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Addiction  作者: nirva
序章
7/14

遅刻ー2

「それで本題だが、前もって伝えてある通り、イルの処罰についてどうするべきか問いたい。」

「……。」

「ここ最近の二号兵団は、あんまり仕事ぶりが良くないですよね。」


 整備部部長が口を開く。


「ん、確かに……。イルが隊長から降りたからか?」

「影響は少なくともあると思いますよ。ね、イル?」

「え? ああいや……ど、どうでしょうかね……?」


 何故だか、ただ話を聞いていただけの僕が恥ずかしくなっていた。文脈からすると、遠回しに褒められているような気がしている。

 さらに、今まで口を開かなかった兵団長も、補足する形で発言する。


「イルは隊長として十分優秀だ。統率力を評価するなら、復帰させる以外に選択肢は無いのでは?」


 いつもしかめっ面の兵団長でさえ、今日はやけに言葉が甘い。物凄く調子が狂うから、できればやめて頂きたい。

 しかし、整備部部長は悪ノリし始めた。


「確かに二号兵団の人達って、イルが普段から明るく接してるから、あまりネガティブなこと言わないですね。みんなやる気が強いというか。」

「ああ。士気の上昇は良いことだ。」


 僕を置いてきぼりにして、僕についての話で勝手に盛り上がる司令官と部長達。その光景は非常に滑稽だったが、同時に湧き上がるむず痒い感覚に耐えられなくなって、つい言い放ってしまう。


「もう! 僕をどうしたいんですか?!」

「どうしたいって、私は戦線復帰させたいのだが。」

「私も賛成ですー。」

「俺は、最初から反対する気は無いぞ。」

「作戦に失敗したとはいえ、死者は出てませんし。いいんじゃないですか?」

「……ということだが? イル。」

「あーもう、調子狂うな……。」


 慣れない謎の優しさに、身体が火照って仕方がない。多分、顔も真っ赤になっているのではないだろうか。

 そんな困惑する僕の表情を見て、一人にやける整備部部長。この人には後で苦情を入れておこう。


「……分かりました。再び頑張ります……。」

「よし、決まりだな。今回はこれで解散とする。」


颯爽とその場を去ろうとする司令官を呼び止め、僕は言う。


「あの……ありがとうございました。」

「別に感謝されることはしてないが? ただ、皆君の活躍に期待しているんだ。これからも頑張ってくれ。」


 ぽんぽんと僕の肩を二回叩いて、司令官は会議室を後にした。

 その期待が、かなりの重圧であることは分かっている。

 それでも僕は、司令官達に活躍を認めてもらえたことがただただ嬉しくて、いつもとは違う特別な感情が湧き出していた。

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