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人

作者: seibuzuki
掲載日:2016/09/20

もし誰もいない世界があったらそこは天国なんだろうと思うことが多くなった。

誰もいない僕だけの世界、自分が何もかも好きにしていい世界、素晴らしい響きだ。

考えただけでもワクワクする。




1章


コンコン

「なに?」

「何だい、起きてたの。早くしないと学校遅刻するわよ。」

「・・・。行きたくない。」

「何甘えたこと言ってんだい。ほらさっさと支度して。」

「・・・。ねえ。」

「なあに?体調悪いわけじゃないんでしょ?」

「体調は大丈夫。もしさ、誰もいない世界に行けたらどうする?」

「そんなのつまらないに決まってるじゃない。人は1人じゃ生きていけないのよ。」

「・・・。いってきます。」


しぶしぶ学校へ向かう。誰に聞いてもそうだ。

独りでは生きていけないと口を揃えて言う。

そうだ。たしかに1人じゃ生きていけない。でも僕は今独りだ。

周りには同じ制服の男女がいる。誰も僕を期にかける様子はない。

ぶつかってきても謝る様子もない。誰も認知してないならそれは独りじゃないか。

 

これがいつも通りだ。

下駄箱を開ける。ああ、またか。靴の中にはセミの死骸が入っていた。

いつも通りだ。取り出してゴミ箱に捨てた。もう慣れていた。

昨日はカナブン。一昨日はゴキブリだった。

しかもそのときは「お前はこの程度の存在だ」と丁寧にも書き置きがしてあった。


教室に入っても数人がこっちに振り向き、つまらなさそうな顔をしてまた話し始めた。

自分の座席に向かった。空間はあるが机と椅子がない。いつもどおりベランダに置いてあった。

丁寧に両方逆さまに。ベランダに出て椅子を持って戻ろうとすると教室から鍵をかけられた。

「入りたかったら全裸になるか、外から来な。」

全裸にして何がたのしいのかわからない。それにここは4階だ。降りれるわけがない。

もちろん向こうもそう思っているだろう。時間が解決してくれることを待った。


担任がホームルームに来る直前に解錠された。当然なぜベランダに出ているのか聞かれた。

「机が汚れてたのでベランダで払ってました。」

もちろんウソである。椅子と机を順番に教室に持って入った。

今日はホームルーム中のことはなかった。昨日はモデルガンで狙撃された。

ホームルームのあと担任に呼び出された。職員室まで来るようにと。行かない訳にはいかない。

担任の後をついていった。


職員室ではなく会議室に連れて行かれた。

「単刀直入に聞くが、いじめにあってないか?今日だってさっきベランダにいた理由は嘘だろう。」

「いいえ。いじめにはあってませんし、クラスの人とは仲がいいです。

 さっきも教室が汚れないようにベランダで汚れを払ってたんです。」

いじめが始まってから随分時間が経っている。いまさらなことだった。今更だ。

むしろ今日ここまでどうして気が付かなかったのか。

まあ彼らが外見られないようにうまくいじめをしているからだろう。

「そうか?ならいいんだが。」いいらしい。

「あ、先生。1つ質問いいですか?」

「ん?どうした?」

「もし、誰も居ない世界に行ったとしたらどうですか?」

「んー、そうだな。楽しい半面つまらないかもしれないな。

 1人で好きにできる反面、達成した内容を話す人もいなければ協力する人もいない。

 1人は寂しいからな。またどうしてそんなことを?」

「いえ、ちょっと小説を書いてみようかと。ありがとうございます。」


お辞儀をして教室に戻った。椅子を引くと画鋲が並べてあった。

