二つの記憶
【器用】【鑑定】【適応】【演技】【思考加速】【魅惑】【解体】【識別】【記憶】【把握】【料理】【裁縫】【デザイン】【錬金】【医療】【演説】【交渉】【悪運】【算術】【変装】【共感】【アイデア】【幸運】【豪運】【写術】【修復】【感性】【信用】【説得】【操縦】【言語】【超感覚】【第六感】【音楽】【芸術】【採取】【飼育】【加工】【整備】【記録】【製図】【観察】【測定】【測量】【考察】【解答】【文芸】【演奏】【舞踏】【融合】【洗濯】【工事】【解体】【数学】【掃除】【社交】【魅了】【念話】【集中】【センス】【体操】【閲覧】【真似】【模倣】【創作】【速読】【認知】【商売】【読解】【家事】【管理】【移動】【計画】【捕獲】【目利き】【暗記】【作成】【機転】【同時並行】【精密】【精神力】【服飾】【占術】【読心】【栽培】【陶芸】【刺繍】【建築】【細工】【翻訳】【予知】【宣告】【体感】【支配】【光合成】【年齢操作】【食い溜め】【寝溜め】【大食い】【同調】【千里眼】【洗脳】【対病】【暗視】【天候操作】【質量操作】【体積操作】【努力】【根性】【罠】【生命】【祈祷】【奇跡】【収納】【マップ】【サバイバル】【捜索】【察知】【隠蔽】【偽装】【道化】【傀儡】【搾取】【寄生】【強化魔法】【念動魔法】【治癒魔法】【光魔法】【風魔法】【土魔法】【水魔法】【火魔法】【闇魔法】【氷魔法】【雷魔法】【木魔法】【召喚魔法】【時空魔法】【封印魔法】【火術】【風術】【水術】【光術】【土術】【闇術】【木術】【雷術】【氷術】【音術】【臭術】【幻術】【剣術】【槍術】【斧術】【槌術】【盾術】【格闘術】【縄術】【布術】【紙術】【糸術】【棒術】【弓術】【銃術】【鎌術】【鞭術】【鎖術】【針術】【暗器術】【暗殺術】【蟲術】【偵察】【隠密】【命中】【精神強化】【身体強化】【身体変化】【無力化】【耐性】【消滅】【反射】【石化】【毒】【混乱】【衰弱】【恐怖】【発狂】【麻痺】【睡眠】【威圧】【吸収】【魔力操作】【限界突破】【再生】【魔眼】【魔化】【最強】【超反応】【即死】【耐久】【敏捷】【分身】【撃】【気】【奪取】【剛力】【守護】【頑強】【飛行】【戦略】【全知】【不眠】【不死】【不老】【長寿】【健康】【上書き】【天啓】【経験】【福音】【粗食】【増大】【テイム】【暴食】【憤怒】【強欲】【色欲】【憂鬱】【怠惰】【正義】【傲慢】【虚飾】【嫉妬】【後悔】【法】【罪】【罰】【監獄】【全能】【不能】【無】【検索】【浄化】【擬態】【飛翔】【コピー】【熟練】...
***
「えーっと...。」
『...。』
二人の男は微妙な表情で白い本を見つめる。
苦笑いと言ってもいい。
「多くない?」
『...多いね。』
大量に並んでいる文字に目眩を覚える二人。
その中でも【風魔法】と【思考加速】の【スキル】だけは淡く光を放っていた。
「どうしよう。」
『とにかくあのファントムってやつをなんとかできる【スキル】を見つけよう。』
「つってもさー。」
そう言って目の前に広がる文字だらけのページを見つめる。
アキの発言は最もで、こんな大量の文字だけではどんな【スキル】なのか分かったものではない。
「説明とかねーの?」
『...多分。』
自分の【固有スキル】で何とかできると宣言したヌイだったが、イマイチ自分の【スキル】について把握できていないようだ。二人は取り敢えず使えそうな【スキル】を探し始める。
なにを基準に探すのか謎だが。
「【全能】ってなんだよ。
これだけ取りゃいいんじゃねえの?」
『【不死】なんてスキルもある。
...どうなんだろ。』
二人の思考はお互い似通っているようで、チート感満載な【スキル】を一番に見つけたらしい。
逆にチート感満載すぎて敬遠しているようだが。
二人は無難な【スキル】を探し始める。
それこそ学校の教科書に乗っているような安パイを。
「はあ!
