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悪戯っ子と阿修羅


現れた幼女と目が合い、固まってしまう。



それにしてもいい笑顔である。



なんだろうこの子は。



そんな感じで思考の渦に飲み込まれていると、幼女が近づいてきた。




「初めまして。私はリンネ。この寮を任されてます。因みにドワーフ族でちゃんと大人ですから。」




思っていたことを全て見透かされた様なその挨拶にどきりとして慌てて謝罪する。




「あ、すみません。僕は御影と申します。今日からお世話になります。」




頭を深々と下げると、リンネさんは手をパタパタと振っている。




「そんな頭下げないでいいよー。礼儀正しい子だね。」




そう言ってリンネさんは笑う。



幼女にしか見えない。



いや、失礼だろ。



失礼なんだろうか?



リンネさんを見ていると幸せな気分になってくる。



母性がくすぐられるというか、守ってやりたいと思えるそんな笑顔である。




「じゃ、君は205号室だよ。着いてきて。」




わざわざ案内してくれるらしい。




「ありがとうございます。」




言ってリンネさんに着いて行く。



階段で二階に上がり、ちょうど真ん中の部屋が205号室だった。




「はいはーい。これが鍵ね。荷物はもう運び込まれてるはずだから。何かあったら呼んでね。」




そう言ってリンネさんは消えた。



え?



目の前に居たはずなんだけど。



どういうこと?



驚いて挙動不審になっていると笑い声が聞こえた。




「ぷ。そんなに驚く?」




丁度隣の部屋、206号室から女の子が出てきた。



非常に恥ずかしい所を見られてしまった気分だ。



誰だって驚くだろう。



ドワーフ族はそんなことできないはずだけど。




「リンネちゃんはドワーフ族じゃなくて、ピクシー族だから。悪戯っ子よ。」




おーけー。つまり俺は騙されていたわけだ。



今度会ったらギャフンと言わせてやる。




「そうなんだ。

ありがとう。俺は御影繡。よろしく。」




「私は碓氷澪(うすいみお)。所で君は何歳?背が高いねえ。」





確かに。



高1でこの身長は高いと言われても仕方がない。



ちょっと張り切りすぎたかも知れない。




「あーと、15歳だよ。今年から入学なんだ。」




そう言うと碓氷さんはひどくびっくりした顔で言う。




「え?!

あ、でもそっか今日来たんだもんね。

なに食べたらそうなるの?

てか、彼女いる?」




最後の質問はなんだろう。



やはりイケメンだとこういうことになるのか。



ふふふ、これで人生勝ち確よ。



いや待て、この顔で彼女いないなんてあり得るか?



いないなんて言った暁には、無言で中身悪い認定されてしまうのではなかろうか。



ここはやんわりと軌道を変えよう。




「普通に食べてるけど、碓氷さんはお幾つなんですか?」




華麗にスルーを決める。



我ながら素晴らしいスルースキルだ。




「私は君の一個上だよ。高2。

で、彼女いる?」




う、なかなか手強い。



これは俺のスルースキルでは力不足か。



なんとか答えを誤魔化さねば。




「うーん、いないっちゃいないかなあ?」




すると彼女はじと目になって俺の顔を見てくる。




「ふーん。

だいたいそーゆー答えするイケメンは浮気者だよね。」




ぐはっ。



墓穴を掘っていく。



このままではダメだ。



こうなったら正直に非モテをさらけ出そう。




「いません。いたこともありません。」




またもジト目になる碓氷さん。




「なに?その顔で?怪しいなあ。

はっ、まさか私を狙っているの?」




ダメだ。



泥沼にはまっていく。



くそう。確かに可愛いけど。




「あ、いや、違くて、本当に本当なんですよ!」




「なに、私じゃ嫌ってこと?」




今度はちょっとプリプリと怒っているような顔だ。



なんだこれ。



なんだこれ。



どうしたら正解なん?てか話変わってない?




「いや、碓氷さんは美人ですし全然嫌じゃないですけど、てかなんの話ですか。」




「やっぱり私を狙ったんじゃん。

たらしー。このたらしー。」




え、何この泥沼。



抜け出せない。



頭を抱え始めたその時。




「ちょ、ちょっと!リンネちゃん!私で何してるの!」




階段から碓氷さんが走ってやってくる。



あれ?碓氷さんが二人いる。



何これ。




「あちゃー。いい所だったのにー。

もう、澪ちゃんのあほー。」




ヘラヘラと笑ってる目の前にいる方の碓氷さんは小さくなっていきリンネさんになった。



え。



びっくりなんですけど。




「もう!また私で悪戯したんでしょ!今度こそ許さないんだから!」




本物の碓氷さんは後ろに阿修羅のような気を発現させ、ゆっくりと近寄ってくる。



ホラーだ。




「うっ、じゃ、じゃあまた今度ね。あどぅー。」




そう言って逃げようとするリンネさんの頭を掴み固定する。



ピクシー族にはちゃんと実体があり、彼女らは幻影を操って人を騙す。



捕まえてしまえば逃げることはできないはずだ。




「え、ちょ、離してよ!」




初めて見る焦った顔のリンネさん。



今まで散々コケにされたのだから、やり返すなら今しかない。




「そこの人ちゃんと捕まえててね。」




「はい。」




あまりの迫力にリンネさんをつかむ腕に力が入る。




「話して!お願い!なんでもするから!今だけはお願いします!」




涙目の幼女をみると罪悪感に押しつぶされそうになるが、ここは心を鬼にする。



俺だって騙されたのだからおあいこである。




「ありがとう。後は任せてね。」




にっこりといい笑顔の碓氷さんはリンネさんを捕まえて部屋に消えていく。




「...大丈夫かな。」




引き渡しておいて何だが心配になってきた。




「ぎゃぁあぁぁああ!!

ゆるじでぐだざいぃぃぃいい!!」




あー。あー。何も聞こえない。



僕は悪くない。悪くない。




リンネさんの断末魔を背景に今度からリンネさんには優しくしてあげようと心に決めた。


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