そのまま座っても良かったが、1個ずつどけて机の中にしまおうとした。

その時に何か紙が入っていることがわかった。

『昼休み屋上』

とだけ書かれていた。これは行かないといけないと本能で悟った。



2章


数学・英語・現代文と授業は着々と終わっていった。僕は周りに不信感を抱いた。

4時間目終了のチャイムがなった。昼休みだ。

昼休みまで全く何もなかった。これまでのことが嘘みたいに静かだった。僕は屋上へと向かった。

扉には鍵がかかっていた。ドアノブを数かいひねると鍵が空いた。外に誰かいることはわかった。

ドアを開けるとそこには主犯とそのお付き4人がいた。

「よお、早いじゃねえか。どうして来たんだ?」

「来なきゃどうせまた何かするんだろ。」

「ゴキブリにしては良くわかってるじゃないか。」

ケタケタと周りも笑う。本能は正しかった。

「それで、なんで屋上なんかに。」

「いやぁ、それなんだけどね。お前をいじめるのに飽きちゃって。」

「ここから死ね、と。」

「そんなことは言ってねえさ。ただちょっと男気ってものを見せてほしいなあって。」

屋上は5階程度の高さだ。ここから飛び降りれば足は確実に折れるだろう。もしかしたら背骨も。そのことをわかっていっているのだと確信した。

「それで、見せたら何かあるのか?」

「ああ。いじめをやめてやるさ。まあ万が一、失敗しちゃっても大丈夫だ。アフターケアならしてやるさ。」

といってかばんから封筒を取り出した。

「昨日授業時間使って考えたんだ。なんなら今ここで音読してやろうか。」

ケタケタとまた笑う。ゴキブリ相手にしては用意がいい。なんとしてでもやらせるのだろう。

「飛び降りればいじめをやめてくれるんだな?」

「ああ!もちろんだ!男に二言はないね。」

「その言葉、向こうまで持っていくからな。」

やつらの間を通ってフェンスを登った。

屋上とフェンスの間には靴の大きさほどの足場しかない。でも恐怖はなかった。

「ちょっとあいつ本気にしてるんじゃないっすか?」

「まずくね?」

ヒソヒソと何か喋っている。もしかしたら声を殺しているわけではないのかもしれないが僕には聞こえなかった。

「それじゃあ。あとよろしく。」

「おい!待て!おい!」

こっちに走って向かってくるが僕は屋上から一歩前に踏み出した。

時間の進みがとても遅く感じた。

上からは焦りの声が、横からはどよめきが下からは風を切る音が僕を包んだ。

僕がいなくなっても誰も不幸にならない。むしろ僕が幸せだ。誰もいない世界へ行ける。恐怖はなかった。

そして、鈍い音が聞こえ意識がなくなった。

はずだった。

「ここは、どこだ?」



3章


たしかに屋上から飛び降りた。

5階からの高さなら死ぬ確率はかなり高い。

助かるわけがない。

にも関わらず、僕は立っていた。無傷で。広い草原の真ん中で。

あたりを見渡しても何も見当たらない。

見えたのは森林だけだった。


「誰もいない世界に来たのか?」

そう言うと一気に興奮するのを感じた。

ここが天国。ここが自分だけの世界なのだと。

散策してみることにした。太陽はある。

これならある程度の方角の検討はついた。

何も考えずに北に行くことにした。

目の前には広大な平原が広がっていた。


どれくらい歩いただろか。

体感では10分くらいだろう。

草原にりんごのような何かがなってる木を見つけた。1本だけ。

それを見たとき、そういえば飛び降りるとき昼休みだったっけ、と思いだした。お腹も鳴った。

一体何の木の実なのかはわからないが、とりあえず食べてみることにした。

幸いにも登らなくても届くくらいの低木だった。

