遅刻ー1
ーー261708060926
「あの……遅れましたー……。」
冷や汗が止まらないまま、そっと会議室の扉を開ける。
見えた扉の先では、偉い人達が神妙な顔つきで頭を悩ませていた。話し声の一つも聞こえず、僕が遅刻したことに、みんな怒っているのではと余計な詮索をかけてしまう。
困惑する僕に、司令官は声をかける。
「……ああ、イルか。」
その声は、どこか息を含んだ重い声だった。それが気になった僕は、突拍子もないことを聞いてしまう。
「……司令官、疲れてます……?」
「どうして?」
「声が疲れてそうなんですよ。あと……怒られないし……。」
そう言うと、司令官はふふっと笑った。
「お前は怒られたいのか? 私に。」
「いや! 別に、そういう訳でもないというか……なんというか……。」
「まあいい。さあ皆、予定していた会議を始めよう。」
司令官は一回咳払いをして、全員の視線をこちらに向ける。
そして、会議が始まるなり何なり、冒頭から僕の犯した過ちがずらずらと司令官の口から説明されてしまう。まるで磔に遭っているような気分だ。苦虫を噛み潰したような部長達の表情が、さらに曇っていく。
一通り報告を終えた司令官は、僕に視線を向けて一言、
「これは見せしめなんかじゃないぞ? 皆が状況を整理する為に必要なことなんだ。」
「言われなくても分かってますよ……。」
わざと素っ気ない言葉を返す。その言葉が僕に対しての煽りになっていることに、司令官は気づいているのだろうか。
しかし気づくはずもなく、そのまま会議は進む。