
「み、港がある……」
大都市にあるような立派な港が、堂々と聳えていた。
「はい、ここはグランスポートの誇る海洋エリア。かつて、現市長が”近くに海があるのなら、そこもうちの敷地にしちゃおう” と、敷地を広げたことがこのグランスポートの始まりだと言われています」
「とんでもないな、その市長……」
エーシアは目が離せなかった。よくある、競技場の複合施設に水泳場があるのとは規模が違う。海ご丸ごと、この都市の物なのだ。
沢山の人々が行き交っている。停留所にはヨットや小舟が並び、沖には巨大な船が浮かんでいる。しかし、そのどれもがあくまでも競技に用いられるものであって、漁をしたり、貿易や貨物運搬に使われるものではないのは、周りの人々を見れば明らかだ。
「すごいな、こんなに海が近いってのに市も競りも何にもない……」
「向こうに行けば少しはありますよ? ここに住んでる人達にも生活がありますし」
目的地に着いたからか、人力車の速度を落としながら解説してくれる青年。
「皆海パンばっかりだ……」
「そうですねー。そこに見える建物が室内水泳場で、この先の海域は遠泳競技者に使われてますから」
あっちに行けば船関係のエリアに行けますよと、教えてくれているのを半分聞き流しながら、エーシアの目は一点から目が離せないでいた。
「おじさん……って、やっぱりあれ目的ですか? その首のカメラもそういうことですか」
ため息混じりに青年は、エーシアと同じ方向を見る。その先にはビーチがある。そのビーチの上で──
「はい!」
「あーんっ」
こんがり焼けた肌、その身体を惜しみなく晒し、豊満な部分を揺らしながら球を打ち合う女性たち。
「砂浜排球はこの海洋エリア一の観光場所ですからねぇ、主に男性から」
「ほぉー……」
既に夢中になっている中年記者、に変装しているエーシアを白い目で見る青年。ここに住んでいる彼にしてみれば見慣れた光景なのかもしれないが。
「ちなみに、男性の視線が多すぎると、女性陣の苦情が多数寄せられたため、彼女たちは射影機型魔道具弾きの魔術が込められた魔道具を持ってますから、撮れませんからね」
「そ、それぐらいわかっているさ。ははは……」
「というわけで、海洋エリアに着きましたが……」
「あ、ああ。ここで降ろしてもらうよ。ありがとう」
色々話してもらったお礼に、と。少しだけ多めに駄賃を払ったエーシアは青年を見送った。相変わらずの速度であっという間に背中が見えなくなった。
「……さて。ここまで来たものの、こっからどうするかね」
取り合えず歩きだしながら考える。近くに海があるため、独特の潮の香りが鼻に突き抜けていく。快盗としてやること。それは地道に取材して、ここ数日で何か変わったこと、おかしいと感じたことなどを聞き取りしていくことだろう。頭では理解している。理解しているが――
「まぁ、これも取材だよな」
誰に言っているのか分からない言い訳をしつつ、その脚は砂浜排球場に向かっているのだった。
◆◆◆◆
その後、心行くまで目の保養を楽しんだエーシアは聞き込みを開始した。しかし、結果は芳しくはなかった。道行く人に聞き込んでみても、ここ最近で特に変わったことはないらしい。勿論、水着姿の可愛いお姉さまにも聞き込みをしたが結果は同じだった。(その時の聞き込み時間は他に比べ長かったのは秘密である)
そうこうしている間に日が暮れ、フィアとの集合時間となった。適当な人力車を捕まえ、集合場所付近まで走ってもらい、そこからは徒歩で向かった。場所を誰にも知られないための措置だが、特に誰にも怪しまれていないこの状況でわざわざこの手を取る意味はなさそうだが。
集合場所に指定されたのは、とある食事場。その屋外席の一席に変装を解いたエーシアが座っていた。人差し指を高速でテーブルに打ち付けながら。
「どうしてフィアさんは来ないんですかね……?」
集合時間を過ぎてもフィアは現れない。腹が立ったので、気を紛らわせるために料理を注文した。一つのエリアとはいえ一日中歩き回り聞き込みをして回ったのだ。当然、腹も空く。
「お待たせしました。ご注文のバーガーセットです」
「――どうも」
店員が運んできてくれたが、苛立ちからそっけなく返してしまった。今エーシアの頭の中は、フィアに対する怒りで一杯だ。次に会ったらどう言ってやろうか考えつつ、セットに含まれていたポテトに手を伸ばそうとして――
トレイの上に乗せられたシルフィアカードが目に入った。
「――ではごゆっくり~」
「ちょ、ま……」
運んできた店員を呼び止めようとしても、既に店内に戻っていた。それよりも、カードの方が先決だ。きっとフィアのことだ。口頭ですら憚かれる重要な情報が記載されているに違いない。知った者にはただでは済まされないレベルのものが。
恐る恐るカードをめくる。その裏には一体どんな内容が書かれているのか――
” ”
白紙。何も書かれていない。
「……」
ここでため息をつきたくなるがそうではない。むしろその逆で、より一層気を引き締めなければならない。何故ならそこまでしなければならないほど秘匿しなければならないから。
白紙の面を指でなぞる。描くのはシルフィア団のマーク。安直な隠し方だが、これは特定魔力の持ち主でなければ意味がないのだ。つまりこの鍵はマークの方ではなく魔力にようるもの。よって描くマークを複雑怪奇にする必要はない。
マークを描くと、徐々に文字が映し出されていく。おそらく、ここまで厳重な隠し方をする以上、今回の任務の核心。使われているコレクションやその使用者。もしくはそれに近い重要な情報を掴んだに違いない。
「すまんフィア。俺が浅はかだった」
流石は我が団長だ。今日一日、何も成果を上げることが出来なかった自分と違い、フィアは一日でしっかりと結果を出した。さらにその情報が外部に漏れることを防ぐため面会を避け、こうした手段を取った。
それなのに自分は集合場所に来ないと怒っていた。何様のつもりなんだ。自分は成果の一つも上げなかったくせに。
「さぁ、一体どんな情報を見つけてきたんだ団長」
尊敬と憧れ、そして期待。様々な気持ちが混ざり合って浮き出てくる文字を読む。そこには――
”話し合いには行けません。身体を動かすの楽しくなっちゃって てへっ”
「……」
ピキッ。何かが切れる音がした。
「あぁんのぶぅかやろぉおおおお!!!!」
その声に思わず誰もが振り返ったという。