匂いは大丈夫。触った感覚でも腐ってる様子はない。

服でささっとふき一口かじってみる。

「りんごだ!!」

思わず声が出た。味も食感もりんごそのものだ。

今まで食べたりんごの中で一番甘いものに感じた。結局2個食べた。


再び歩き始める。建造物は何もない。

ほんとに誰もいない世界だと確信した。

もうかれこれ1時間は歩いている。

近くに森林があったから、その木陰で少し休むことにした。


休みながら色々考えた。

やつらは本当のところ、僕が飛び降りれないと思ったのだろう。

あとから聞こえた焦りの声がその証拠だった。

でも僕にはもう飛び降りるしか選択肢がなかった。

勉強はできる方だった。その代わり運動はできなかったが。


奴らとあったのはちょうど1年前、定期テストの前に奴らがカンニングペーパーを仕込んでいるのを見つけた。

そのときはなにもしなかったし、向こうもバレてはなかった。

次の定期テストのときもやっていた。

救えない奴らだと思った。廊下で先生が来るのを待ち、密告した。

当然奴らのカンニングは見つかった。

停学をくらった。当たり前のことだ。

停学が解けたその日の朝から奴らは犯人探しを始めた。

カンニングをチクったのは誰なのか、と。

自分らが悪いことがわかっていないようだった。

あまり時間がかからずに僕だということがバレた。

その日から陰湿ないじめが始まった。

彼らの賢いところは決して外傷をつけないところだった。

それならばいじめは密告しない限りバレない。

もし密告したら何をされたかわかったもんじゃない。

おとなしくいじめられることにした。

ネタは早々に尽きたようで、ほぼ固定メニューだった。

靴の中に何かを入れる、机と椅子を隠す。

モデルガンでの狙撃。僕はこれくらいのことにはなれた。

誰かが代わりに言ってくれるだろうと思っていた。

逆だった。誰も言ってくれなかった。

そればかりか無視を始めた。

無視はコミュニケーションを取る人間にとって最も辛い行為だ。

奴らになにか言われているのだろうと思う。

やつらの小学生みたいな行動ではなく、みんなから認知されないことが僕の精神をすり減らした。

そしてもう限界だった。

誰も相談できなかった。

シングルマザーである母親には余計な心配はかけられない。

教員に話したら何をされるからわからなかったからだ。

そんなことを考えていたら夜になった。

どうやら考えながら少しウトウトしていたようだった。

月明かりしかないためにとても暗かった。

その光を頼りに森林を抜けると、ため息が出た。

夜空には見たこともない星空が広がっていた。

星座は覚えたりしていたがこれではどの星とどの星がつながるのか全くわからなかった。

その日は草原に寝っ転がって星空を眺めていたらいつの間にか眠っていた。


次の日、日の出に合わせて目が覚めた。

草原寝るのはこんなに気持ちいいのかと実感した。そして1つ疑問に思った。虫や動物が1匹もいない。

もしかしてこの世界には自分以外の動物は1匹たりともいないのではないか、そう思った。

魚も含めて肉は食べられないのだと思うと少し悲しくなった。

まずは朝食を探すことにした。

昨日のようにりんごのような木の実のなる木を探した。

5分歩くとぶどうのようなものが木々の間から見えた。

見た目は巨峰だった。一粒食べてみることにした。

かなり酸っぱかった。

だが、別の房のものを食べると、そっちはとても甘かった。

その房を平らげると、また北に向かって歩き始めた。

果物からある程度の水は取れるがやはり喉が渇く。

次は水を探すことにした。



4章