...だめか。」
『何してるの?』
「いや、集中して【スキル】を見てみれば説明でも出てこないかなと思って。」
どうやらその作戦は空回ったようである。
世の中には親切に説明書がついてあることなど稀なのだ。
「量多すぎ。
せめてカテゴリ分けくらいしろよ。」
『...せめて、生活スキルと戦闘スキルくらいは分けてほしかった。』
二人は溜息を吐きながら、一旦探すのをやめたようだ。
二人の言う通り、【スキル】の並びには、どうも規則性が感じられない。
そもそも【スキル】のカテゴリ分けなど、人間が勝手に行なっているだけなのかもしれない。
それにしても誰に文句を言っているのだろうか。
「これじゃどんな【スキル】なのかわかったもんじゃねえよ。」
『明らかに強そうな【スキル】とってキャパオーバーで死にましたー、とか普通にありそう。』
二人は頭を抱えて黙り込む。
そのまま二人は周りを飛び回っている三匹と遊び始めた。
所謂現実逃避である。
「...もういっそ、適当に取っちまうか。
運に任せるのもいいだろ。
なんなら【豪運】とって二人で適当に取得する?」
考えることに飽きたのか、考えるだけ無駄と考えたのか、アキの提案は投げやりだった。
『うーん。
ありっちゃありだけど、後悔しない?』
ヌイの発言にうっ、と呻くアキ。
「けど、そんなこと言ってもどうしようもなくね?
それで後悔するんなら、何とっても変わらないんじゃ?」
アキの発言は何とも投げやりだが、的を得ていた。
今の段階では恐らく、何をとっても何かしら後悔してしまう。
そんな漠然とした予感に、二人は一歩を踏み出せないでいた。
「そもそも、何個でも選んでいいの?
てか、選べるの?」
『...うーん。
多分幾らでも選べるんだろうけど、その分効果は小さくなるんじゃないかな?
それこそ【スキル】の意味がなくなるくらい。』
「それは確か?」
ヌイは眉間に皺を寄せ、顎に手を当て、考え込む。
『...多分。』
考え込んだ割には非常に曖昧で頼りない答えだった。
はあ、と溜息が一つ。
『で、でも、何となくそうだって分かるんだ。』
それは何とも言えない予感で、虫の知らせとでも言うのだろうか、確かにそんな気がするらしい。
「まあ、しょうがないか。
それが間違いでもそうじゃなくても、危ないって言われてる橋を渡る度胸なんてないし。」
『そうだよね。』
そう言って二人は本と睨めっこを再開する。
所謂無限ループである。
いくら考え、悩んだところで【スキル】を選ぶことはないだろう。
何と言っても不確定要素が多すぎる。
「そもそも、これ【スキル】選んだら説明文とか出てくるんじゃね?」
『じゃあ、選んでみてよ。』
「...どれにしよっかなー。」
選べるわけがない。
不便な【固有スキル】である。
そんな二人を見つめる三匹。
ハクはフラフラと、ヌイの手にしている真っ白な本に飛んでいく。
お、どうした、とハクを見つめる二人。
そのままハクは【スキル】を選択した。
『「え?」』
見事にシンクロした二人。
慌てて取得した【スキル】を確認する。
【風術】
それは【風魔法】同様に薄っすらと光を放っていた。
どうやら選択し、【スキル】を取得するとこうなるらしい。
説明もなにも出てこなかったようだ。
一歩前進である。
ちなみに【風術】の【スキル】は【風魔法】とは全くの別物である。
【風魔法】が魔法で風を生み出し操るのに対し、【風術】は存在する風そのものを操る【スキル】である。
「...よりにもよってなぜそれ?」
『...いや、ここはやっと先に進めたことを喜ぼうよ。』
ハクは謎のチョイスで腕を組み、やってやった感を醸し出していた。
表情があればおそらくドヤ顔だろう。
ハクに触発されたのか、レイも白い本に飛び乗る。
そういう遊びだと思ったのだろう。
二人が反応するよりも早く、【スキル】を選択する。
ああっ、と気の抜けた二つの声が重なる。
【隠蔽】
本に浮かび上がった光はこれで四つ。
二人の知らない【スキル】である。
またも謎チョイスであるが、ハク同様自信満々の様子である。
同じく、アンも飛び立つ。
さすがに二人は必死に本をアンから守ろうとするが、形を変え、大きさを変え、合間を縫って本に着地。
ああっ、とまたも二人の声がシンクロする。
またもや浮かび上がる文字の光。
【耐性】
謎のチョイスは仲良しの証なのか、またも先二匹同様ご満悦の様子である。
この【スキル】は人によって能力が変わる【スキル】の一つである。
ある者は病気に、ある者は痛みに、またある者はストレスに、それぞれ【耐性】を持つ。
この様な【スキル】は割と多く、同じ【スキル】でも全く違う効果を発揮することがある。
浮かび上がる五つの【スキル】。
「...えぇ。」
『...こんなにいっぱいとって大丈夫かな?』
二人の力無い呟きに、三匹は大丈夫?とばかりに慰め始める。
いや、お前らのせいである。
「まあ、取っちまったもんはしょうがない。
...取り消せたりするかな?」
弱腰である。
『もう1回同じの選択してみる?』
それだ!と言わんばかりに、アキは急いで三匹の選んだ【スキル】をもう一度選択する。
変化はない。
はあ、と項垂れる二人と、それを慰める三匹。
楽しそうである。
『あれ?
