表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Addiction  作者: nirva
序章
8/14

余韻

ーー261708060950

 こうして出撃停止処分が解けた僕は、部屋に戻り、そのことを報告したい一心で、別の基地にいるオペレーターのフウさんに通信を繋いだ。できれば朝方に連絡を取りたかったが、通信障害で接続ができなかった。今はもう治ってるといいのだけれど。


 暫し待っていると、モニターの文字が『待機中』から『接続中』に切り替わり、スピーカーからはフウさんの基地の生活音が流れ始めた。

 無事に通信が繋がったことに安堵し、声をマイクに流す。


「あーあー。フウさん、こんにちはー。」

「はーいもしもしー。こんにちは、イル。」


 いつもの柔らかい声。最近はあまり連絡が取れていなかったが、普段であれば作戦を遂行する上で何回も聴いている声なのに、僕にとってはかなりの安心感を与えてくれる。


「早速ですけど、一つ報告したいことが。」

「あ、もしかしてあの件?」

「そうですそうです! 出撃停止命令が解けたんですよ! ようやく!」

「おー良かったね! やっと私も仕事ができる……。」


 最後の言葉がうまく聞き取れなくて、もう一度聞き直す。やっと仕事がーーとか聞こえた気がしたが、「ううん、何でもない」と適当にはぐらかされてしまった。


「ああでも、命令にはちゃんと従うのよ? あと無理をしちゃダメ。いい?」

「分かってますよー。二の舞は嫌ですから……。」


 あははと笑うフウさん。

 今の言葉に、僕はお母さんの面影を感じていた。

 いや、正確に言うとお母さんのような・・・・・・・・温かみである。実のお母さんではないし、歳もお母さんと呼ぶには若すぎるけど、それに近いような懐かしい感覚。不思議だ。いつまで経っても解き明かすことは出来ないだろう。


 すると、フウさんは少し恥ずかしそうに聞いてきた。


「ねえ、イル……敬語やめない? いちいち堅苦しくて……。」

「え、だって僕年下だし……。」

「年下って言っても2歳しか離れてないのよ? ほら、やってみて!」


 そんな事言われても、こっちだって恥ずかしいんですけどーーと思いながら、自分なりにシチュエーションを考える。


「……じゃあいきますね。」



「ねえ、フウ。この次はどこに行ったらいい? 教えてよ?」



「……。」

「…………。」


 ああもう、顔から火が出るほど恥ずかしい。というか、結構ノリノリだった自分が本当に嫌だ。

 フウさんもフウさんで、黙り込むのは本当にずるい。


「……ちょっとフウさん?!なんか感想をーー」

「ーー待って!」

「待って……。余韻に……浸らせて……。」


 フウさんの言っていることがよく分からない。余韻とは何のことで、どうしてそんなに満足げなのか。

 30秒近く待っても反応は無く、ついついしびれを切らす。


「あのー……そろそろ感想を……。」

「ん〜もうあざとい! ずるいってあれは……。」

「ずるい?」

「うん。ずるいから敬語禁止! はい決定!」

「えぇ……。もう分かりま……分かったよ……。」


 この後も、フウのリクエストに何回も応えては、お互い異なった意味で悶絶していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