歩きながらふと気がついたことがあった。

昨日この世界に来てからというもの、便意がない。

食べたものや飲んだものがどうなるのかわからない。少なくとも胃に入る感覚はする。

とても不思議に感じた。


北へ北へと足をすすめる。

まだまだ森林は続いている。

周りに生えてる木の種類も変化がない。

足元には落ち葉が溜まっていて足場が悪い。

下を向いて足元を確認しながら歩いていた。


突然足元の色彩が変わった。

茶色だった落ち葉が黄色になった。

ちょうど木の種類が変わる場所だったらしい。

ここまでかなり歩いたと思った後ろを振り返る。

だがそこには茶色の落ち葉はなく黄色の落ち葉が敷き詰められていた。

まさか木の種類がこの森林全体で変わるとは思えなかった。

別の世界の森林に紛れ込んでしまったのだろうか。

試しに少し戻るが、落ち葉の色に変化はない。

仕方がないので、また今までの進行方向に進む。


奥の木々の間から空が見え始めた。

森林から抜けるようだ。

いい加減喉も乾いたし、お腹もすいた。

周りを見ても水が流れてる様子も、木の実がある様子もない。

少しの期待を込めて、外に向けて歩いた。


森林を抜けると、また草原が広がっていた。

そして、木の実を見つけた。

今度は、桃だった。

桃は少し苦手なのだが、この際贅沢は言ってられない。

皮を剥かないといけないと思ってたら、手で少し擦っただけで剥けた。

腐ってるんじゃなかろうかと思いつつ一口かじる。

甘かった。砂糖を舐めてるんじゃないかと思うくらい甘かった。

そして水分が多かった。


3玉も食べてしまった。お腹はいっぱいだ。

いい加減甘い水じゃなくて、きちんとした水がほしい。

方向を確かめてさらに歩くことにした。


遠くの地平線が途中で切れているのが見える。

あの先は続いていないようだ。

もしかしたら水があるかもしれない。

少し足が速くなる。


たどり着いたところには水があった。

そしてもう一つ探してもいなかったものがあった。




5章


小屋があった。

小屋と言っても簡易的に寝る場所のようだ。

誰かが作ったのだろうか。

でもこの世界には誰も居ないはずだ。

何かがおかしい。

だがそんなことを考える暇はない。

今はただ歩き疲れた。

少し横になって休むことにした。


目が覚めた。

しばらくはここを拠点にしてあたりを探索してみる。

この場所から周りを見ると、南の方向には今まで歩いてきた草原が広がっている。

北も東も西も同じような草原が広がっている。

どうしたものか。

こういうときの神頼みだ。

適当な大きさの棒を拾ってきて垂直に立てて指を離した。

棒は西に倒れた。

西に行ってみることにした。


西に行くと狭い獣道のある森があった。

今までとは比較にならないくらい道が暗い。

日没までは時間がありそうだ。

行ってみることにした。


今回は直線ではなくかなり曲がりくねった道だった。

木の実は相変わらずない様子だった。

歩きながら、昨日寝た場所について考えた。

廃墟の設定ができたとは考えられない。

かといって別の人がいるとも考えられなかった。

じゃあどうしてあんなものがあったのか。

もしかしてこの前落ち葉の色が変わったときに別の誰かの世界に入り込んでしまったのかと思った。

これが今のところ一番納得の行く解答だ。

そうだとするなら、一体ここは誰の世界なのか。

そんなことを考えてたら目の前が少しずつ明るくなってくるのを感じた。


森を抜けると水があった。

海なのか湖なのかはわからない。

思わず駆け寄っていった。

手ですくって口をつけた。

冷たい!おいしい!

