確認ー1
――261708060820
「西暦26……年8月6…。九…地区の天気は…………。」
今日は電波が恐ろしい程に悪く、いつも聴いているラジオが満足に聴けない。
周波数を変えても、全てのチャンネルが砂嵐の音。一向に止む気配は無く、イライラが募るばかり。
結局ラジオの電源を切り、ベッドに向かって飛び込んだ。
枕の近くに置いてあったデバイスを手に取り、基地についての情報を閲覧する。
『食堂から:新しい定食メニュー登場! イタリアンで統一された、お洒落過ぎるメニューです! 三階の食堂へレッツゴー!』
へえ、イタリアンねえ……。
考えただけでお腹が空いてしまう。多分ピザとかスパゲティとか、はたまたカプレーゼとか、そういう食べ物が出てくるのだろうか。
……いやいやだめだ。こんな想像……いや、妄想と言った方が正しい。そういう妄想をするからお腹が空くんだ。そもそも、さっき朝ご飯を食べたばっかりだし、九時にすらなっていない。
食堂のページを閉じて、画面を上にスクロールする。
次に目に入ったのは、戦況情報のページだった。
『人民軍情報部から:戦況情報が更新されました』
しかし、文面の通り更新されたというお知らせだけで、四階の情報部ロビーでしか詳細は見ることができないという実に不便な仕様だが、兵士達の間では当たり前になっていた。
そんな僕も、暇を潰す為に情報部ロビーへ向かう。
デバイスをベッドの上に放り投げて、部屋を出た。
部屋の中が少し暗いのに対し、基地の廊下は全体的に白く、シーリングライトの青白い光が反射してさらに眩しく感じる。
それでも清潔感の溢れる廊下は、歩くだけでも気持ちが良い。一体誰が掃除をしているのだろうか。清掃員を一人も見たことが無く、個人的な基地の七不思議と化していた。
普通の建物の四階ならそんなに面倒ではないが、この基地では普通が通用しない。端から端まで行こうとすると、1キロメートルは超えるだろう。間に出撃用ブロック等を挟んでいる為、こんなに長くなってしまったそうだ。
一階と二階と三階は主に兵士達の居住スペース。
四階は人民軍の情報部や作戦会議室など。
五階は上層部のみが入ることが許されている。
噂によると、地下もあるというのだが、誰も入ったことが無く、何も分かっていない。
……と、ここまで説明できればいいか。新兵向けの施設に関する説明係も任されてるから、これぐらいは覚えておかないと。
でも、もうちょっと詳しく説明した方がいいのかな。出撃用ブロックにも色々種類があってーー
「――イル? あれ、聞こえてる?」
「ん? ああごめん、ちょっと考え事してた。」
じゃ、と言ってその場を去ろうとする僕を、彼は呼び止める。
「ちょっと、ここ情報部のロビーなの気づいてる?」
口調は若干上からだが、身長は僕より下のドゥアル。彼もまた、人民軍の兵士として活躍している。
そんな彼に指摘されるまで、既にロビーに着いていたことに気づいていなかった。
・人民軍:旧兵士の殲滅を目的として結成された軍隊のこと。