減ってる?』
しばらく経ってようやく立ち直ったヌイは疑問を口にする。
「ん?」
『これ見て。』
そう言って手渡された本には、光る文字が"四つ"。
【隠蔽】
【思考加速】
【風魔術】
【耐性】
【風魔法】【風術】の【スキル】がなくなり、新しく浮かび上がった【風魔術】の文字。
二人と三匹は首を傾げる。
「混合スキルってやつ?
それとも上位スキル?
そんなの習ったことないけど。」
『なんだろ?
これで知ってる【スキル】が二つだけになっちゃったね。』
知ってる【スキル】。
つまり教科書に載っている【スキル】である。
「ああ、ハズレスキルと【耐性】ね。」
『うん?
ハズレスキル?
【思考加速】はハズレじゃないよ?
なに言ってるの?』
「え?
ハズレでしょ。
それで自殺したんだし。」
『自殺?
自殺したのは自分がおかしくなっていったからで...。
うん?
なんか変?』
二人の記憶にズレがあるようだ。
二人は首を傾げている。
『待って。
整理してみよう。
アキの記憶は何処からある?
あ、"御影繍"としての記憶のことだよ?』
「え?
そりゃ、最初っからだけど?」
そう言ったアキを微妙な表情で見つめるヌイ。
『...あのね、それはおかしいんだよ。
だって、僕とアキが繋がったのは...完全に統合したのは自殺した後だよ?』
「え?」
『まあ、それもちょっと違うんだけど。
そうだね、まず、アキと僕が混ざり始めたのは今から一年くらい前なんだ。』
そう言って語り始めるヌイ。アキは訳もわからず聞き入っている。
それでもなに言ってるんだと笑い飛ばさないあたり、感じたのだろう、違和感を。
『僕がおかしくなり始めたのは、中学3年に上がった頃だね。
それまで僕は普通の中学生だった。
本当に普通の、何処にでもいる中学生だった。』
アキは何を言うでもなく、真剣に話に耳を傾ける。
『けど、春休み明け前くらいかな?
夢を見たんだ。
誰かになる夢。
いや、誰かの記憶を見た。』
「それが俺?」
『うん。
とても苦しくて悲しい記憶。
まるで自分の記憶なんじゃないかって、いつからか、現実と夢の区別がつかなくなっていったんだ。』
アキは何だか申し訳なくなってきたのか、顔を伏せる。
『別に責めてる訳じゃないよ?
...それで、その夢に自分を塗り替えられていく気がして、怖くなったんだ。』
「...ごめん。」
『だから、責めてるんじゃないってば。
今はこうして折り合いがついてるんだし。
...アキはまだ混乱してるみたいだけど。』
ヌイの言う通り、アキは自分の知っている"御影繍"としての人生と全然違うヌイの話を信じきれていないらしい。
『...じゃあ、アキの本を見て見なよ。
自殺の前のページ。』
「...うん。」
何故だかわからないが、この本には自分の人生の物語が綴られている。
それを確認すれば全部わかる。
二人は何故かそんな予感、もはや確信にも似た感覚を感じていた。
『自殺しました。』
見開きに書かれた一文。
今まで何度も見てきた文である。
次のページからは寮に行ったことや、リンネさんに会ったこと、碓氷さんに会ったことなどが綴られている。
前のページを開く。
『岩本美穂に振られました。』
『坂口健太と喧嘩しました。』
そこには鈴木明希としての自殺前の物語があった。
更に前のページへ。
『両親を交通事故で亡くしました。』
ここまで読んで本を閉じる。
目の前にいるヌイを見る。
「なんとなく理解したよ。」
『良かった。』
この時に二人はようやく、本当の意味でお互いを理解したのかもしれない。
両親が死んだのは御影繍ではなく、鈴木明希。
妹の栞と仲が崩れ始めたのはいつ頃だったか。
両親とギクシャクし始めたのはいつ頃だったか。
急に家族が他人に感じ始めたのはいつ頃だったか。
御影繍としての肉体に存在する機能としての記憶は確かに多くの矛盾を宿していた。
両親が死んだ?
いつ?
原因は?
本当の両親の顔は?
養子?
昔は妹と仲が良かったのに?
施設にいた記憶もないのに?
寮に厄介払い?
あんなに涙を流しながら別れたのに?
絶望して自殺した?
名門校である白石高校に合格したのに?
確かにぐちゃぐちゃに混ざり合った記憶には矛盾が多く、アキは漸く気づけた様である。
二つの魂が混ざり合い、生じた違和感は、二人の記憶や精神を捻じ曲げてしまったのだろう。
それがいいことなのか、悪いことなのか、今となってはわからない。
一人称視点から三人称視点になったのはこういうことでした。
最初のスキル設定も鈴木明希の自殺後の出来事で、急に高身長イケメンになったわけではなく、その後に御影繍の自殺後に飛びました。
スキルは適当です。
編集で順次足したり、引いたりしたいと思います。
こういうスキルが欲しい、なんてコメントがあったら参考にさせていただきます。