湖だった。

たまらずに服をすべて脱ぎ捨てて湖へ入っていった。

この探索している間、体の汚れを落とす手段がなかった。

水は生きるために必要なんだと改めて感じた。


しばらく泳いだりふわーっと浮いたりしてリラックスしていた。

だいぶさっぱりしたから上がろうとすると、盛りの方で葉が動くのが見えた。

反射的に水の中に潜ってしまった。

ゆっくりと浮いてその方向を見たが、特に何もいなさそうだった。

気のせいだと思い、上がって体を乾かし服を着た。

今度は洗濯しに来よう。


少し日が暮れてきた。

森の中は夜中のようだった。

足元に気をつけながらゆっくりと足を進めた。

森を抜ける頃には月明かりだけになっていた。


小屋の方には別の明かりが灯っていた。

あれは火だ。

この世界には誰かがいる。

期待と不安と安心が混ざった不思議な感覚だった。

そっと近づいたが誰もいなかった。

小屋の中で待とうと思い、少し横になったら寝てしまった。


気がついたら朝になっていた。

火は消えていた。

そして、


人がいた。



6章


向こうはまだ寝ているようだった。

顔を見ようとしたが、どうしても顔だけがぼんやりしてみることができなかった。

格好からして男のようだ。

向こうが起きるのを待つことにした。


「んん・・・。」

という声とともに起きた。

「お前は誰だ?」

ときいた。

「僕は僕だ。それ以外の何者でもない。」

曖昧な答えだった。

「ここではどういう生活をしてるんだ?火はどうやって?」

「そんなこというなら一緒に生活するか?ただし、動いてはもらうからな。」

「働かざる者食うべからず。わかってる。これからよろしく。」

「ああ、よろしく。」

握手をして、2人での生活が始まった。


お互い名前で呼ぶことはなかった。

他に人がいないから名前は必要がないのだ。

火の起こし方や寝床の作り方、洗濯した衣類の干し方。

他にも生活に必要なことを色々教えてもらった。

他にも他愛もないことを喋ったり、星空の観察をしたり、

1人では考えられないくらい楽しい生活だった。


2週間ほど楽しく暮らしたとき、一つ疑問を投げた。

「どうしてここに来たんだ?」

「んー・・・。」

少しの沈黙のあとゆっくり口が開いた。

「飛び降りたらここにいた。」

「え。」

これ以外の言葉が出てこなかった。

「言えるのはこれくらいだ。理由とかは聞かないでほしい。」

「わかった。」

「そういうお前さんはどうなんだ?」

「おんなじさ。僕も飛び降りだ。5階くらいの屋上から飛び降りた。

気がついたらここにいた。」


最初はりんごのような木の実を食べたこと、

森に入ったらこの世界に来ていたこと、

水浴びをしたこと、

様々なことを話した。

「この世界に自分以外にも人がいると思わなかった。」

「それはこっちもだ。」

「人がいるってこんなにも楽しいものだと思わなかったよ。」

「そうか。」

といって黙ってしまった。

その日はもう夜になっていたので、寝てしまった。


次の日起きてから突然話しかけられた。

「これだけは話し合わないといけないと昨日あれから考えていたんだ。」



最終章


「どうしてこの世界に迷い込んだと思う?最初この世界に来たときにどう思った?」

「一人だけの世界に来たいと思ったからかな。それくらいしか思い浮かばないや。」

「どうして一人だけの世界に来たいと思った?その原因は?」

「それは・・・。」

「いじめだろ。」

「!!」

図星だった。

「どうしてそのことを。」

「そして誰もいない世界に来てどう思った?どう感じた?」

「ひとりは寂しい。ひとりはつまらないと感じたよ。」

「そうさ。じゃあもう1つ。お前は誰かを1人にしていないか?」

この一言で思い出した。

母さんを一人にしてしまったことを。

「どうしてお前はそこまで知っているんだ。」

「お前のことなら知っているさ。ここまで言ってもわからないようじゃあ、だめだな。」

全く見当がつかない。

自分のことをよく知っていて、自分が知ってる人物。


しばらく考えた。クラスの人間や近所の人、今まであってきた人間すべてを思い返した。

誰一人として思い当たるフシがなかった。

「馬鹿なのかお前は。」

罵られた。

「わからないものはわからないんだよ。」

「誰か数えてない人間が要るんじゃねえか?」

「え?」


周りの人間ではない。

ということは1人しかいない。

「お前は僕か?」

「やっと気づいたか。」

その声とともに今までぼやけていた顔が急にはっきり見えるようになった。

そこに立っていたのは紛れもなく自分だった。

「やっと気づいたか。お前は僕で、僕はお前だ。」

「だから一緒にいても違和感がなかったのか。」

「そんなことはどうでもいい。お前にはやらないといけないことがあるだろう。」

「え?」

「1人は寂しいんだろ?」

「でも僕は死んだんじゃ。」

「いいから行ってこい!」

そう言うと背中を叩たかれた。

ふらついて一歩踏み出すとそこには地面がなかった。

とっさに後ろを振り返るとそこには誰もいなかった。


目を開けると白い天井が見えた。

横には口元を手で覆う母親がいた。

「かあ・・さん。1人にしてごめん。」

「いいの。謝らなくていいの。おかえり。」

泣き声を殺して話しかけてくれた。

目頭が熱くなった。

腕をかあさんの足に載せると、わあっと泣き出してしまった。

僕も涙で枕が濡れてしまった。


うまいこと落ち、搬送と手術が間に合い、一命をとりとめたと様子を見に来た看護師から告げられた。

「3週間も寝てたんですよ?もう起きないんじゃないかと思いましたよ。」

「母さんを1人にしちゃいけないと思って。」

「あらあら、お母さん思いなのね。」

「1人は寂しいですから。」


学校には翌年度から復帰した。

登校初日、元クラスのみんなが駆け寄ってきた。

泣き出す子もいた。

いじめの主犯は転校扱いになった。

実際はどうなったのかわからない。

誰かと一緒に過ごすことが多くなり、彼女もできた。

それ以来、誰もいない世界について考えることはなかった。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

初投稿初執筆なのでかなり拙い文章だったと思います。



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